以前書いたようにこれまであんまりモンブラン登山には興味なかった。
でも3月に当地滞在の延長が判明した時、せっかく後1年こちらにいるなら今年の夏登ってみようかな、とふと思った。
これはコスミックリッジから見たモンブランドゥタキュール。
モンブランに登るルートは幾つかあるけど、メジャーなのは、①通常ルート/グーテルート、②三山縦走ルート/コスミックルート、の2つ。
もしモンブランに登るなら②の三山縦走ルート/コスミックルートの方が興味ある。
ただ、コスミック小屋から三山縦走ルートで頂上までは8時間くらいがデフォルトらしいし、そうすると自分の場合は12時間、いやもっとかかる。。。というかそもそもたどり着けるのか?途中で力尽きてブレンバのコルでビバークとかになりそう。。。
と悩みながら色々youtubeの動画を見ていたら、ちょっと興味深いタイトルの動画を見つけた。
「モンブランでのビバーク:頂上での論争」というタイトル
mont blanc camp sommet - YouTube
動画は23年1月にフランスのTF1 Infoが公開したもの(TF1はフランスの民放)。
概要としては、
二人の登山者がモンブラン登山し山頂でのビバーク(bivouac)の様子を撮影しSNSに投稿した。
但しそこでのキャンプ(camper y)は禁止されており、違反者には15万ユーロ(4月中旬のレート<186.8円/ユーロ>で日本円約2,800万円)の罰金が課せられる。
サンジェルヴェレバン市のペイエ市長は「ビバークは往々にして迷惑行為と同義」と主張している。シャモニーでの意見は分かれている。
この動画を投稿した登山者は「規制の存在は知っていたが全面禁止とは知らなかった」とSNSで反応した。
というもの。
サンジェルヴェレバン市というのはグーテルートの起点となる麓の市。
ちなみにこのペイエ市長という人は調べたら22年にモンブラン登山者に救助や葬儀の費用として1.5万ユーロの保証金納付を求めようとしていた人なので、モンブランにお気軽に登り遭難したりする人に対して思う所がきっとあるんだろう。
ペイエ市長の主張として「なんで無謀登山者の救助をフランス人の税金で行わなきゃあかんねん」というものがあるらしいので、きちんと調べてないけどモンブラン山域での救助は無料なのかもしれない。
なんか最近、富士山の閉山期の登山を巡って麓の市長がぷんすこしている、という報道を見たのでもしかしたら両市長は気が合うかもしれない。知らんけど。
話を動画に戻すと、見ていて気になった疑問としては、
「モンブラン登山で禁止されているのはキャンプ(camp)なのかビバーク(bivouac)なのか」
というもの。
動画では「ビバーク(bivouac)」と「キャンプ(camp)」が混ざっていてよくわからない。
動画のタイトルにもあるように投稿されたのは「モンブランでのビバーク」なんだけど、それに対してTF1の説明では「キャンプは禁止」と言っているんだけど、ビバーク=キャンプなのか?
フランス語力ゴミカス+山初心者の私の理解では、camperと言った場合はテント泊、bivouacerと言った場合はビバーク(緊急時の野営)というイメージなんだけど、どっちなんだ?
この投稿されたという元動画は削除されてしまっているのでどういう経緯で「頂上でビバーク」することになったのかわからないけど、動画冒頭では「頂上でのビバークに挑戦(relever un defi)してみたいと思います」と言っているような気がするので(私のフランス語レベルはゴミカスなので間違ってたらすみません)、緊急避難的なものではなく意図的にテントを張ったようには思える。
キャンプ=意図的にテント張ることが駄目なのか?それとも力尽きたときのビバークすら禁止なんだろうか?三山縦走ルートで途中で力尽きたら救助呼ぶかその場で野垂れ死ねってことなのか?
