回転イスに座って
誰かにイスをクルクル回されると
少しなら大丈夫ですが
長いと目が回って立てなくなりますね
回転イスでなくても
立った状態でクルクル回ると
目が回ってフラフラになります
「目が回る」ということですが、
目が回っている状態では
実際に目が動いています
自分の目を見るのは難しいので
目が回って立てない人の目を
見てみましょう
目玉がキュッキュッと左右に動きます
これを、眼振といいます
頭が回転するのを感じるのは
耳の鼓膜の奥にある3本の半規管
それぞれのループの根っこあたりで
膨らんだ膨大部にあるクプラが
頭の回転によって半規管の中の
内リンパ液の流れで
傾かされて頭の回転を感じます
参考:拙ブログ『頭を動かされたのを感じる仕組み(1)』
この眼振ですが
クルクル回らなくても起こせます
寝耳に水
その意味は違いますが、
耳の穴に 50cc くらいの冷水を
入れると眼振が起きます
体温と冷水の温度差で
内リンパ液に対流が発生して
半規管の中のクプラを傾けるのです
クルクル回っても
目が回りにくい人達もいます
バレエやフィギュアスケート
といった回転系スポーツの選手
バレエでつま先を中心に回るのは
ピルエット
フィギュアスケートなら、スピン
ずいぶん前、
「トリビアの泉」だったか
フィギュアの安藤美姫さんが
回転台でかなり回されても
直後に真っすぐ走れた、というのを
テレビでやっていましたね
彼女らが、目が回りにくいのは
訓練の賜物なのですが、
脳では
どのような変化が起きているのか
を調べた論文が発表されました
Nigmatullina Y, et al., (2013)
The Neuroanatomical Correlates of Training-Related Perceptuo-Reflex Uncoupling in Dancers
Cerebral Cortex
doi: 10.1093/cercor/bht266
バレリーナの回転、バランスの秘密は脳の変化
実験では
29名の女性バレリーナと
年齢・身体能力とも近い20名の
女性ボート部員を比較しています
回転イスに座って
イスがクルクル回ります
イスには小さなハンドルが付いていて
自分が感じている回転の感覚を
そのハンドルで表現します
また、眼球運動もモニターして
眼振の様子を記録します
まず、
バレリーナは眼振が治まりやすく
回転の感覚も早くなくなることが
確認されました
それから、
小脳でバランス感覚を司るのは
前庭小脳という、小脳の真ん中の
虫部に隣接する古小脳ですが、
MRI で脳の構造を調べたところ
バレエ歴が長いほど
この前庭小脳の灰白質密度が
小さかったとのこと
また、
ボート部員(対照群)では
前庭小脳の灰白質密度が小さいほど
眼球運動と回転感覚の両方とも
治まるまでに時間がかかりました
一方、
バレリーナでは
前庭小脳の灰白質密度が小さいほど
眼球運動が治まるのに時間が
かかったのは対照群と同じでしたが、
回転感覚の治まりはその逆で、
前庭小脳の灰白質密度が小さいほど
早く治まる傾向がみられました
拡散テンソル画像で
ニューロンの配線部分である白質の
異方性を調べたところ
バレリーナでは
前頭葉への線維連絡の様子が
違っていたとのこと
つまり、
回転系でトレーニングした選手は
バランス感覚を司る小脳の領域が
小さくなるなどして
過度な回転の影響を小さくしている
ということが分かったのです
(おしまい)
文:生塩研一
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