《熊と上手く付き合って行く上で》
私の名前はタライダ、日本名を七海と言います。ウクライナ出身の環境活動家です。
現在は、日本の酪農地域である栃木県那須塩原市でチーズ工房を起業しようとしています。
私は様々な仕事兼業して来ました。
チーズ作りや、キノコ栽培をする他、獣医や外科医もします。刃物鍛冶、刃物製作者としてカスタムのダマスカス・ナイフの製作もします。
ウクライナでは、日本のように国民健康保険システムが整っていない為、お金がないとお医者に診て貰えません。そのような事情から、無免許で、獣医や、人の外科医も兼業していました(ブラック・ジャックのような感じ)。実家が酪農家であり、畑も数ヘクタール持っていたので、酪農や農業と共に育てられました。
故郷のウクライナでは熊と仲良しだったので、日本でも地域のツキノワグマを絶滅から守る愛護活動をしようと思っています。
ウクライナでは、過去数年間、森林伐採が急速に行われ、いつか緑だった国が砂漠だらけになり、砂嵐が吹き荒れるようになりました。行政や国は、高齢者の貧困を加速させ、
その土地を没収し、大規模な遺伝子組み換え農業を進めていました。
森の動物達は生活の場を失いました。
私はカスタム・ナイフや、陶芸品などのインターネット販売によって集めたお金で15ヘクタール程の森林を購入し、密猟や森林伐採から守り、動物たちの駆け込み寺にする活動をしていました。駆け込み寺の中では動物達も状況が解っていて、互いを捕り過ぎないように気を付けていました。
その駆け込み寺に野生の熊も逃げて来ていたので、私と熊の関わりは長いです。
写真はかれこれ十年の付き合いがある熊ちゃんと私のツーショットです。
ここ数年、私が長年大切に管理していた保安林は、その周辺で残されているたった一つの森になってしまいました。
その森が今年の戦争で爆撃され、そこに逃げ込んだ街の生存者と動物達が死んでしまったという一部始終を現地の知人から聞きました。
故郷の町、イジュームは爆撃で町そのものが無くなってしまい、母も祖母も安否が解りません。
故郷で守って来たものが無くなってしまったので、これからは第二の故郷である日本の地域の自然を守りたいと思っています。
私は日本の風土や自然にとても感銘を受け、すぐに好きになりました。
日本の文化や自然や人々は好きなのですが、
その日本での農薬の使用量の多さや、森や動物との関わり方には課題も多く感じています。
日本の本州の文化が熊を恐れる方向で形成されて来てしまった事は残念に思います。
熊はとても聡明で愛らしい動物です。
熊は、人間の6歳児程の知能があります。
人に飼われた事がない野生の熊も、持ちつ持たれつの協力やギブアンドテイクの関係を非常に早く理解します。
また一度友達になると、飼い犬のように忠義心が強いのです。
ウクライナで私は、何頭もの熊と交流を持っていました。
私が森で作った家や、食糧貯蔵室などは、いずれも熊に建設を手伝って貰いました。
丸太などを滑車とロープに結わえ付けると、
熊が梁の高さまで丸太を引き上げてくれます。
私は熊達と過ごした楽しい思い出が沢山あります。
蜂蜜と引き換えに、労働を約束させると、
熊は必ず約束に現れ、褒美である蜂蜜の為に仕事を頑張ってくれました。
丸太や資材を、小屋がある場所までの長い道程を引っ張ってくれました。
交換として私は私が飼っている蜜蜂の巣箱から蜂蜜たっぷりの枠を幾つも熊に与えたり、
帰る道程が長いので熊を一晩小屋に泊めてあげたりしました。冬に来て雪掻きをしてくれた事もあります。
ウクライナやロシアなど、人間が熊を恐れない文化では、熊も人間を恐れず、襲うことも殆どありません。
ですので、熊を駆除するという日本の考え方は私には全く馴染みがないものです。
日本では人間と動物の間に大きな距離がある事を感じます。そういう文化的な違いを踏まえまして、駆除について思いますのは、
それは、護身の観点からも逆効果だという事です。
なぜかと言いますと、
一つに、
鉄砲を撃てる距離では人は危険にありませんが、至近距離でいきなり出会った時には鉄砲を構えられませんし、襲われる登山客の多くは武器を持っていません。
二つ目に、
人が熊に対して残酷な事をすると熊が覚えてしまうと、熊の方でも人間が怖くなり、凶暴化してしまいます。
「襲わなければ襲われる」と熊に覚えさせるのでなく、むしろ、人と熊の関係が良ければ熊の方からは人を襲わなくなります。
三つ目に、
駆除は種を絶滅させる危険を増大させる上、
その場しのぎ的で、持続可能な解決になっていないのです。
駆除する前に、熊が頻繁に山から人里に降りて来ないように、人を襲わないように、
人間の側でできる事が沢山あります。
共存の可能性を探る上で重要なのは、
熊という動物についてもっと良く知る事です。
ー どうやったら熊から身を守れるか。ー
まず最初に、どうしたら熊に遭う危険そのものを回避出来るか。
《ポイント1 人が獣道を避ける。》
熊は人間の登山道を横断する事はありますが、
人の道に沿って歩く事は絶対にしません。
専用の獣道を歩きます。
よって、人間が獣道を歩いていると遭遇してしまうリスクが格段と高くなります。
獣道は一般的に危険です。
熊以外ではイノシシも専用の獣道を持っています。イノシシの方が熊より断然危険です。
イノシシは攻撃的で、人の振る舞いに関係なく攻撃して来るからです。
登山者は、獣道と人の登山道を見分け、無意図に獣道に迷い込まないように気を付けなければいけません。
イノシシならば沢山足跡を残しているでしょう。
熊の獣道には特徴があります。
その道はくねくねと細かく蛇行しています。
また道の脇の木の幹や枝などには必ずと言っていいほど熊の毛が付いています。
熊は木の幹の身体を擦り付けてマーキングしながら歩くからです。
なんか怪しいと思ったら、このような特徴に注意するとよいでしょう。
それでも獣道の上で遭遇してしまったらどうすれば良いか?