テント泊禁止はまだわかるんだけど、緊急時のビバークは許してほしいかも、と思いながら色々調べてみた。
結果、わかったことやわからなかったことを自分の覚書として置いておく。
①「キャンプ(camper)」はモンブラン全域で禁止、唯一テートルースのテント場はOK(コズミック小屋下部でテント常設するのもだめ)
まずは「キャンプは禁止」について調べるためオーサヴォワ県のウェブサイトを見てみた。
このページ中段にある"Access to Mont Blanc-An exceptional Site:The Realm of Alpniste"をクリックして英語の注意書をダウンロードする。
1頁目を見ると、
「モンブランの指定区域(classified site)ではテートルースのベースキャンプを除きキャンプは禁止」
「APHN対象区域でのキャンプはテートルース小屋を除いて禁止」
の記載がある。
この「指定区域」と「APHN」がそれぞれ何を指すかというと、左下で記載されているように
①指定区域:1952年1月5日成立(1972年6月16日改正)の大臣令で指定された保護区域
②APHN:2020年10月1日成立の条例(nDDT-2020-1132)で指定された保護区域
らしい。
左下の地図に表示されている赤い部分が②のAPHNの保護対象区域で、茶色の水玉部分(②のAPHNも含めて)が①の保護対象区域。
通常ルートもコスミックルートも②のAPHN対象区域に入っている。
コスミック小屋下部は一部APHNに入っていないところがあるけど、①の「指定区域」には入っている。
youtubeでコスミックルートの動画見てると、結構コスミック小屋の下部にテント張ったまま出かけている人も多いんだけど、あれは本来は禁止っぽい。
フランス山岳クラブのウェブサイトから飛べるサイトには、「コスミック小屋下部でのテントは禁止」と明記してある。
consult the site Climbing Mont Blancをクリック⇒出てきたウェブサイトのページ下部にあるMont Blanc: mountainner's concernをクリック
この案内書によると、「キャンプは禁止されているにも関わらずCol du midi(当方注:たぶんコスミック小屋の下)で毎年70近くのテントが張られている」とある。
なので、わかったこととしては堂々とテント張ってよいのはテートルース小屋の指定された場所だけ、ということ。
ちなみにテートルース小屋のテント場は自分でテント張れるのかどうかちょっと謎(人の記録とかみると既に貼ってあるテントを予約するような形にも見える)」なのでこれは管理者に確認したほうが良いかもしれない。
②「通常ルート及びその付近での」ビバークは「不可抗力を除いて禁止」、コスミックルート上でのビバーク可否は不明
「キャンプ」が禁止されているのは理解した。
では「ビバーク」はどうなんだろう。
先ほど上で挙げた地図の上部には「通常ルート上のビバーク(bivouacking)はextreme emergencyを除いて禁止」とあるけど、これをみると、
「禁止されているのは通常ルート上だけなの?(三山縦走ルートは?)」
「自分の理解ではビバーク=緊急時の野営だと思ってたんだけど、extreme emergencyのビバークと普通のビバークってどう違うの?」
という疑問が湧いてくる。
とりあえず通常ルートも三山縦走ルートも入っている②のAPHN区域でのビバークについて知りたいな、となったのでオーサヴォワ県のウェブサイトからダウンロードできる②の条例を見てみた(google翻訳先生に聞きつつ)。
これを見ると、第2条1項4がキャンプ(de camper)についての条項、第2条1項5がビバーク(de bivouaquer)についての条項となっている。
第2条1項5
「サン・ジェルヴェ・レ・バン経由のモンブランへの通常ルート上およびその付近では、不可抗力の場合を除き、ビバークは禁止されています。これは、このルート上に複数の避難小屋が存在するためです」
とある。
ここから理解したのは以下の2つ。
(a)私は「ビバーク」というのは緊急時の野営のことだと思っていたんだけど、恐らくそれは「不可抗力の場合のビバーク」に当たり、不可抗力の場合のビバークは許されている
通常ルートにおいて小屋にたどり着けない場合は救助を呼ぶか野垂れ死ぬか、とかいう究極の選択を迫る条例ではなさそう。
じゃあ「普通のビバーク」の定義って何だよ、と思ったけどそれは後述。
(b)普通のビバークは「通常ルート及びその付近」では禁止
気になるのは2-1-5の記載が「通常ルート上及びその付近で」とあることだ。
コスミックルート上については書いていないように見える。
「その付近で」がコスミックルートのことを含むのかとも思ったけど、「サンジェルヴェレバン経由の」と「ルート上に複数の山小屋が存在するので」という記述を考えると2-1-5はあくまでニーデーグル駅発の通常ルートの事を指している気がする。
