ヘンリー六世 Part 1 (【劇場版】 嘆きの王冠 ~ホロウ・クラウン~) | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

2012年 イギリス

ドミニク・クック 監督

原題: The Hollow Crown / Henry VI, Part 1

 

 

いよいよ「【劇場版】嘆きの王冠~ホロウ・クラウン~」もセカンドシーズン突入、第1歴史劇四部作の「薔薇戦争」突入です。これまで、各エピソード毎に手掛ける監督が違っていましたが、残り3作は全て同じ監督のようです。やはり薔薇戦争というひとつのモチーフの連作で世界観が統一されるのは安心です。

 

若い頃の放蕩が嘘のように勇猛果敢で立派な王として君臨していた「ヘンリー五世」の死後、僅か生後9ヶ月の幼さでイングランドとフランスの国王として即位したのが息子、ヘンリー六世(トム・スターリッジ)。お祖父ちゃん(ヘンリー四世)、お父さんと違って柔らかい雰囲気です。フランス王女だったお母さん(キャサリン妃)に似たのかな?大人しく育ちのいいお坊ちゃまで敬虔なキリスト教信者といったイメージ。

 

ヘンリー六世の即位の時よりずっと摂政として支えてきたのが、叔父のグロスター公ハンフリー(ヒュー・ボネヴィル)、ヘンリー五世の弟ジョンです。甥っ子であるヘンリー六世を自分の息子同様に愛し、忠義を尽くしており、公正で実直な性格は国民からも人気です。が、それだけに妬みやっかみを覚える貴族たちも多いのも事実。ヘンリー六世が十分成長したのにいつまでも国の実権を握って離そうとしないと非難する声も聞こえます。

 

右の仏頂面が面白くねぇな~、あいつ(グロスター公)の代表格、サマセット公(ベン・マイルズ)。どうにかグロスター公の権力を追放して、自分が成り代われないかと、虎視眈々と策謀の日々。左にいるのは・・・サフォーク公かな?サマセット公の派閥の一人です。

 

ところでこの人はヨーク公リチャード(エイドリアン・ダンバー)なのですが、いったい何者でしょう?本来リチャード二世の後継者として指名されていた、モーティマーの孫です。「ヘンリー四世Part1」でホット・スパーがヘンリー四世への不信を爆発させ、反乱のきっかけとなったのは、ホット・スパーの義兄(映画で「兄」って言ってたような気がしたのですが、原作では「弟」になっていたのでそちらが正しいのかも)であるモーティマーをヘンリー四世が救出しようとしなかったからでした。

 

ヨーク公リチャードの父親が死に際に話して聞かせたことで、リチャードは初めて自分が本来の王位継承に繋がる存在だったこと、ヘンリー四世のせいで祖父モーティマーが爵位も奪われ幽閉されたことを知り愕然とします。血筋だけはよくても爵位がなく見捨てられた暮らしをしていた自分が(江戸時代でいえば浪人のようなものでしょうかねー)、ヘンリー四世の反乱さえなければ今頃は王座に居たかもしれないというのだから、まさに天と地がひっくり返ったかのような心持だったでしょう。

 

父の死後、ヘンリー六世の配慮でヨーク公の爵位がもどったリチャードでしたが「本来なら俺が・・・」という気持ちがどうしてもぬぐえません。そこで、ついつい宮廷の井戸端会議で「わがプランタジネット家こそが正当な王の血筋、俺が本来の王位継承者だ」とボヤいてしまい、それにランカスター家の流れをくむサマセット公が「何をいってやがる、我らサンカスターこそ王家の血筋だ」と反発し、周囲にいた貴族たちも「おい、お前はどっち派だ」と巻き込んでの言い争いになり、「よーし、以後、ヨークを支持する者は白薔薇、ランカスター家に味方するものは赤薔薇のしるしを胸につけることにしようぜ!」となります。

 

 

子供の喧嘩かいな・・・Σ(゚Д゚) と呆れますが、そういったわけで上の画像たちにもう一度戻ってみると、確かに紅白どちらかの薔薇を胸につけた人たちが・・・ちなみに賢明なるグロスター公は中立。両者の諍いをたしなめますがどちらも引く気配はなく、国が分裂する元になるのでは・・・と杞憂します。

 

一方、フランスでは。イングランドへの抵抗勢力の反乱が激しくなる一方でした。せっかくヘンリー五世がようやく手中に収めたフランス国土でしたが、主だった都市の支配権を次々を失っていきます。その抵抗軍の中心には、なんとジャンヌ・ダルクの姿。おぉ、この時代の人だったのね。イギリス側の援軍が、ヨークが先にいけ、いやランカスターが先だと身内モメしてグズっている間、最初は優勢だったジャンヌ・ダルクですが最後は後から到着したイングランド軍の巻き返しに合い、捕らえられて魔女として火あぶりにされてしまいます。

 

