浜丘麻矢の魅力をなんと表現すればいいのだろう。
今でも現役で、最近では「みこん六姉妹」や「中学生日記」などでその姿を見ることができたが、中学生当時の彼女にはえもいわれぬ魅力があった。

当時発売された写真集などを見ればわかるが、それはまるで「魔力」とも言えるような鋭利な愛らしさだ。
野村佑香や栗山千明など、当時「チャイドル」と呼ばれた8人が、それぞれ天使の衣装をまとった写真集「天使」。
浜丘麻矢はその表紙を飾った。

感じ方はそれぞれかもしれないが、僕には彼女が一番天使に近く見えた。
例えば野村佑香は天使にあこがれている少女に見えたし、栗山千明は近未来、科学の力によって作られた天使という名の生命体のように思えた。
だから、彼女が表紙に使われたのも納得がいった。
ただし、そこに写っているのは笑顔ではない。
怒ったような、拗ねたようなそんな表情でこちらを見つめている。

ソロの写真集「うそつき」でもそう。
「天使」で見せた怒ったり拗ねたりする表情に加え、驚いたような、戸惑ったような表情の写真が多い。
そして、それらの写真こそが、あの当時の彼女の魅力を最大限に引き出している。
天使は必ずしも優しく微笑んでいるわけではないのだ。

その頃の彼女が主演したドラマ「ふたりのアリス」。
製作されたのは1997年、放送されたのはその7年後の2004年。

なぜそれだけの年月を要したのか。
それは、このドラマのストーリーに要因がある。
同じ日に生まれた二人の少女(もう一人は酒井彩名)のをめぐる、呪われた運命についての物語。
ドラマ中、浜丘麻矢演じる明子は酒井彩名演じる由梨香を殺害する。
そのシーンが1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件を受けて問題視されたのだ。

2004年にBSフジで放送されたものの、その4ヶ月後には佐世保で小6の少女が同級生を殺害する事件が起きた。
少しタイミングがずれていれば、また放送は自粛されたろうし、そしてまた今後も放送されることはないであろう。
それを前提にネタばれすれば、ドラマの最後、彼女は自分の両親を殺害したことを告白する。
その瞬間の彼女の瞳、表情。
自分自身の所業に陶酔するような、正に魔力を感じさせる姿。
他の誰にも真似できないだろう。

天使と悪魔、ほぼ時を同じくしてその両方の顔を見せた彼女。
もともとその存在を突き詰めていくと、同じものになっていくのか、それとも彼女自身がその双方を内包していたのか、それは分らない。
しかし、あの当時の彼女が天使と悪魔、双方の顔を見せられる稀有な魅力を持った少女であったことは間違いない。


深夜徘徊 深夜徘徊