「手まりの罪」 その3 | ものがたりの小部屋

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昭和8年生まれのおばあちゃんが、小学生の頃を思い出して書いたものがたりです。こんな時代があったことを、残せたらいいなと思っています。
ときどき童話も書いていきます。

「さあさあ、みんな席について。ひさしぶりにたのしいお話ですよ」


もうおばあさんの先生はしらが頭をふりふりみんなを席につかせました。

「みんなも知っていますね。アジアの中の南の国々はわが国のおともだちだということを」

と先生は話しはじめました。


「私たちはこれらの国のひとびとと仲良くしなければなりません。わが国がせんとうに立って敵国と戦わなければなりません。南の国のひとびとはそうしたわが国に感謝しているのですよ。それでこのたび南の国から日本の少国民のみなさんにと贈り物がとどいたのですよ」


そこへ学校の用務員さんが大きな箱をもつてきて先生の机の上におきました。


「南の国はとても暑い。日本の国とは気候がまったくちがうからいろんなめずらしい植物がそだっているのですが、なかでも役に立つのはゴムの木です。戦争遂行のために生産されているのですが、こんどはそのゴムでボールをつくって日本の少国民に送ってくれたのですよ」


先生はほらといいながら机の上の箱のふたを開けてゴムボールを取り出して見せました。生徒たちはわっといいながらたちあがって新品のボールをのぞきこみました。ゴムボールはかなり前から町の商店にも百貨店にもすがたを見せなくなっていたのです。みんなはゴムボールのぶわぶわした手ざわりを思ってにこにこして顔を見合わせました。


「ざんねんなことにこのゴムボールはみんなにいきわたるほどたくさんはありません。だからくじ引きをしなければなりません。さあそれでは今からくじ引きをしましょう」


 月子さんはがっかりしました。くじには弱かったからです。おみくじを引いても小吉か凶しか出なかつたし、ジャンケンをすれば負けてばかりだったのです。