恋に落ちたシェイクスピア | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

1998年 アメリカ
ジョン・マッデン 監督
原題: Shakespeare In Love


【劇場版】嘆きの王冠~ホロウ・クラウン~」をきっかけに今月は映画も読書もシェイクスピア気分♪というわけで、久しぶりに自宅のDVDコレクションからシェイクスピア関連映画をプライバック(*^-^*)。ちなみにマイケル・ファスベンダー&マリオン・コティヤールによる「マクベス」も気に入ったので結局DVD購入しましたが、こちらは4月に既にレビュー済みなので観なおしても今回は以前の記事で代えさせていただきます。

この年のアカデミー賞で主演女優賞、作品賞、脚本賞、衣装デザイン賞はじめ7冠も獲得した作品。グウィネス・パルトローが大好きだったので観たのが最初でしたが、やっぱり今観ても面白いし、衣装もセットもキャストも豪華!(≧▽≦) やっぱり大好き♡ そしてジョン・マッデン監督、マリーゴールド・ホテル シリーズの監督さんでした。「コレリ大尉のマンドリン」も!観ていないんですが、「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」では製作総指揮だったそうで。ほほーう。(´・ω・`)



物語は16世紀末のロンドン、かの劇作家(兼役者)シェイクスピアが主人公で、彼と裕福な令嬢ヴァイオラとの恋愛をモチーフに、「ロミオとジュリエット」と「十二夜」が生まれる過程を描いた作品です。勿論フィクションですが、シェイクスピアを始め実際の史実や実在の人物も程よく取り入れた絶妙な脚本に仕上がっていて、リアリティとロマンに溢れた作品になっています。もしかしたら本当にあの名作の裏側にこんなロマンスがあったのかも・・・いや、そうだったら素敵だわ~♡なんて気分になります。それだけ、監督も、演じたジョセフ・ファインズも魅力的なシェイクスピアを作り上げています(*'ω'*)。



この物語当時のシェイクスピア(ジョセフ・ファインズ)はまだ名前が多少売れ始めた程度、先んじて活躍していた偉大な劇作家クリストファー・マーロウ(ルパート・エヴェレット)の方が超有名で、シェイクスピアは目下マーロウをライバル、目標として頑張っているところですが中々パっとせず、スランプ状態。「この間の舞台だが」「どれだ、リチャード三世か、ヘンリー六世か?」といった感じの会話がチラっとあることから、薔薇戦争の第1・四部作を書きあげた直後くらいらしい、と「【劇場版】嘆きの王冠~ホロウ・クラウン~」とリンクして想像できるのも楽しく、アダム・クーパー曰く「大きな円の一部」ってやつだなぁ、と最近ちょいちょい思い出します^^。

名声もない、お金もない、恋人もない(舞い上がっていた相手に裏切られます)、借金だけはあるの破れかぶれのピンチのシェイクスピアは、ローズ座で上演するための、ロミオという青年と海賊の娘(それに多分、犬)が登場する喜劇を書き下ろさなければならない状況にありましたが、中々筆が進みません。話は完成しないまま、公演予定はせまり役者のオーディションも始まります。



そのオーディションに彗星のごとく紛れ込んだトマス・ケントと名乗る青年の演技にやる気ナシで投げやりだったシェイクスピアも目が釘付けになり、声をかけますが何故か彼は驚いて劇場を逃げ出してしまいます。



じつはトマス・ケントは、裕福な商家のご令嬢ヴァイオラ(グウィネス・パルトロー)が男装した姿でした。芝居が大好きで、役者になるのが叶わぬ夢のヴァイオラ。ついささやかな思い出作りに、我慢できなくて男装してオーディションに記念参加してみたらしいです。そうとは勿論知らず、トマス・ケントの後を追いかけていったシェイクスピアは屋敷で行われていた舞踏会でヴァイオラの姿を見て一目惚れ。

結局ヴァイオラは、トマス・ケントとしてシェイクスピアの新作の主人公ロミオを演じることになります。最初はトマス・ケントを男性だと信じ切っていたシェイクスピアでしたが、時を待たずしてトマス・ケント=ヴァイオラだという事実を知ることとなり、あっという間に恋の幸せに溺れる2人です(*'ω'*)。その後もトマス・ケントは芝居の練習に参加し続けます。恋の知恵熱に加えて秘密の共有というスパイスも加わってもう世界は2人のために状態。



よって、稽古中のトマス・ケントを見つめるシェイクスピアはこの↑ウットリ状態(笑)。これでよく周囲にバレないもんだな~と逆に感心するほどです(´ω`*)。そうそう、この当時、風紀を乱すということで女性が舞台で演じることは禁止されていたので、ヒロイン役は声変わり前の美少年が演じていました。劇場同士の対立や、役者たち、劇作家、当時の芝居小屋の様子や風俗などの一端を知ることができるのもこの映画の楽しい点のひとつです^^。



幸せ絶頂の2人ですが、ヴァイオラは両親が決めたウェセックス卿(コリン・ファース)との婚約もどんどん進められ、結ばれることは叶わない2人です。この当時、地位だけで財産のない貴族が持参金目当てで裕福な商家の娘と結婚する(成功した庶民はお金で爵位を手に入れることができる)例が増えてきた時代。ウェセックスも新大陸(アメリカ)の農園への投機でほぼ全財産スッカラカン状態、自分の自尊心と名誉を維持するためにもヴァイオラの美貌と持参金がどうしても必要だったのでとにかく結婚を急ぎたがっています。それにしてもグウィネス、美しさ絶頂期です(´ω`*)。



