英語講師インターンでイギリスからやって来ているオックスフォード大学のT君が、尋ねてきました。
Hey, Naomi, What's skit? ナオミ、スキットって何?
キッズコースでスキット(面白い寸劇)をするのですが、レッスンプラン内のskitと言う単語は、彼が分からなかったのです。
It's a humorous short performance. 面白い短い劇の事よ。
と、私は説明しました。
すると、彼はこう言いました。
Oh, It's a sketch. ああ、それは、スケッチの事だね。
アメリカとイギリスの英語が違うことは、有名ですが、ハリウッド映画などの影響で、アメリカの英語がuniverssal language(ユニバーサル言語)になっています。
スキットも、どうやら、アメリカの英語だったようです。
私は、彼に、
Then you will tell me a Japanese word! じゃあ、私に新しい日本語を教えてね!
と頼むと、分かった、調べてくるよと言って、その日は帰りました。
そして、翌日、彼が私に、これは知ってる?と言った日本語。
『ふくくうき ようし ゆじゆつ』
What's that? Can you say it one more time, please? 何それ?もう1回言ってくれない?
彼は、何度か同じたどたどしい日本語を繰り返してくれました。
Oh, no, I don't know the word... うーん、その言葉を知らないわ。
と言うと、彼は、ドヤ顔。
そこで、彼の調べてきた単語をひらがなで頑張って書いたノートを見せてもらったら、
『ふくくうきようしゆじゆつ』
ふくくうきょうしゅじゅつ
でした。
腹腔はlaparoと言うそうです。
laparo自体も、複合語かもしれませんが、
漢字の複合語は、パッと見て意味がすぐに分かるという特徴があります。
どうして、彼が病名を私が知らない日本語として、選んだかと言うと、
英語では、病名は、固有名詞があります。ですから、病院で、初めて自分の病名を医師から告げられると、何の病気か分からず、不安に思い、そして、医師からの説明を聞いて、安心するのだそうです。
事実、Oxford大学の彼が、難しい語として選んだlaparoは、日本語の腹腔にすると、大体の日本人は、お腹の中だと想像が付きます。
そして、私が、日本人にとって病名はその漢字を見る事によって、大体想像が付くので、あまり難解な単語とは言えないだろうと、説明しました。
さて、ここから、やっと私が言いたい事なのですが、
外国語を話す時、母国語を基準に考えると、失敗する事が沢山あります。できるだけ、その外国語に多く触れ、見たことのある、または、聞いたことのある表現や語をどんどん使う事が、外国語学習には、重要です。
すると、彼のすごいところは、こう質問してきたところです。
「では、日本語で難しいものは何ですか?」
私は、う~んと少し考えて、
「花の名前は知らないものが多いかな。。。」
すると、
すべての花の名前に日本語名があるのかと、尋ねてきたので、たぶん、あると思うと答えました。
ハナミズキは、Dogwoodが英語名と言うように、おそらく、日本語名と英語名と両方あると思いました。
そして、「質問する」という所が、これまた、英語の文化です。
質問する方法というのは、誰がそもそも考え出したかというと、
2500年前、ソクラテスが考え出した『ソクラテス式発問』が、議論の場での質問の基礎になっています。
欧米人は、小さい時から、ソクラテス方式で、教育されていますので、
普段の会話から、自然に、質問が出てきます。
この会話は、『skitとは何だ?』という質問から始まり、
『日本人にとって難しい言葉はなんだ?』という質問にまで来ました。
外国語を学習する上で、このように、母国語の思考から離れて、その国の文化や背景に沿って学習しようという姿勢がとても大切だと思います。