オルセーのナビ派展 (三菱一号館美術館) | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。


オルセーのナビ派展
会期: 2017.2.4(土)~2017.5.4(日)
会場: 三菱一号館美術館
開館時間: 10:00~18:00
(祝日を除く金曜、第二水曜、会期最終週平日は20時まで)       
休館日: 月曜(3/20、5/1、5/15は除く)
公式サイト: http://mimt.jp/nabis/


日生劇場で『ビッグ・フィッシュ』を観たついでに、よいお天気の
午後だったのでふと思いついて近くの三菱一号館美術館まで足を
のばしてみました^^。目黒の庭園美術館に次いで、風情があって
建物込みで楽しめて寛げるお気に入りの都内の美術館です。
企画展も、(個人的な)アタリハズレはありますが結構幅広い
オツな企画が多くて、かつメジャーどころの企画展に比べると
割とゆったり観られることが多いのも嬉しいです。

「ナビ派」という言葉、今回の展示で初めて認識しました。
19世紀末のパリで前衛的な活動を行った芸術家たちのグループ
が自分たちを称した言葉で、彼らはゴーギャンやベルナールの美学
に強い影響を受け、平面的で装飾を重視した技法が特徴で、写実
主義の伝統から離れ目に見えない内面性を表現する試みが行われ
たそうです。また、浮世絵などの日本美術のブームも重なり、浮世
絵的な技法や構図の影響も多く見受けられます。
ナビ派の芸術を体系的に紹介する企画展は日本では初の試み
だそうで、オルセー美術館が誇るナビ派コレクションから80点に、
三菱一号美術館所蔵品が合わせて展示されています。

まとまって展示されているのを見ると、明らかにそれまでの西洋
美術の数々と比べて圧倒的にモダンですっきり洗練されている
作品ばかり。一気に新世紀が始まったかのようで、当時は尚更
革新的でセンセーショナルで、ものすごくお洒落だったんだろうなぁ
と、当時の人たちが初めて目にした時の衝撃や感動を想像しな
がら楽しく鑑賞しました。

ボナールやヴュイヤールといった画家が「親密派(アンティミスト)」
と呼ばれるなど、庭や公園の木々と女性たちや、子供たちなど
身近な存在をテーマに描くことが多かったのもナビ派の特徴の
ひとつだそうで、当時のブルジョワ階級の人たちの休日のひととき
の様子や、家の中のひとこまを切取った作品など、現実的かつ
日常的な作品が多い一方で、聖書や神秘的書物などスピリチュアル
な対象を研究しインスピレーションを得る芸術家も多かったようです。
それまでの芸術の伝統やトレンドから大きく羽ばたき前衛的な
試みを色々試す一方、宗教画や肖像画といった芸術の原点への
懐古するような要素もあって、とにかくあらゆる化学反応が起こって
いた魅力的な時代だったんだと感じました。


女性を描いた作品では、この↑アリスティード・マイヨールの
《女性の横顔》が一番気になりました^^。

今回一番の出会いは、スイスの裕福な家に生まれたナビ派の
芸術家、フェリックス・ヴァロットン。どの作品も、とても惹かれる
ものがありました。後から調べたら、2014年に同じ三菱一号美術
館でヴァロットンの企画展があったそうで、うーん残念。もっと早く
知っていたかった(>_<)。今後、画集や同時期の企画展などで
探してしまうアーティストが一人加わりました。


ヴァロットンの《ボール》。風が通り過ぎるその一瞬でストップモー
ションがかかったかのような一枚。赤いボールや、追いかける子供
の麦わら帽子と風にはためく洋服、影、遠くに見える保護者らしき
人物、のどかな午後のひとときの穏やかさと、緊迫感と言い知れぬ
不安感のバランスがなんとも言えず、つい魅入ってしまいました。


白黒のモノクロームの無駄のない構図と洗練されたラインで
構築される木版画の作品群も、素敵でした。


ヴァロットンの自画像。シンプルな白シャツとダークカラー
のニットの装いや、スマートに整えられた髭や髪型からも、
彼の作品から漂う”らしさ”が感じられます。タイムマシンが
あれば、一度お話聞いてみたい^^。


最後に展示されていた、美術館の所蔵品。ルドンの最高傑作と
される大きなパステル画《グラン・ブーケ(大きな花束)》。
照明の暗い食堂で映えるように計算されたブルー他の色が
本当に美しくて息を呑みました。

他にも、日本の屏風絵にインスパイアされたと思しき、屏風風の
大きなパネル作品なども数点あって、ジャポニズムが当時世界で
一番おしゃれな街パリで昇華されるとこうなるのかーと。
それにしても、当時は遠い遠い、東の海の果てにある、地図で
見つけるのが大変なくらいの小さな小さな神秘的な小国の日本。
ヨーロッパの多くの人が存在も知らなければ、どんな国かも知らず
ほとんどの人が一生訪れることもなかったろう、未知のアジアの
ちいさな国の芸術品が、西洋美術や文化に与えた影響や衝撃
の大きさを想うたびに、日本ってすごいなーと毎回驚きます。
芸術的なセンスは残念ながら・・・ですが、自分もそんな素敵な
日本の良さをなにかしら継承して未来につなげていけますように。