ただ以下のウェブサイトでは、「コルデュモンラッシェからモンブランタキュールに渡るAPHN内でのビバークは禁止」と記載されているので、もしかしたらコスミックルートでも禁止なのかもしれない。
Vallorcine Areaでのビバークについて
ちなみにyoutubeでコスミックルートの動画をいくつも見た中で、一部にはコスミック小屋下部の雪原でテントを張らずに雪の上にシート敷いて寝袋だけ敷いて寝てる猛者たちが何組かいた。もしかしたらコスミック小屋下部のAPHNではないけど指定区域にあたる場所では「キャンプは禁止だけどビバークはOK」だったりするのかもしれない(未確認)。
③罰金は2800万円どころじゃなく5600万円の可能性がある。
色々面倒くさいけど、じゃあ違反した際にどれくらいの罰金取られるんだろう?ということでAPHNに関する条例を見ると、
第8条
「本条例の規定に違反する行為は、環境法第L415-3条及び第R415-1条に規定する罰則によって処罰される」
とあって、この環境法L415-3条をみると「3年の拘禁刑及び15万ユーロの罰金」とある。
(R415-1の方には「第4級軽犯罪に適用される罰金」とあるけどそれが幾らかは力尽きて調べられていない)
なので、APHN対象区域でキャンプしたり、通常ルート上で不可抗力ではない場合にビバークしたりしたら、15万ユーロの罰金を受ける、というのは本当のようだ。
ただ、キャンプに関しては先ほど上でリンクを貼った案内書の地図の右側をみると、
「キャンプに関する禁止条項を遵守しない場合は2年の禁固刑と30万ユーロの罰金」
の記載があるので、
変な所でテント張ったら15万ユーロどころじゃなく30万ユーロ(5,600万円)の罰金を取られる可能性があるのかもしれない。
この根拠法として「環境法第341条19項」が挙げられていて、該当条項を見ると確かに「2年の拘禁刑及び37.5万ユーロの罰金」の記載がある(30万ユーロより更に高い。。。)。
対象行為は「定められた許可を得ずに自然記念物/遺跡の外観を変更・破壊すること」なので、テントを張ることがこれに該当する、ということなのかもしれない。
④「キャンプ」と「ビバーク」の違いは「1泊、夜間のみ」かどうか
最後に個人的に一番気になっていること、「キャンプ(camper)」と「ビバーク(bivouacer)の違いは何?というのを調べてみた。
色々見てみた中で、「ビバーク」に該当するものとそうじゃないものの違いを例示している以下のサイトが一番わかりやすかったかもしれない。
Le bivouac | Portail des parcs nationaux de France
これによるとまず、ビバークがキャンプと違うのは、「一泊のみ、簡素な宿泊設備を利用するかどうか」という点。
上のサイトが例示している「ビバーク」は
・星空の下で寝る、または立ち上がれないほど小さなテントで寝る
・一泊のみ
・許可された場所で行う
・夜から朝まで
・出発後は出来る限り痕跡(ゴミや食べ残し)を残さない
というもの。
*なお、上のサイトによるとビバークについては各国立公園でそれぞれ規制が異なる(道路から1時間以上離れた場所である必要とか、日没1時間前から日出1時間後までならOKとか)ので目的地の規制をよく調べたほうが良さそう。
私は「ビバーク」=「緊急時にするもの」だと思っていたけどそれは間違いで、法律上の「ビバーク」はそれよりは定義は緩やかなようだ。
私が今まで思っていたビバークは、条例にある「不可抗力の場合のビバーク」に相当するっぽい。
そうなるとますますコスミックルート上での「普通のビバーク」の可否が気になる所ではあるんだけど、個人的にはコスミックルートは色んな理由から諦めたので、力尽きてこれ以上調べるのはやめた。
<おまけ>通常ルート上にあるヴァロ避難小屋の「滞在」も緊急時除いて禁止っぽい
通常ルートの動画を見てると、よくヴァロ避難小屋で休憩している動画が出てくるんだけど、さっき上で挙げたAPHN条例の第2条1項7をみると「不可抗力の場合を除き、ヴァロ避難小屋で寝る(de dormir)のも滞在する(sejourner)も禁止」とある。
もし通常ルート使うなら私のようなヘタレがグーテ小屋から一気に頂上に行くのは無理だろうからヴァロ小屋で休憩しようかなと思ってたんだけど。。。
フランス語の「sejourner」は短期間の休憩も含まれたりするのかな?
どちらかというと長期間の滞在を意味する言葉のようにも思うんだけど如何せんフランス語レベルがミジンコなのでよくわからない。
以上色々調べてみた個人的な感想として、
モンブラン登山、思ってた100倍面倒くさい。
途中で心折れかけたけど、もう小屋の予約とっちゃったし、罰金5000万円とか払いたくないので、頑張って色々調べて準備して行こう。
2年前にイタリア側から見たモンブラン。

