生徒様と親御様から、進路相談を受けました。
日本で声楽科で音楽大学受験を予定しているとのご相談だったのですが、「もし私の自分の子供だったら、イタリアの音楽院に直接、高校卒業と同時に留学させます。」というお話をしたら、とてもびっくりされていました。
是非、今子育て中の皆さんには、日本の音大で学べること、海外の音楽院で得られるもの、きちんと比較検討して、考えていただきたいなと思います。
人生で唯一取り戻せないものは時間です。
歌手としてのピーク(特にソプラノ歌手としてのピーク)を考えたら、悠長に日本の音楽大学に入って、ヨーロッパ文化とかけ離れた日本人から歌を習っている暇はありません。
(もちろん素晴らしい先生も中にはいらっしゃると思いますが、出会える確率の問題、またそれを見極める目も必要になってきます。地位の高い教授だから、素晴らしい歌を歌うのか?また、歌を【歌う方】ではなく、【教える事の方】の才能があるかどうか?はまた別問題なのです。)
直接本場のものが勉強できれば、やはりそれが一番いいのです。
(それに、まっさらな状態の若いうちの方が、スポンジのように何事も吸収、適応出来る能力が高いです。)
それを求めて、みんな日本で大学院を卒業してから、わざわざこちらの音楽院に入り直したりしているのです。
歌は身体が楽器です。最初の楽器づくりの時期がとても大切なんです。
ストラディバリウスを作り上げているんだ!と信じて頑張ってきたのに、イタリアに来て、日本で自分が必死で作り上げていたものは、おもちゃのヴァイオリンだったのだ、と気づいた時の衝撃は、なんとも言えない物だと思います。
こちらに来て、日本で習い、これが真実だと思っていたものが全て崩れ落ち、ゼロからではなく、むしろマイナスからのスタートになることは目に見えています。
まるで、楽器を解体して、組み上げる作業のようです。
(発声の良くない癖を取り除くのは、本当に苦労しますから…)
しかも、学費に関しても、こちらの音楽院の方がお安いです。留学費用、滞在費諸々をトータルして考えても、最終的にこちらの方がお得になると思います。(それほど日本の音大が高いとも言えますが…)
ただ、そういう選択肢があるということが、頭の中にないご本人や、ご両親の方ばかりなのです。
それは、周りにそういうことを知っている人、教えてくれる人が居ないからだと思います。
日本の音大に通って唯一良かったことというのは、一生ものの友人ができたことと、日本での教員免許が取れたことぐらいでしょうか。
(ただ、こちらの音楽院でも、友人を作る事は可能ですし、日本の教員免許が【どうしても必要な状況になってから】日本の音大に入りなおしても良いのでは?とも思います。
ここは、歌手になるのが夢なのか、国家公務員として、学校教員になるのが夢なのか、で選択肢が大きく変わってくる部分ではないでしょうか?
個人のお教室の先生募集の場合、音楽を勉強してきたキャリアは必要ですが、教員免許が【必須】と明記してある事はあまりありません。)
こちらでは、歌手は職業です。
学生の歌ですら、学外ではそれなりの対価が支払われます。
チケットノルマで、集客が出来ない場合には赤字をしいられる、なんて事はありえません。
チケットは歌手が売る物ではなく、劇場が売る物なのです。
日本と制度が全く違いますから、むしろ、こちらで歌手として生きていく事が出来るならば、日本に帰るという選択肢すら、必要なくなる場合だってあります。
最終的に自分が歌っていきたい場所はどこなのか?という事も考えるべきかもしれません。イタリアにしろ、日本にしろ、通った場所の近くには音楽家の繋がりが出来ますから、その近くにオーディションや仕事のチャンスが転がっている事もあります。
親元から遠く離れ、知らない異国の地で音楽に向き合うということは、勇気が必要な決断ですが、私が若い頃も、そういう選択肢を教えてくれる人は周りになかったので、私は、今の若い人たちに、それを伝えたいし、真実を発信していきたいな、と思っています。
もちろん、そういう選択肢があると知った上で日本の音大を受験するのは、その人の人生ですし、自由です。
ただ、そういう選択肢がある!ということを、親御さんも含めて、真剣に考えていただきたいな、というのが私の想いです。
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P.S.
来年2022年11月にヴィッラバルトロメア劇場にて、オペラ「外套」の公演が行われる予定です!
参加ご希望の方!
詳しい内容はこちらをご覧下さい。↓
前回の『修道女アンジェリカ』の公演の実際の様子です✨(※2021年6月26日に、無観客、オンライン配信させていただいた公演です)
ご応募お考えの方は、是非参考にご覧下さいませ♡