普段どちらかというと素敵な紳士役の多いコリン・ファースが、嫌味で愛すべきところのひとつもない憎まれ役の気位だけ高くて傲慢な落ちぶれ貴族役をやっているのも何気に新鮮。いい感じでイヤなヤツ演じ切っていますよ( *´艸`)。



イングランド全体にも、シェイクスピアとヴァイオラの恋にも多大な影響力を奮う時の女王、エリザベス一世にはお馴染ジュディ・ディンチ様。喜劇が大好き。「ヘンリー四世」を観て、「フォルスタッフが主人公の喜劇を作ってちょうだい」と命令したのもこの人なんだよね~( *´艸`) なんてことも思い出しながら。このエリザベス女王、本作でも「ロミオとジュリエット」の完成にも重要な役割を担うことになります。



「ロミオとジュリエット」のマキューシオを配役されたのは当代きっての人気俳優、ネッド・アレン(ベン・アフレック)。ベンアフ若いぞ!(´ω`*) 最初はスターの自分がパっと出の新人に主役を譲ること、どんどん自分の出番が減ることに不満タラタラですが中々どうしてとってもいいヤツ。ちなみに実際の性格はわかりませんが、エドワード・アレンという当時の大スター俳優は実在。エリザベス一世とシェイクスピアは言わずもがなですが、ローズ座も実在した劇場だし、その支配人ヘンズロー(ジェフリー・ラッシュ)も、ローズ座のライバルのシアター座の人気俳優リチャード・バーベッジ(マーティン・クランス)も前述の劇作家クリストファー・マーロウも、あともう一人、俳優ウィル・ケンプ(パトリック・バーロー)も皆実在の人物です。

さらにもう一人。ローズ座の周囲をウロウロする浮浪のジョン・ウェブスター(ジョー・ロバーツ)という少年が登場します。いつもネズミを連れていますが、「血がドバっと飛び散る」芝居が大好きだと言ったり、飼っているネズミをわざと猫に生きたまま食べさせたり、トマス・ケントとシェイクスピアの情事を盗み見して密告したりと、ちょっと闇を抱えた得体の知れない雰囲気の少年なんですが、このジョン・ウェブスターという名前。シェイクスピアの次世代の有名な劇作家の名前。血がドバっと・・・という少年期の嗜好通り、血なまぐさくて陰湿で残酷な戯曲を好んで書いた作家だそうです。イギリス演劇史に詳しい人にとっては、「あの〇〇が、この・・・!」と色々気になる要素もふんだんに取り入れられている映画なんですね^^。



DVDの特典映像に含まれる監督のインタビューによると、この映画のシェイクスピア役を配役するにあたっての一番の条件は「執筆している姿が絵になる俳優であること」だったそうで、確かにジョセフ・ファインズはピッタリ!アップになると、その睫毛の長さにビックリ。下睫毛までドール級のバッサバサ!Σ(゚Д゚) 睫毛が短いコンプレックスに悩む人生の私としては羨ましくてならない(笑)。ペンと羊皮紙を手に苦悩したり夢想する様子も、白いブラウス姿も本当に素敵でウットリ。お墓の中のシェイクスピア本人も、こんな風に自分を演じてもらってホクホクしてるんじゃなかろうか(´ω`*)。



シェイクスピアは自分とヴァイオラの結ばれ得ない恋愛をベースに「ロミオとジュリエット」を書きあげ(最初は喜劇のはずだったのに、どんどん筋が変わっていくのに役者や劇場主が戸惑う様子も可笑しいです^^)、ヴァイオラとの別れから立ち上がり、ヴァイオラの幸せを願って「十二夜」を書くという流れになっています。「十二夜」は読んだことがないのですが、ヴァイオラという女性が主人公の喜劇で、ヴァイオラが双子の兄の名前をかたって男装しながらオーシーノが恋をしている伯爵令嬢はヴァイオラを男性だと思って恋してしまうという内容。

最後に改めて脚本、うまいなぁと感心させられます。脚本家の名前って全然知らないのですが気になって調べてみたら、マーク・ノーマンとトム・ストッパードという2人の共同作のようでした。マーク・ノーマン脚本の別の作品は知っているものはなかったのですが、トム・ストッパードの方は「ロシア・ハウス」「ビリー・バスゲイト」「エニグマ」「アンナ・カレーニナ」などの大作がゴロゴロヒットしました(*'ω'*)。大物さんなんですねー。納得。

大好きな映画で久しぶりに楽しみましたが、唯一の難を言えば。うちに今あるDVDは映画公開から結構後になって再発売されたスペシャル・エディション版なんですが、それでも何気に20年近く前の映画だと画像が今観ると驚くほど粗くて、字幕のフォントもギザギザで目に触るのが残念でした。昔は気にならなかったから、この10年で映像技術の進化が意識していた以上にあって、それに知らず知らず慣れきっていたんだろうなぁと。これだけキャストも豪華で素敵な映画だから、リマスターしてBluerayやせめてハイビジョンDVDを再発売してくれないかなぁと期待しちゃいます(*'ω'*)。