谷中の里に古びたお寺がありました。
寛永の頃、将軍とお供のものが鷹狩の帰りに
この寺に立ち寄られました。
ちょうどその時、
80歳になろうかという老僧が
庭で接ぎ木をしていました。
将軍が「何をしているのか?」と聞くと、
老僧は「接ぎ木をしています。」と答えました。
すると将軍は笑って言ったのです。
「あなたは年老いているので、今、接ぎ木をしても、
この木が大きくなるまで、命が続いていいるかどうかわからないだろう。
だからそのように心を込めてやる必要はあるまい。」
これに対して老僧はこう答えました。
「よく考えてみてください。
今、接ぎ木をしておけば、
後世の代になってどれもが大きく育っているでしょう。
そうすれば、林も茂り、
寺もなんとかやれていけます。
私は寺のためを考えてやっているのです。
決して私一代のことだけを考えてやっているのではありません。」
これを聞いた将軍は
「老僧が申すことはまことであり、もっともなことだ」
と感心されました。
(戸田智弘さん著「座右の寓話」から抜粋しました。)
「恩送り」という言葉があります。
「恩返し」という言葉もありますが、
「恩返し」は恩をくださった人にお返しをする
1:1のやり取りです。
それに対して「恩送り」は
誰かから受けた恩を直接その人に返すのではなく,
別の人に送ります。
そして、それを受ける人の人数に上限はありません。
この老僧は、ご自身が人生で受けてきた感謝の気持ちを
後世の人達に接ぎ木を通して「恩送り」しているのです。
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地球に恩返し
未来に恩送り
ひろはま かずとし 言の葉彩画家
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ドイツの宗教改革者マルティン・ルターは
「たとえ明日世界が滅びることを知っていても
今日、私は、リンゴの若木を植えるだろう」
と言っています。
リンゴが育つには時間がかかります。
もし明日、世界が滅びるなら
リンゴの若木を植えるなんて無駄ですよね。
それでもルターは
「希望の芽を摘むことはない」と言っているのでしょう。
「どんなことでも7世代先まで考えて
決めなければならない」
これはネイティブ・アメリカンのイロコイ族の言葉です
一代を約30年と考えると
7代目って約210年後
そんな先のことなんて、考えてみたことない!!!!
それが普通です。
でも、イロコイ族の人たちは
例えば、儀式で使う一本の木を切り倒す時も
魚一匹を捕る時も
「7代先の子孫のためになるか、困らないか」
という価値観を、基準にするのだそうです。
彼らが選ぶ時の基準は
7代目先の子孫が笑顔になれるかどうか。
もしその答えが“No”であれば、その行為を止めるんだそうです。
そして木を一本切ったら一本植える・・・
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生きとし生けるものに敬意を示せば
彼らは敬意を持って答えてくれる
ネイティブ・アメリカン アラポホ族
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ネイティブ・アメリカンのナホバ族には
こんな格言があります。
「大地は、先祖から譲り受けたものではなく、
我々の子孫から借りているのだ」
自然をともに生きてきたネイティブ・アメリカンの人たちだからこそ言える
叡智あふれる言葉に感じます。
今ある大地が「子孫から借りもの」と思えば、
より実り多いものにして子孫にお返ししたいですよね。
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世界に変化を望むのであれば
自らがその変化となればいい
マハトマ・ガンジー インドの政治家
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日本は多くの先人たちが素晴らしい文化と知恵と心を
私たちに受け継いでくれました。
感謝です。
一人の人間の命には限りがありますが、
恩送りはできます。
「恩送り」
素敵な言葉ですね。
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すごい世界に生きていることの有難さがわかったら、
前の世代に恩返しをしたくなる。
次の世代にもっといいものを残したくなる
武田 双雲 書道家
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今日もお読みいただきありがとうございました。 明日もよろしくお願いいたします。