《ポイント2 人間が獣道から降り、熊に道を譲る》
獣道は熊の持ち物、縄張りであり、そこを歩くのは熊の特権だと熊は考えています。
ですので、道を譲れば、通常であれば熊は構わずのしのしと歩いて行きます。
獣道においては熊の側からは絶対に道を譲ろうとしない為、ここで熊を追い払おうとする事は対立につながり熊を怒らせます。
獣道では熊を威嚇しないで下さい。
獣道で遭遇したら、人が道から避けるといいのですが、一歩も下がらずして道の脇に横歩きで避けるのがポイントです。
そこに茂みがあっても、身体を茂みに押し付けるようにして横に避けた方が一歩下がるより良いです。
また、この時には目で熊の顔を睨めつけるようにすると良いです。
視線や顔を逸らす仕草が恐怖である事を熊は知っています。それは獲物が見せる仕草であるので、避けて下さい。
熊が仁王立ちに立ち上がるのは、熊が恐怖し、自身を大きく見せようとしている事を表しています。
熊が仁王立ちしたり襲って来そうな素振りを見せたら:
熊の鳴き声を真似て吠えるような事は良くありません。吠えている事が何を意味しているのか解っていないのであれば、運悪く熊語で、"戦おう"とか、"お前を殺すぞ"、などと叫んでしまっているかもしれないからです。
また、熊と似た吠声がすると、熊は、はてこれはどんな熊だろう、と思い、同類に対する興味を持ってしまいます。
《ポイント3 人の言葉で伝える》
そうではなく、人間の言葉で、熊に去るように高圧的に命令して下さい。
背丈が足りないと思ったら、リュックサックなどを頭の上に持ち、背丈を大きく見せかけて、去れと叫びましょう。
熊は背丈が高いものを恐れます。
人間が恐怖していない事が肝心です。
熊が人間を食べると思っている人もいますが、
基本的には人間は熊の食べ物ではありません。また、熊は雑食ではありますが、余程腹が空き、他に食べ物がない時を除いて鹿などを襲って食べたりしないと知っておくべきです。
《ポイント4 小熊を避ける》
季節としては冬を越した春先、小熊を連れた母熊が危険です。また秋にも小熊はいる事があります。
小熊を触られる事を母熊は好みません。
母熊が見ている場では小熊を触らない事に越した事がありません。
しかし突如小熊に遭遇し、近くに母親がいないと解った場合どうすれば良いか。
母熊は次の瞬間に現れるかもしれず、
小熊への距離が自分より人の方が近い事を見出すでしょう。
この様な場合には、小熊を抱き、人間である自分に小熊の匂いを付けてしまうという手段もあります。小熊の匂いがするものを母熊は襲いません。これは臨機応変の状況での判断です。
勿論一般説としては、小熊の存在に早目に気が付いたのであれば、なるべく離れてしまうのが正解です。
これはおそらく誰でも知っていますが、
熊が襲ってくる素振りをした場合、人は絶対に背を向けて逃げようとしてはいけません。
動物は逃げるものを獲物だと思う習性があります。
《ポイント5 持参した食べ物を与えてしまう》
熊が人間にノソノソ寄って来る事の十中八九の理由は、弁当やその他の食べ物を嗅ぎつけた事です。
熊は食べ物を分けてくれる人を仲間と見なし、
逆に食べ物で意地悪をすると根に持って恨む傾向があります。
よく野生獣を餌付けに慣らすのは良くないと言われますが、護身の観点からは、食べ物を分けてあげた方がいいです。
ウクライナやロシアでは文化が、熊を友達として認識しており、人々熊が好きです。
熊に餌付けをする人が多いのですが、
それは熊を見かけただけで理由もなく発砲するよりずっと安全で、良い関係の構築に良いです。
少なくとも結果から見て、これらの国々で熊によって命を落とす人がまったくと言うほどいません。
人間の残酷さにトラウマになってしまった熊に、身を守らばければ殺される、と思わせてしまう事が問題です。
熊は人によくして貰うと、その事も良く覚えていて忘れません。冒頭で言いましたが、友達になると、飼い犬のように忠義心が強いのです。
熊は養蜂場の泥棒でもあります。
無数の蜂に刺されて顔が腫れ上がっても、蜂蜜は熊の究極の幸福です。
ウクライナで私は、よく近所の養蜂場に訪れた熊を追い払うように、養蜂家から連絡を受けました。
行ってみると、蜂蜜をたらふくに食べた熊が仰向けに横になり、いびきをかいて寝ていたりしました。
熊を説得して養蜂家の自動車に乗せ、森に戻したのも一度や二度ではありません。
熊に蜂蜜を食べられてしまうのは、養蜂家にとってダメージですが、このようにウクライナの人々は熊を殺してしまおうという発想は無いのです。
【日本の害鳥獣駆除において感じる課題】
熊の問題に限らず、日本の害獣駆除全般における問題は何か?
