「手まりの罪」 その4 | ものがたりの小部屋

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昭和8年生まれのおばあちゃんが、小学生の頃を思い出して書いたものがたりです。こんな時代があったことを、残せたらいいなと思っています。
ときどき童話も書いていきます。

先生がくじの入った箱を取り出していいました。


「さあ出席簿の順に一人ずつくじをお引きなさい。ズルはいけませんよ。ひとり一本ですよ。」

月子さんの胸はどきどきとゆれてきました。なぜなら月子さんの名前は青井月子。出席簿の一番目なのです。


「早くひけよ」

いつのまにかクラスのみんなが立ちあがって月子さんをとりまいていました。「早く、早く」


先生も

「青井さん。もう引いてもいいんですよ」

といいました。


みんなに見つめられて赤くなりながら月子さんは思いきって箱の中の一本をとりました。


「はしに赤い二重丸のついているのがアタリです。」

先生の説明がおわらないまにクラス一番ののっぽの子の手がのびて月子さんのくじの紙をひったくりました。


「やーい、ハズレだ、ハズレだ」

というひやかしの声をせにして月子さんは自分の席へにげてかえりました。


教室のゆかにほうり出された月子さんの分のくじは何もしるしのないさびしい白でした。和田という姓の春子さんは順番がだいぶん後でしたが、やがていがいなほどおちついた春子さんの声が聞こえてきました。


「当たったわ。でも私はお姉さんのお古のゴムまりがあるし」

「何だ、お前の姉さんのお古って手まりのボールじゃないか。でもいらないんならよこせよ」

「いいえ、やっぱりもらうわ。みんなでまりつきをするんだもの」

「やあい、せっかく当たったボールも手まりにしちゃうんだろ」

「あんたがた どこサ 

せんばサ

せんば山には

たぬきのおつてサ」

と男の子たちはひやかしの合唱をはじめました。


「手まりをつくのがどうして悪いの」



と春子さん。春子さんは成績も良く気も強いのです。