冷たい冬のある日のこと

 

二匹のヤマアラシは

 

「寒いね!」

「ホント、寒いね!」

 

と言い合いながら

凍えることがないようにピタッと体を寄せ合いました。

 

ところが

「痛っ!」

「イテテテ・・・」

 

相手のとげが自分を刺したのです。

そこで二匹は離れました。

 

離れると、また、

「寒いね!」

「ホント、寒いね!」

 

そしてくっつくと、また、

「痛っ!」

「イテテテ・・・」

 

そういうことを繰り返しているうちに

 

「お互いを傷つけずにすみ

しかも、ほどほどに温めあうことができる」

 

そんな、「ほどよい距離感」を見つけたのでした。

 

 

二匹のヤマアラシがくっついたり離れたり・・・

想像しただけで、可愛いですよね。

 

これはドイツの哲学者アルトゥール・ホーペンハウアーが作った寓話です。

 

仲良くなるには、当然、近づかなければいけませんよね。

 

もっと相手に近づきたい・・・

でも心の距離がしだいに縮まってくると

 

相手への期待や要求が増え

言わなくていいことまで言ってしまい

お互いを傷つけあう・・・

 

でも離れてしまうと

今度はひどい寂しさに襲われて

疎外感、不信感が生まれる・・・

 

アメリカの精神分析医のべラック氏は

このような心の葛藤を、寓話を通して

「ヤマアラシ・ジレンマ」と名付けました。

 

 

アドラーが

「すべての悩みは対人関係の悩みである」

と言っているように

 

人間関係の悩みは誰しもが多かれ少なかれ抱えています。

 

自分にとってはなんでもないことが

知らない間に相手を傷つけてしまうこともあるでしょうし、

 

また逆も然り・・・

 

社会的動物の私たちは

家族、親戚、学校、職場、サークル、友人関係、ご近所さんなどと

いろいろなかかわり方が必要とされています。

 

それぞれに、どの距離ならお互いに心地よく付き合えるのか、

 

「出すぎちゃったかな?」

「引きすぎちゃったかな?」と

 

ヤマアラシくんたちのような「ほどよい距離」が見つかるように

試行錯誤ながら人間関係を織りなしているのです。

 

自分では「ほどよく距離を置いてる」つもりでも

相手はどうかわからない・・・

 

だから、「ほどよく距離を置く」って、難しいですよね。

 

弁護士で「ほどよく距離を置きなさい」の著者である

湯川久子さんはこのようにおっしゃっています。

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自分が思っているよりももう半歩だけ、

ちょっと距離を置いてみると、

いつもより少し、

優しい自分になれるような気がするのです。

 

近すぎる糸は、もつれます。

 

多くの人間関係のからまりは

距離が近すぎるがゆえに起きるものです。

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本当に、近い人たちには

よかれと思ってやったことが

「大きなおせっかい」になっていたり

 

自分では気がつかないうちに

コントロールしようとしていたり

 

「自分が思っているよりももう半歩だけ、

ちょっと距離を置いてみる」って

とても大切だと思います。

 

小林正観さんも、

著書「すべてを味方 すべてが味方」の中で

 

「人間関係で大切なことは距離感」

 

とおっしゃっています。

 

ではどうやって距離感を持てばいいの?

 

精神科医の樺沢紫苑さんの言葉です。

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コミュニケーションがなければ

心の距離感は見極められない

 

まず自己開示をして、

コミュニケーションのキャッチボールをやりながら

距離を縮めていくしかない

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「ほどよい距離感」は人によって違います。

 

つまり

百人百様の距離の取り方があるんですよね。

 

だから、まず、心をオープンにして、

 

それから、ヤマアラシくんのように

 

くっついてみたり、離れてみたりしながら

見極めていくしかないのでしょうね。

 

ところで

実際のヤマアラシは、針を刺し合うようなことはせず、

暖をとるときは、頭の部分を寄せ合うのだそうです。

 

 

な~んだ、ヤマアラシくん、

「ほどよい距離」を

初めからちゃんと知ってたんですね!

 

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嫌いな人がいたら

好きになるところまで離れればいいのよ

 

吉本 ばなな 作家

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音譜今日もお読みいただきありがとうございました。 明日もよろしくお願いいたします。音譜