やっと迎えた高校二年の夏休み、顧問からの鶴の一声で強制的に一世代上のインターハイ前強化合宿(県選抜合宿)に連れて行かれることになった。不参加の口実として学校で禁止されているバイトのことは


口が裂けても言えない…。


せっかく面接をパスしたバイト先(ローソン)には理解してもらいシフトをずらして貰った。そして県南にある黒沢尻工業高校で合宿が始まった。県内中から集まった、


インターハイ出場選手+αの猛者ども


各階級一人しかインターハイに行けないのでモスキート級~ミドル級までの9階級9人(?)と


いわゆるスパーリングパートナー


である【+α】の俺たち(高校2年生)。合わせて20人ちょっといたかなぁ、そして鬼コーチの面々。


「オラァてっぺー!手ぇ出せぇ!!連打だ連打ぁぁ!!」


リングという監獄に閉じ込められ、リングサイドからは怒号が飛び交う。違う…違うぞ、俺の知ってる17歳の夏はもっとキラキラしてたはず。漫画やテレビの…そう!


内田有紀・武田真治主演ドラマ「17才」


はもっと…もっとキュンキュンしていたじゃないか!!



「タツヤ(インターハイ予選岩手県チャンプ)に勝ったんだろ?!なんのためにお前呼んだんだよ!!」


そうなんだよね、県民体育大会(国体予選)で1コ上のインターハイ出場選手に勝っちゃったんだよね俺。。だからこんな地獄の合宿に参加させられている訳だ。


朝から晩まで練習×練習


朝起きて、走らされる。距離は覚えていない…とにかく起こされて走った。まぁ走るだけならね、毎日やってるかし、今回は俺の大会前ではないから減量もしていない。でも知らない土地を走るのは異常に長く感じた。雰囲気のある


【急角度な長い石段がある神社】


が折り返し地点だったような?


「じゃあ同じ階級の奴とペア組め~!」


お、神社の境内でストレッチでもするのかな?


「背負ってこの階段を上がれ」


は?


「降りは危険だから登りだけでいい」


嘘だろ?!俺の階級は57-60kg未満のフェザー級。この頃は減量していないので62~3kgはあったと思う。そんな奴を背負ってこの石段を駆け上がれだと?!


毎朝同級の奴を背負って石段を駆け上がったさ!


宿舎(←確か工業高校の柔道場?)に戻り朝飯を食べたら午前中の練習が始まる。主に肉練(筋肉トレーニング)だったような。ボクシングは階級(体重制限)があるスポーツだからして、余計な筋トレはほとんどしない(余計な筋肉はつけない)。


必要な部位だけに筋肉という鎧を纏う


とゆーわけで、【メディシンボール】の登場です。あまり聞きなれないボールだと思うんだけどいろんな種類があるんだな…いわゆる重いボール(笑)俺たちが使っていたのはバスケットボールを一回り大きくしたサイズでさらにちょっとパンクさせたような…一見フニャフニャな…


でもクソ重いメディシンボール



鬼コーチ達が仰向けになった俺たちの腹筋に容赦なく叩きつける。力を抜いたら確実に内臓が破裂する威力。まぁボディブローを想定した鍛錬だよね。さらに二人一組になり、片方が足を支えて行う一見普通の腹筋運動がある。


これをリングの端でやる


支える方がリングの端、やる方の上半身はリングの外…つまり宙に浮いてる状態だ。



上半身を起こす

↓

バイーンと突き放される

↓

上半身が半円を描き頭が逆さになる

↓

腹筋を使い再び半円を描き上半身を起こす

↓

バイーンと突き放される



これの永遠ループ。。こんなロッキー4みたいなことしてたらそりゃ腹筋割れるわ!!他の筋トレは覚えていない…とにかく言われたトレーニングを黙々とこなしていたような気がする。昼を挟んで午後は


スパーリングに次ぐスパーリング


自分の前後一階級までを相手にしなければならなかった。絶対に戦いたくないと思っていたライト級の猛獣みたいなチャンピオンとか、パンチ浴びるたびに星が飛ぶクソ重いパンチを出すフェザー級のチャンピオンとか、連打が止まらないバンタム級のチャンピオンとか…


スラムダンクの魚住の気持ちがわかる



幾度となく嗚咽…。夜は夜で、集団で寝ているので、誰かのイビキがうるさい…疲れているのに眠れない。。そして朝を迎え…走らされ石段を駆け上がる。そんな日々が3~4日続いた。合宿最終日の朝、見晴らしのいいところで集団が止まった。


「各々一人ずつ思いの丈を叫べ!」


松岡修造か?!後々ブームを起こす【未成年の主張】的な無茶ぶりされた。いやいや、俺が求めてる17才の夏はこーゆうのじゃないから!士気が高まっているインターハイ組は、お約束…と言っては失礼だがの「ベスト8入りする」とか「全国制覇」とか…。山々にこだましてたねぇ。スパーリングパートナーである【+α】の俺たちは差し当たって目標がないものだから


「おかーさーん!」


とか叫んでるやつとかいたな。俺はというと…これしか選択肢がなかった。


「バァカヤロぉー!!!」



続く。