イソップ物語に「旅人とクマ」というお話があります。

 

二人の旅人が森の中を歩いていました。

 

するとそこへ突然大きなクマが・・・

 

一人はいち早くそれに気づき、一目散で木に登って隠れましたが

 

もう一人は逃げ遅れたため

仕方なく地面に倒れて

息を殺して死んだふりをしていました。

 

クマはクンクンとにおいをかぎながら

倒れている旅人の周りをまわり、

 

耳元で何か言うと

そのまま立ち去ってしまいました。

 

木の上に登っていた旅人が降りて来て言いました。

 

「クマは何か言っていたようだったね。」

 

地面に倒れていた旅人は答えました。

 

「あぁ、クマは言っていたよ。

危ない時に自分だけ逃げだすようなヤツと

旅はしない方がいいよ、ってね。」

 

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言葉だけのやさしさに

だまされてはいけない

やさしさとは

行動でわかるもの

 

ゲッターズ飯田 占い師

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“A friend in need is a friend indeed.

(苦難にある時の友は真実の友)

 

このような英語のことわざがあります。

 

本当に、大変な時って

気にかけていてくれるだけでも心強いですよね。

 

孔子は「論語」の中で

 

「生涯を通して行うべきことを一言でいうとなんでしょう?」

 

という弟子の子貢の問いに対して

このように答えています。

 

「それは、恕(じょ)。思いやりです。

相手の身になること、ゆるすこと。

自分がされたくないことは、人にもしてはいけない。」

 

相手の身になるこころが「恕」

つまり「共感」なんです。

 

次のお話は

「旅人とクマ」の中の木に登った旅人に

是非聞かせたいお話です。

 

クリフトン・デイヴィスさんは俳優・歌手として

アメリカで活躍するエンターテイナーです。

 

13歳の時、学校からワシントンへ

卒業旅行に行きました。

 

この旅行では、首都ワシントンだけではなく

メリーランド州のグエン・エコー遊園地にも行くことになっていました。

 

旅行当日は、興奮で震える思いで列車に乗り込みました。

11人のグループで黒人はクリフトンだけ

 

ルームメイトのフランクとはたちまち親友になりました。

 

次の朝、先生が

「クリフトン、お話があるの。ちょっと来て。」

とクリフトンをよびました。

 

そのとたん、同じテーブルにいた仲間、

特にフランクが青ざめるのがわかりました。

 

なぜなら、前の晩

水を入れた風船を窓から通行人の頭上をめがけて落として遊んでいたところ

 

プードルを連れた太ったおばさんを直撃してしまったのです。

 

「バレたかな?」

誰もがそう思いました。

 

先生のところに行くと、

どうやらその話ではなさそうです。

 

「あのね、クリフトン・・・」

 

先生は何か言いにくそうに見えました。

 

「グエン・エコー遊園地はメリーランド州にあるの。

それはね、アメリカの北部と南部の見えない境界線を越えるということ・・・」

 

先生の目は潤み、手が震えていました。

 

そして、とうとう言葉に出したのです。

 

「遊園地の経営者は、黒人の入場を許可してないんです・・・」

 

クリフトンはたずねました。

 

「それじゃあ、僕は遊園地に行けないっていうことですか。」

 

先生はゆっくりうなづき

「あなたは今夜はここに残り、一緒にテレビで映画を観ましょう。」

と言ってくれたのです。

 

部屋に戻るとフランクが心配そうにたずねました。

 

「あの太っちょのおばさんが告げ口したの?」

 

クリフトンはベッドに身を投げて泣き出しました。

 

仲間と遊園地に行けないことだけじゃなく

「黒人」であることがどんなものかを思い知らされたからです。

 

「どうしたの?何があったの?」とフランクの低い声

 

「今夜一緒にグエン・エコー遊園地に行けなくなった。」

 

「どうして?」

 

「僕が黒人だから・・・」

 

「そうか、よかった、助かったな。」

フランクはいたずらが見つかったのではないと知って

ホッとしたのでしょう。

 

こう続けました。

「もっと大変なことかと思ったよ!」

 

クリフトンはフランクをにらみながら言いました。

「大変なことだよ。

僕は黒人だから、一緒に行けないんだよ!!!」

 

フランクめがけて、一発お見舞いをしてやろうと思ったその時、

 

フランクは言ったのです。

 

「それなら、僕も行かないさ!!!」飛び出すハート

 

一瞬二人は動きを止めました。

 

そしてフランクはニヤリとしました。

 

あの瞬間をクリフトンは決して忘れないでしょう。

フランクだって遊園地に行くことをとても楽しみにしていたはずです。

 

でも、それよりもっと大切なことがあることを

フランクは知っていたのだと思います。

 

気づいた時には仲間が集まっていました。

 

「僕も行かないよ」

「黒人を入れないなんて、ふざけた奴だ!!!」

「僕も残るぞ、クリフトン」

 

クリフトンは胸がどきどきしてきました。

小さな革命が生まれました。

 

こうして11人の少年は「水入り風船軍団」を結成し、

「僕らは行かない。」と決意したのです。

(ジャック・キャンベル&マーク・ハンセン共著

「こころのチキンスープ」からの抜粋です。)

 

純粋な優しさです。

クリフトンは何よりも誇りでいっぱいだったと言っています。

 

「水入り風船軍団」はグエン・エコー遊園地には行かず

その夜は、いったい何をしたのでしょう?

 

また、窓から水入り風船を通行人をめがけて投げていた?

 

いいえ、違いうんです。

 

先生がセネターズ対タイガースの野球のチケットを買てきてくれて

 

11人全員が生まれて初めて

本物の球場でプロ野球の試合を観に行くことができたのです。

 

ほらね、神様はちゃんと応援してくれています!!!ウインクスター

 

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他人に対する思いやりと共感は

私たちが差し出せる最大の贈り物なのだ

 

タルサン・トルク 

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思いやりはあらゆる矛盾を解決して

人生を美しくし、

ややこしいものを明瞭に

困難なことを容易にする

 

トルストイ ロシアの作家

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音譜今日もお読みいただきありがとうございました。 明日もよろしくお願いいたします。音譜