そこには持続的な安定バランスの観点や、マイクロ・エコロジー(地域で完結する循環)の観点が欠如しているように思います。
歴史を調べますと、日本の鳥獣管理は捕り過ぎや増やし過ぎを交互に繰り返して来ていて、
その都度対策が「一斉捕獲」とか「狩猟完全禁止」という風に極端なのです。
均衡と調和の為には、動物が里に降りて来るという結果のみでなく、降りて来る原因について調べ、原因において対処する必要があります。
熊が頻繁に人里に出て来るのは必ずしも、熊が増え過ぎている事を意味しません。
大体その熊は地元の熊であるかどうかすら解りません。遠い地を住居を追われて来た熊かもしれません。
そして人里に出て来ている時、山中に熊はいないかもしれないのです。
私は日本の地域の山を歩き、熊が人里に出て来てしまう原因であるものを沢山見つけました。
原因は過剰開発のダムや護岸工事だったり、
種の絶滅を含む生態系の異常であったりしますが、具体的な対処を提案できる事も沢山ある事が解りました。
ここでは具体面には入りませんが、
方向性としたら、何を変えて行くべきか。
日本の森は何を必要としているのか?
まず、地域の農薬の使用を減らす必要があると思います。ウクライナの農家は農薬を使わないで農業をしていますから、日本の無作為の農薬の大量使用にはショックを受けます。
農薬の結果は生態系に強く現れています。
農薬に汚染された昆虫などを食べ、鳥類やリスやウサギが死滅して行きます。
これらが本来、木々の種を食べる事で、木々の密集を防ぎ、松を枯らすマツクイムシなどから木を守ります。
また食物循環の観点からも、肉食動物はとても大切です。
例えば、オオカミは森の衛生管理者でもあり、
獲物の頭数が減ると、例え自分が餓死しようとも最後の獲物を捕らえる事はせず、繁殖によって頭数が回復するまで待ちます。
また年老いた動物や病気の動物から捕らえるので、獲物の種が若く健康に保たれるのです。
(私のウクライナの駆け込み寺にはオオカミも来ていましたが、とても完璧な森の衛生管理者でした。)
野生の動物が頻繁に人里に降りてくる背景には、山奥の食料事情を改善しなくてはならないと思います。
過剰な農薬使用が生態系を壊し、様々な寄生虫や菌類を発生させていますが、
私は菌根を使った免疫強化が、樹木と菌の共存関係を調整し、樹木を腐らせる菌類や寄生虫の予防にも、動物の餌になる茸の栽培の観点からも有効であると考えています。
こちらで募金を集めています。
根菌による樹木の寄生虫予防 & 野生獣の餌確保の一石二鳥プロジェクト
https://gogetfunding.com/eco-project-mycorrhizal-trees/
また罠の放置による動物虐待を防ぐ為にも、
自然界に対して感謝を生む上でも、
「駆除」や「破棄」ではなくジビエの「有効活用」をする必要があり、安全な精肉処理を啓蒙したいと考えています。
毛皮が捨てられてしまっている事も、残念に思います。ウクライナは冬がマイナス30度にもなりますが、どんな人工繊維にも増して、毛皮は
長持ちし、保温効果が絶大です。
また冒頭で紹介しました通り、
日本でチーズ工房を開店しようとしています。
日本の方々に、化学保存料が入っていないナチュラルのバターやチーズを食べて頂きたいです。
新しい故郷の那須塩原市でいずれは雇用を生み出し、地方創生に貢献したいです。
チーズ工房開業に向けて支援を募っています。
フェイスブック・グループ
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https://gogetfunding.com/%e3%82%a6%e3%82%af%e3%83%a9%e3.../
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