目の前でジャンヌ・ダルクが火あぶりにされる様子を見守りながら、居並ぶイングランド軍もむごさに直視できない様子ですが、ひとりサマセット公だけ、ワインのみながらニヤニヤ見物。本物のいけ好かない野郎です。ベン・マイルズ、いやらしい嫌な男を演じるのが上手すぎです(笑)。そしてこのサマセット公、討伐先でその城主アンジュー公の娘マーガレット(ソフィー・オコネドー)に一目惚れして愛人にしてしまいます。その上ヘンリー六世の王妃にならないかとそそのかします。わー本当にヤなやつ、サマセット!(笑)

 

凱旋したサマセット公から、いかにマーガレットが美しく教養に溢れ心優しい素晴らしい女性かと聞かされて会う前からすっかり夢中になってしまったヘンリー六世、すでに決まっていた婚約を破棄してマーガレットと結婚します。ようやくマーガレットを迎えて、改めてゾッコン、もう夢中、幸せいっぱいの腑抜けのヘンリー六世。マーガレットてば、傾国の美女だ・・・その役を、ソフィー・オコネドーが演じているのが色々な意味で新鮮。魅力的じゃないとは言わないけれど、イメージが違う・・・でも、後々の強さ豪胆さを表現するにはピッタリだったかも。

 

ヘンリー六世の前では貞淑で優しい妻を演じながらもサマセット公と愛人関係を続けて「王妃なんて全然自由じゃない!あたまくる!」と文句囂々のマーガレット。サマセット公の入れ知恵に踊らされるまま、サマセットのランカスター派の貴族たちを抱き込み、ヘンリー六世を思うとおりに操りだします。つまりは、サマセット公の思惑がそのまま政治に反映されるように。でも、グロスター公がどうしても目障り。

 

そこで目を付けたのが、グロスター公爵夫人(サリー・ホーキンス)の存在。実直な夫と比べ、贅をつくした出で立ちで王妃がごとく宮廷に君臨する彼女。当然マーガレットともバチバチ(>_<)。自分の既得権を失いたくない彼女は、ついにはヘンリー六世が死んで自分の夫が王位を継げばいいのに、という野望まで持つようになり、呪いの人形まで作っちゃいます。欲望に弱いのは男も女も同じよね・・・(-_-;)。って、あれっ。ヒュー・ボネヴィルとサリー・ホーキンス、この2人って「パディントン」でも夫婦役やってましたね( *´艸`)。登場シーンは重ならないけれど、パディントンの声はリチャード二世をやっていたベン・ウィショーだし^^。

 

ついにサマセット公の罠にはまって、失脚させられてしまうレディ・グロスター。妻の堕落に失望し憤怒するグロスター公は、でもまだ自分は大丈夫、後ろめたいことさえなければ恐れることはない、と確信していましたが残念ながらサマセット公の蛇のような粘着質で周到な罠からは彼も逃れられませんでした。騙され、捕らえられ、処刑されてしまいます。ヘンリー六世も、すでにそれを食い止める力も勇気もなし・・・。

 

もーう、これ以上サマセット公のやりたい放題は許せん!と、ウォリック伯(スタンリー・タウンゼン)怒り心頭。元々、王位の正当性はヨーク家にあると考えていたので、ヘンリー四世の即位は不当なものだった、正しいものの手に王冠を取り戻そうぜ!と、ヨーク公リチャードと共に反乱を起こす決心をします。

 

ヨーク公も自宅に戻って「戦いだぞ!息子たち!」と息子たちの名を呼んでまわります。リビングで剣術の稽古をしていた兄弟、小さな弟、そして・・・「それと・・・リチャード!どこだ?!」の声で、画面パーン!稀代の悪王、シェイクスピアが生みだした魅力的なピカレスクであるリチャード三世をベネディクト・カンバーバッチが演じるということは前もって知っているので、すわ、ここでカンバーバッチが登場か?!と胸躍り画面に視線集中して見守るなか、暗い廊下の先からシルエットが・・・で、おしまい。きゃーーーー前後編の前編としてなんて模範的な盛り上げ方!いけずなことこの上ないです(≧◇≦)。

 

一挙上映で、よかった。数か月とか待たずにすぐ次が観られる・・・あのシルエットは果たしてカンバーバッチなのか、いやまだ若いはずだからヘンリー六世の間は(少なくとも最初のうちは)違う若手の俳優さんかなぁ?と、わくわくしながら次の上映までの休憩時間を過ごしました^^。

 


追伸:

「嘆きの王冠 ~ホロウ・クラウン~」全編を通しての基礎知識的なメモは、予習編にまとめてありますのでご興味あればご覧ください^^。
こちら↓は、見づらいですが劇場版パンフレットに記載の相関図のページの画像です。ご参考まで。(クリックして大きくして見ないと見えないと思いますが^^;)

 

ちなみに今のところ、輸入版のドラマ・バージョンのみDVD購入可能です。リー損は日本と同じですがPAL方式な点に要注意。PCでなら再生可能なそうです。併せてご参考まで。