21年前の夜


ロンドンから関空に向かう乗務の途中、阪神大震災を知りました。

帰宅途中に寄った、西宮の実家は全壊。
暗闇の中、瓦礫の山となっていました。


親戚のもとに身を寄せていた母をみつけ、神戸の我が家へと連れて帰りました。


車で8時間。


ずっと母の手を握っていました。


「痛い」と、母は手をほどきました。


それでもしばらくすると、また母の手をギュッと握っていました。


あれから21年 たつのですね。


震災後、ともに暮らした母は、昨秋亡くなりました。


近年は、母と外出するときは転倒しないよう、いつもギュッと手を握っていました。




亡くなる夜、ベッドの横でずっと母の手を握っていて、気がつきました。


母の手がとても柔らかいことに。


握りしめすぎて、今まで気づかなかったのかもしれません。



わたしの手のひらには、今も母の手のやわらかな余韻が残っています。



その手の柔らかさ、気づけて良かったと思っています。


お読みいただきありがとうございます。


これを読んで、大切な人の手を、あらためて見たり、

触れたりしてくださると嬉しいです。





震災で亡くなった方々に哀悼の意を表します。

そして母に愛と感謝を。