登頂できて胸がいっぱいだったけど、一方で頭の片隅では「予定より遅れている」ということが気になっていた。
5分もしないうちにすぐに下山開始。
私のすぐ後に登頂してきた女性(お連れさんは途中で引き返したらしい。)と少し話をしてたら「小屋まで一緒に下りましょう」と声をかけられて一緒に下る。
さんざんA氏のことを言っておきながら何だけど、これは別に嫌じゃなかった。
なんでかな。。。小屋まで、ってわかってるから気楽なのか、感じの良い女性だったからか、「女性」だからなのか、私も1人で降りたくなかったのか。。。よくわからない。
行きはへろへろだったけど、上部のよく締まった雪面は歩きやすくて下りはさっさか下れる。
核心部で下降待ちをする前の人々に追いついた。ツアーはロープを出してるのが見える。
ステップは切ってあったから前向きで降りていく人もいたんだろうけど、私は既にここはバックステップで降りると決めている。
だって私みたいな高所恐怖症気味のヘタレチキン野郎がここを格好つけて前向きなんかで降りた日には、足が震えてもつれて絶対、事故る。
山頂で笑顔で言葉を交わしてここまでぽつぽつ話したりしつつ降りてきた後ろの感じ良いお二人(先ほどの女性+ソロの男性)にゴリラの滑落場面とか見せたくない。
みんな素敵な思い出だけ持って帰りたいだろうし。
私も友達に甲斐駒の素晴らしさと冬毛のライチョウを見たことを自慢しなければ。
慎重にバックステップで降りる。
阿弥陀岳北稜の時に講習で習ったことを頭の中でなぞる。
ピッケルを刺し、足を蹴り込んで体重をかけたらもう片足を大きく下ろして蹴り込む。下から上に蹴り上げるようにきちんとステップを作って重心をかけたら、ピッケル刺し直して、足を蹴り込んで。。。
雪はめちゃくちゃよく締まっていたのでそこまでする必要はなかったかもしれない。
阿弥陀岳の一般道を下る時は雪がふわふわでピッケル刺しても崩れる所もあって怖かったけど、それに比べたら今日のこの甲斐駒の核心部は大黒柱のような安心感がある。
しかしこちとら年季の入ったチキンハートである。
チキン力を遺憾なく発揮してあほみたいに全力で蹴り込んでピッケル刺してバックステップで一歩ずつ降りた。
そのせいか、息が切れる。
そんなに長いルンゼでもないのに、途中で疲れて3回くらいセミみたいに雪面にひっついて休憩した。
登れない豚は(以下略)。
帰ったら筋トレに励もう。。。
心に誓いながら核心部下降終了。
最初は歩きやすいと思ったけど、8合目過ぎる辺りから深めの雪になり、疲れたのか足がもつれて何度もこけた。
ややへろっとなりながらも1時間ちょいで小屋帰着。
時刻は9時20分。
うーん・・・予定より遅いけどまぁ最悪10時に出れば16時にはつくかな。。。もしもっと時間かかっても刃渡りさえ超えてしまえばあとはヘッデン下山になっても…いや暗闇であの樹林帯下るのはやっぱ嫌だな。
それにとりあえず早めに東京に帰ってお風呂入って爆睡したい。明日朝9時半から会議あるし。
思い直して超光速でパッキングして、小屋を出発。
出発時にポカリを購入しようと小屋のインターフォンを押したら、すんごい素敵な女性の小屋番さんが「あ、無事に戻られたんですね。おかえりなさい」と言ってくれて、じんとした。
小屋番さん達はきっといろんな事故を見ているだろう。
無事に帰ってこられて良かった。
七丈小屋、大変お世話になりました。
下りの五合目小屋跡から振り返る。行きの晴天も良かったけど、曇りは曇りで素敵だ。
下りは小屋から五合目小屋跡まではアイゼン。
しかしここから黒戸山への登り返しにそんなものつけてたら私はばてて途中で行倒れると思うのでここで休憩がてらチェンスパに換装。
そのチェンスパですら、5歩(休憩)5歩(休憩)みたいになりながら黒戸山を登り返し、よろよろしながら刀利天狗へ。
ここで面倒くさいけど再びアイゼンに換装。
ずっとチェンスパで下っている人もいたようだけど、人は人、私は私。私はこの下りは怖いので無理しない。
早く降りたい、と思うものの足がもつれて手元もおぼつかなくなっているのか、何度か梯子の下りでストックやペットボトルを落としてしまった(幸い回収できた)。
やばい。だいぶ足に来ている。。。とりあえず刃渡り渡ったら休憩しよう、と心に誓う。
帰りの刃渡り。
曇りだけど、これはこれで水墨画のようにきれい。

昨日から元々乏しい語彙力が∞ゼロまで落ちてて「きれい」と「最高」しか言っていない気がする。
刃渡り過ぎたところで休憩がてら再度チェンスパに換装。
ここからはもう怖い所はないのでほっとする。
鹿の親子を見たり、山頂でも一緒になったソロの男性を追い抜いたり追い抜かれたりしながら下山。

やっとここまでかえってきた。。。

最後油断して早めにチェーンスパイク外したら凍結箇所で豪快に尻餅ついたりしながら、14時半過ぎ、登山口到着。
最後の気力を振り絞って川まで降りて靴とゲーターを洗い、橋を渡ってから神社でお礼をして、タクシーを呼んで小淵沢からあずさで帰京した。
へろへろのはずなんだけど、黒戸尾根をリベンジできたことが嬉しかったのか、リベンジ山行があんまりにも素晴らしかったからか、いつもは乗車5分で爆睡する電車の中で全然寝られなかった。
最高の天気の下で黒戸尾根を楽しめて嬉しい。
山行の前に花谷さんのtwitterで紹介されていた12月に登った人の動画を見たけど、あんなコンディションだったら私はたぶん登れていなかった。
第二テント場にすらたどり着けず埋もれていたと思う。
黒戸尾根の神様、最高の天気と雪をくれて有難うございます。
私の中の甲斐駒黒戸尾根、最高の山として記憶の書き換え完了。



