パリ・オペラ座バレエ団『ラ・シルフィード』 (東京文化会館) | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。



去年、K-バレエカンパニーの『ラ・バヤデール』で久しぶりにバレエを観て気分が盛り上がったところで、パリ・オペラ座が約3年ぶりの日本公演!しかもロマンティック・バレエの王道『ラ・シルフィード』。さらに、長年カリスマ・エトワールとして活躍していたオレリー・デュポンが芸術監督に就任して初めての日本公演。でもチケット代高い・・・(T_T)と思っていたら、思いがけずお安く手に入りまして^^(転売チケットではありません)。ウキウキと出かけてきました。

 

オペラ座生え抜きの元エトワール、オレリー・デュポン。可憐でビューティフル。やっぱりオペラ座にはオレリーがいなくちゃ!と思わせるオーラがあります。

 

コンテンポラリーなバレエも素晴らしいとは思うのですが、身銭を切って観に行くならば、やっぱりいかにも”バレエ”らしい古典バレエが好きです。特にチャイコフスキー作品は、バレエを観たことがない人でも楽しめる鉄板コンテンツですが特に『白鳥』と、チャイコフスキー以外ではこの『ラ・シルフィード』それぞれの、白鳥のクラシック・チュチュとシルフィードのオーガンジーの羽つきのロマンティック・チュチュは、バレエを習うお嬢さん達がいつか着てみたいと憧れる2代衣装ではないでしょうか。というか、私がそうでした。有吉京子さんの漫画『SWAN - 白鳥 -』と山崎涼子さんの『アラベスク』にかなり影響を受けたからでもありますが(笑)。

 

『ラ・シルフィード』は19世紀にパリ・オペラ座で初演されたそうです。当時大ブームを巻き起こしたロマンティック・バレエの大傑作。つまりオペラ座にとっては伝家の宝刀のような作品。それを久しぶりの日本公演に選ぶなんて素晴らしすぎるオレリー采配に深謝。

 

古典バレエが好き、『ラ・シルフィード』も大好きといいながら、実は大人になってから観たことがなかったのです・・・タイミングの合う公演に何故かちっとも巡りあえなくて。なので余計に感動ひとしおです。最近は古典作品でも舞台美術とか演出を最新技術を駆使してモダンに仕立てるステージもたまにありますが、古典は古典らしくお願い!と思う私にとって、大満足の演出でした。美しい音楽と美しいバレエ・ダンサー達の素晴らしいテクニックと表現力に、ウットリの数時間でした。

 

舞台は、2幕構成。物語の舞台はスコットランドの農村。第1幕では、婚約者エフィとの結婚式を明日に控えたジェイムズが山小屋でうたた寝をしていると、シルフィードがやってきて、ジェイムズにキスをします。キスで目覚めたジェイムズは、美しい妖精の姿に魅了されてしまいます。夜が明け、次々とお祝いの客が詰め掛け結婚式の準備が始まりますが、ジェイムズはエフィとシルフィードとの間で心揺れ揺れ。そして魔女がやってきてエフィを占い、この(ジェイムズ)との結婚は幸福になれないと告げると、余計なこといってんじゃねーよ!と怒ったジェイムズはとっとと魔女を追い出しますが、エフィに片想いしていたジェイムズの友人ガーンは、ほらやっぱり僕の方がエフィを幸せにできるんだ!ジェイムズは相応しくない!と悪あがき。そしてジェイムズの結婚を悲しむシルフィードが結婚指輪を持って逃げてしまい、ジェイムズがそれを追いかけ、結婚式はもう滅茶苦茶。花嫁エフィは泣き崩れます。

 

第2幕。森の中で姉妹と怪しげな鍋をかき回している魔女。出来上がったのは、一枚のヴェール。空を飛び、すり抜けてゆくシルフィードを、このヴェールを使えばつかまえられるよ、とシルフィードを追いかけるジェイムズへプレゼント。もちろん魔女が普通に親切なわけがない。森の奥で、仲間たちと踊るシルフィードを見つけたジェイムズは、彼女を自分のものにしたいがために魔女からもらったヴェールを彼女に被せるのですが。実はヴェールには呪いが掛かっており、その呪いによってシルフィードは命を奪われてしまいます。はからずも自分の手で死なせてしまったシルフィードの亡骸を腕に抱き泣き崩れるジェイムズ。やがてシルフィードの魂は、仲間のシルフィード達と共に天へ昇ってゆきます。孤独と哀しみにうちひしがれるジェイムズの耳に、エフィとガーンの結婚式の宴の賑わいが微かに届いてきます。

 

私が観た昼公演のキャストは次の通り。

ラ・シルフィード: リュドミラ・パリエロ


ジェイムズ: ジョシュア・オファルト
エフィー: オーレリア・ベレ
魔女マッジ: アレクシス・ルノー
ガーン: アントニオ・コンフォルティ
エフィーの母: ニノン・ロー

 

スコットランドが舞台なので、シルフィード以外の衣装が皆、とっても可愛い♪男性ダンサーのタイツ姿が苦手な人も、タータンチェック・キルト風の(要するにスカート風の)衣装なので抵抗なく観られると思います^^。ダンサーは皆もちろん素晴らしく、あの人達ってなぜ、あんなに重力を感じさせないんだろう、あんなに飛んだり跳ねたりしているのにドタバタと音が立たないんだろう、なんであんなステップが出来るんだろう、と驚くことばかりですが、特にシルフィードのリュドミラ。シルフィード役だから当然ではありますが、明らかに他のキャスト達と違う存在、つまり妖精そのもののような軽やかで優雅で1gも重さを感じさせない踊りっぷり。外見も、可愛くて好奇心旺盛でいたずらっ子で、ジェイムスの心を他意無く惑わしてしまう、可憐な小悪魔ちゃんな魅力に溢れていました。

 

ジェイムズ約のジョシュアも情熱的なハンサム君ジェイムズにピッタリでした。結婚式のお祝いの最中、エフィとシルフィードと3人で踊るシーンも、お前は「サイボーグ009」の島村ジョーか、はたまた「ガンダム」のアムロ・レイか!つーくらい、二人の女性の間をいったりきたり揺れ揺れブレブレっぷりがお見事(笑)。途中、左腕でエフィを抱擁しながら、右半身でシルフィードをリフトする場面がありましたが、いったいどうやったらあんなことが出来るんだろう!とびっくり。さすがオペラ座。圧倒的な芸術世界に我を忘れてどっぷり浸りました。今までン十年生きてきて、一番の感動を覚えました。ふぅ~。

 

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あたたかな週末だったので、休憩時間はテラスで白ワインを頂いて一呼吸。C席で割引の企画チケットとはいえ、普通の来日ミュージカルのS席料金くらいは払いましたが美しい公演プログラム付きで、座席も3階席ですが舞台にも近くオケピも舞台も見舞わせる悪くないポジションだったし、大満足でした。

 

せっかく外出したし昼公演だったので、美術館か博物館か映画のどれかひとつをハシゴしようと思っていたのですが、バレエがあまりに素晴らしすぎていつまでも興奮さめやらず、一日の感動量をとうに超えていてもうキャパオーバー、今日はもうこれ以上何もインプットできないと自覚して家路につきました。でも興奮しすぎていたので、途中でホテルのバーに寄り道してクールダウンが必要なほどでした。またいつか、こんな素敵な舞台を鑑賞できるよう、週明けから頑張ってお仕事しなくちゃと、思いました^^。