ワールド・サイエンス・フェスティバルのイベント会場では

「正義の科学」というテーマで

ディスカッションが行われていて、

 

大勢の観客が舞台上のパネリストの人たちに

注目していました。

 

と、その時、

 

一人の男が舞台下手から駆け上がり

心理学者のソール・カッシニ氏が手にしていたiPadを

ひったくって逃げてしまったのです。

 

 

騒然とする会場・・・

 

事件だ~~!

 

ご安心ください。

 

これは

「人間の記憶がいかに曖昧か」を証明する社会実験だったのです。

 

その後、6人の容疑者たちの顔写真があげられます。

 

「6人の中から犯人を選ぶように」

 

との指示が観客に与えられ、

投票は各自のスマホからおこなわれました。

(服装は考慮に入れないように告げられました)

 

その結果です。

 

 

 

事件は観客の目の前で起こっていたのですが、

かなり意見がばらけましたね。

 

もしこれが本当の事件であれば、

 

この写真の6人のうち

5人はなんの罪もない人たちです。

 

21.7%と高い確率を獲得した4番目の男性は

この会場のカメラマン!

 

 

 

そして正解は5番目の男性で

正解率は17.4%でした。

 

(向かって左の人です)

 

これが本当の事件なら

高い確率だった1番目の男性は

被疑者としてマークされていたかもしれません。

 

 

国際的な非営利団体の報告によると、

2015年には

 

DNA鑑定によって受刑者の無実が証明された事件は325件ですが

約73%の235件は

目撃した人の誤認だったそうです。

 

 

目撃情報から多くの冤罪が生まれているということですよね。

 

目撃情報は犯人逮捕には有力な手がかりだと思いますが、

一歩間違えば、無実の人が10年も20年も刑務所で過ごすことを余儀なくされ

人生を狂わせることになります。

 

私は、私自身の記憶がまったく当てにならないことを

誰よりもよく知っているので

 

目撃情報の提供なんて、ぜったいに無理無理!!!

 

 

ロンドン大学の心理学者のジュリア・ショウ博士は自称「記憶ハッカー」

「起こっていないこと」を「起こった」と

人に信じ込ませることができるのだそうです。

 

ジュリア・ショウ博士曰く

「人にニセの記憶を植え付ける方法は、簡単!」

 

ある出来事を視覚的にイメージして

それをひたすら繰り返すだけで、

 

どうやら人は誤った記憶を

「本当の記憶」だと信じてしまうらしいです。

 

 

アメリカの認知心理学者のエリザベス・ロフタス博士の行った実験で

「ショッピングモールの迷子」というのがあります。

 

被験者のAくんに、両親や兄や姉たちが

過去に実際にあった思い出話をします。

 

その後、

「Aは小さいころ、ショッピングモールで迷子になったことがあるよね。

覚えてる?」

 

と言います。

 

「ショッピングモールでの迷子」の話はまったくの作り話です。

 

Aくんは当然、

 

「迷子になったことなんてないよ!」

と言いますよね。

 

両親や兄や姉たちは

 

「その日は暑い日だったよね。」とか

「Aくんは、迷子になって泣いていたよね。」とか

「覚えているかい?

白いポロシャツのおじいさんが親切にしてくれたよね。」

 

などと、繰り返し、具体的にイメージさせていきます。

 

これによってAくんは

「ショッピングモールでの迷子」のイメージを強めていっていくのです。

 

するとAくんは

 

「思い出した!

そういえばそうだった!」

 

そして、

 

「ポロシャツは白じゃなくて青だったよ!」

 

と言い始めたのです。

 

記憶が書き換えられちゃった!!!えーガーン

 

最後に種明かしをして

「ショッピングモールでの迷子」の話は作り話だと何度伝えても

 

「嘘だ!

僕はちゃんとショッピングモールで迷子になったことを

覚えているんだ!!!」

 

と言い張る子どもまで出てきたそうです。

 

「ショッピングモールでの迷子」の被験者は子どもでしたが

大人の4分の1にも、この「嘘の記憶」の書き換えができるそうなんです。

 

エリザベス・ロフタス博士はこの「噓の記憶」が

犯罪や事故に関係しているとして、

 

O.J.シンプソン、マイケル・ジャクソン、

ケヴィン・スペイシーといった人たちの弁護に参加してきました。

 

人は簡単に情報源を忘れて

いつでも上書きOKの状態になっているようです。

 

昔の友だちに会った時

同じできごとの話を言っているはずなのに

妙に食い違いを感じることってありませんか。

 

また、「言った」「言わない」という永遠に解決がみられないトラブルなど

真実は一つのはずなのに、「どうして?」って思いますよね。

 

それは、きっと、「記憶ハッカー」にやられてます!!!

 

記憶を書き換えられてしまっているのです。

 

「記憶ハッカー」をやっつけることはできないにしろ、

自分がやられている可能性があることだけでも知っていると

 

少しは心穏やかに過ごせるかもしれませんね。

 

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私たちが心の底から信じていることが

必ずしも真実だとは限らない

 

エリザベス・ロフタス 心理学者

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音譜今日もお読みいただきありがとうございました。 明日もよろしくお願いいたします。音譜