避暑地で魔が差して | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

2015年 フランス、ベルギー

ジャン=フランソワ・リシェ 監督

原題: Un moment d'égarement / One Wild Moment

 

 

主演の2人目当てでWOWOWで録画したんですが、日本では劇場未公開の作品だったようです。主演キャスト以外の事前情報は次の三点。

 

・親友同士の中年男性がお互いの娘を連れてリゾートに出かける

・一人が相手の娘と出来心で肉体関係を持ってしまう

・恋愛コメディである

 

そして、その父親役2人が、ヴァンサン・カッセルとフランソワ・クリュゼ!どっちが友達の娘と面倒なことになるのかは本編での確認となりますが・・・。

 

フランソワ・クリュゼも、「ソフィー・マルソーの秘められた出会い」にとどまらず色男な役も沢山こなしていますが、この二人の組み合わせならば、やはりおヴァンサン・カッセルの方に色気担当がまわるでしょ!と予想。そして簡単に的中(笑)。

 

40代ど真ん中の親友2人、アントワーヌ(フランソワ・クリュゼ)とロラン(ヴァンサン・カッセル)。アントワーヌは妻と別居中でロランは離婚済み。アントワーヌの家族が代々受け継いできたコルシカ島の別荘にお互いの娘を連れてヴァカンスに。アントワーヌはこの夏であとから来るはずの妻との関係を修復したいし、子供時代からの良い思い出のある田舎での休日にワクワクですが、17歳と18歳の娘たちはいい年して親と何にもない田舎に行くなんてちっとも嬉しくない・・・というよくある出だし。

 

こちらが娘チーム。パパたちツーショットとは逆の並びですが、ブロンドがロランの娘マリ(アリス・イザーズ)、右がアントワーヌの娘
ルナ(ローラ・ル・ラン)。パパたちからしたらまだまだ子供だけれど、本人たちは一丁前の大人のつもり、見た目は若くてセクシー美人といういかにも男親からしたら扱いの難しい、色んな意味で危なっかしいお年頃。

 

”父親”を離れると鼻の下伸ばしてビーチやカフェで美人をナンパする普通の中年男ですが、いざ”父親”スイッチ入ると生真面目で石頭のアントワーヌに対し、ロランは見た目もノリも若々しいし夜遊びにも寛容だし娘目線で”イケてる父親”。お掃除しながら娘たちと音楽に合わせてダンスでノリノリになれちゃうほど、気安くて楽しい身近な年上の男性。となれば、”うちのパパより全然格好いい”→”男性として憧れる”となり、ホルモン多感な年頃のルナの女子の本能が刺激されるのも当然。

 

「マリのパパって物分かりよくてかっこいいよね♡」「そう?確かに、まぁ悪いけどルナのパパに比べたら、ねー(笑)」とガールズ・トークできゃっきゃしているだけで終わればいいのですが、そうはいかないオマセさん。翌日のレジャー、渓流下りからルナのロランに接近遭遇作戦がスタート。ペアになってロープ伝いに渓流めざして崖を降りていくという時に、親子ペア入れ替えを提案して、ロランと密着して「きゃーこわーい♡」とはしゃぐルナは、もうしっかり若い雌豹の目なのですが、まだこの時点では誰も気づかず呑気。

 

渓流を下った後の川遊びで皆でウェットスーツを脱いで水着にチェンジ。その時、ビッタリしたウェットスーツを脱いだ時の摩擦で偶然(?)ルナのビキニの片方がめくれあがって片乳がでちゃってたのを、ロランが気が付くまで放置して見せつけ、「あっ。いっけない。テヘ」って照れ顔して見せながらビキニを直すフリして、さらにおっぱいをグイグイと押し出してからのイン。もうこの顔つきは、明らかに確信犯でしょΣ(゚Д゚)。

 

そして、ビーチサイドのパーティで監督者として付き添うことになったロランが、娘たちが踊っている間に大人の美人と仲良くなっていい雰囲気になったのを目撃したルナはフルスロットル。策略的にロランと二人っきりになって、子供っぽく甘えたフリしてしこたまお酒を飲ませ、無邪気にはしゃぎながらビーチへ誘導、そしてスッポンポンになって夜の海へ飛び込み、ロランをしつこく誘い込み、キスをして、誘惑・・・。べろんべろんに酔っぱらって幻惑状態のロランは、キョーレツな若さの押しに流され、つい成り行きで・・・。やっちまったなぁ、おい!の馬鹿者なのです。

 

馬鹿こいたロランは自業自得ですが、それからがさぁ大変。暴走するティーン女子ほど勢いがあって怖いものはない^^;。一見、穏やかな朝食風景↑ですが、ルナが履いている短パンは、実はマリが父の日にロランにプレゼントしたパンツ(下着)。前夜満月輝くビーチでのお戯れの際にロランが履いていたのをいつの間にかくすねていたらしいのです。瞬時にマリは、全てを察してしまうのですが、中年オヤジたちはまだまだ呑気。┐(´д`)┌

 

皆でビーチに遊びに行けば、「ねぇ、日焼け止め縫って♡」とロランに甘えるルナ。「パパ(アントワーヌ)にやってもらえ」と逃げようとするのに、肝心のアントワーヌは他のことに気を取られていて「いま忙しいからロランに頼め」。それにしても、裸で夜の海とか、水着に日焼け止めとか、次から次へとなんとも古典的な手管だなぁ・・・と思ったら、1977年の同名のフランス映画のリメイクだそうです。なるほどね。スマホとかFacebookとかWiFiとか、ツール的なものは現代にアップデートしていますが基本的な筋はほぼオリジナルと同じのようです。とはいえ、実際、40年前も今も、10代女子のオマセとフェロモンといくつになってもお馬鹿な男たちの習性と陥るパターンは基本的に変わってないんだろうなぁ(;´・ω・)。

 

そのうち、アントワーヌもやっと、自分の娘が誰かと寝た後でポイ捨てられたらしい!と知るに至り、相手の男に怒り心頭。どこのどいつだ、許せん!と鼻息荒く犯人探しに躍起。マリが何か知っていそうだと、探りを入れたり、果てには当人のロランに「ルナはお前に懐いているから、お前の言うことならちゃんと聞くと思う。上手く相手を聞き出してくれ」と頼み込む始末。とにかく、オロオロとだらしなく格好悪いオジさんに一気に格下げのロランさん。映画冒頭と随分変わってしまいました(苦笑)。

 

満月の夜は、狼男も変身し、イノシシも発情して地上にはい出てくる虫たちを食べにウロウロ。全ての生き物の本能を刺激するパワーが大気に満ちた夜の過ち。なんていったって、名前がそのものずばり、ルナ=月ですから暗示的といいますか^^;。”恋に溺れちゃったティーン”ルナの行動はどんどんエスカレートするばかりで制御不能。爆弾娘ルナの熱愛アピールと娘マリからの軽蔑のまなざしに晒されながら、親友アントワーヌとの絆の前で右往左往するロラン。自分のことでいっぱいいっぱいで全然周囲の空気に気が付かない的外れなアントワーヌ。その様子は、確かに所々ユーモラスではありますが、うーん、これ、コメディだろうか?^^;

 

残酷さと愚かさと美しさを孕んだひと夏のドラマ、少女から大人になる家庭の物語、娘と父親の物語、としての見応えはありますが、日本人の感覚では(恐らくアメリカ人も)これをコメディとは分類しないよなー。フランス人たちは、これをみて「ほーら、男はいつでも馬鹿だよなぁ、あっはっは」て笑えるドラマとして観るのかなぁ?それがフランス人気質なのかなぁ。やはりアムールの国、成熟と同時にいつまでも未熟な部分を愛おしむラティーノなフランス人。

 

昔の映画のリメイクということもあるかもしれませんが、この映画を観た後は、なんとなく久しぶりにフランソワーズ・サガンの小説たちや、マルグリット・デュラスの『愛人/ラマン』とかの、生粋の”感受性の強いフランス少女”だった作家たちの作品を読み返したくなりました(*'ω'*)。

2人のベテラン色男俳優、フランソワ・クリュゼの子煩悩でちょっとトンチンカンなお父さんや、多様なキャラクターを演じ分けるヴァンサン・カッセルながら、つい最近の「たかが世界の終わり」では常にムッツリと不機嫌そうだったのから一転(撮影の時系列は逆ですが)、軽薄でチョイ悪オジサンも新鮮で楽しめました( *´艸`)。

 

ところで、この映画に関するどの紹介文、レビューその他の情報観ても「肉体関係を持った」確定として扱われているんですが、本編中、海の中で裸で絡みついてキスをするシーンも、浜辺でロランを押し倒して誘惑するシーンもありますが、実際に一線を越えている場面はありません。寄り添って寝そべりながら「私、これが初めてなの」とウットリと語るルナに、えぇ?それってどういうこと?!とばかりに動揺するロランに、かぶせるように「恋をしたのは初めて」と続けるので、ここでもちょっと「ん?」って思ったんですよね。

 

ルナがバージンである可能性は限りなく高いって最初からロランは知っているわけだし、本当に敷物すらないビーチで初体験が行われていたのなら、色々と大変だったろうし・・・「初めて」だったなんて、言わずも明らかだし・・・(下ネタですみません;;)。感極まってマリに告白するときも「あなたのパパと寝たの」ではなく、「あなたのパパに恋をしたの」という言い方だったし。ルナもロランも、それぞれ違うシーンで「決定的なことは何もなかった」と言っているし・・・それとも、それは相手を守るための嘘だったのか?どうなんだろうなぁ・・・。皆のこの後の為にも、実際にはキスどまりだったということであってほしいなぁ、と思う昭和生まれの日本人でした^^;。