■2011年5月30日付け
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久々の援護は、ベンチに腰を下ろして見届けた。5回に今浪隆博内野手(26)が適時打を放つと、武田勝投手(32)はポンと両手をたたき、走者を迎えるハイタッチの輪に加わった。自身の登板試合では実に6戦ぶりの援護点。5試合連続完封負けという、2リーグ制で初となる珍事が終わった瞬間でもあった。だが、武田勝は「(野手には)気にしてやってほしくはなかった。これで全員が解放されたと思う」と、自分よりも周囲を気遣った。
7回5安打無失点の投球で、ようやく手にした今季3勝目だった。「自分の投球はできていたので、いつか勝てるという気持ちはあった。いつも先に点を取られているので、そこだけは意識しながら。1点の重みを感じながら投げました」。この日も生命線は低めに制球されるチェンジアップ。5回2死満塁のピンチに梵を捕ゴロに仕留めると、7回1死二塁の場面でも、石原、会沢を同じボールで2者連続三振に斬った。
防御率1・64ながら、リーグワーストタイの5敗。勝ち運に見放され続けたが、必死な打撃陣の心情を察し、努めて明るく振る舞った。常に笑顔を絶やさないように心掛けたため、芝草投手コーチが「あまりにも勝てなくて頭がおかしくなっちゃったのかと思った」ほど。苦悩の日々も、笑いに変えた。「(清めのため)自分の体に塩をまこうと思いました…。でも、洗うの面倒くさそうでやめました」。「夢も見てません。寝たらすぐ朝が来るんで」。「(流れを変えるため)道を変えたりするのも好きじゃないです。でも、勝手に変わってることはありますよ。タクシーの運転手さんが…」。負の連鎖を、笑いで吹き飛ばした。
梨田監督は「あんまりカッカすることなくね。立派だと思う。まだまだたくさん借りがある。援護していきたい」。笑う門には…交流戦初のカード勝ち越しと、最多貯金9が来た。
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思わず手をたたいて立ち上がっていた。サヨナラ勝ちしたかのように沸くベンチ。武田勝は、自身の投げている試合では6戦ぶり、実に41イニングぶりの得点に少しだけうれしそうな表情を浮かべた。
プロ野球史上例のない6戦連続完封負けの呪縛から解かれた。援護は5回のわずか1点だけだったが、「重みを感じながら一生懸命投げました。胃に悪いです(笑い)」と必死で守り、7回5安打無失点。自身の連敗を5でストップさせ、先月21日のオリックス戦(京セラD)以来の3勝目に、お立ち台では「とりあえず、お久しぶりです」とおどけてみせた。
どんなに援護がなくても、表面上は変わらない自分でいた。「自分の投球はできていたので、いつか勝てると思っていた。野手にあまり気にして、やってほしくなかった」と平然を装った。道具もそのまま、縁起を担ぐこともない。プライベートでも「ゴルフで90台のスコアが出たくらい」しか良いことがなく、清めの塩を自分にまこうかと考えたが、「洗うのがめんどくさいので…、その分、塩分の多い食事にしました」と報道陣を笑わせた。
7回を無失点に抑え、3勝目を挙げた武田勝 しかし、本音は違った。23日の横浜戦(横浜)の敗戦翌日。普段必ず行う30分のジョギングを早めに切り上げる“プチさぼり”。気持ちが切れかけていた。吉井投手コーチは「みんなの前では見せないけど、陰では悔しさを見せていた。球界のエースになっていくために乗り越えないといけない壁を越えた」と説明した。
それでも切り替えはできていた。横浜戦後には観戦に訪れた陽子夫人がお土産にシューマイ弁当を買ってくれるなど、周囲の気遣いもうれしかった。「食べたいものを食べ、ゲームをしたりして野球のことを考えないようにした」と好調をキープした。
得点圏に2度走者を背負ったが、「いつも先に点を取られていたので」とチェンジアップを軸に必死に腕を振った。チームの貯金は今季最多の9になった。「好きな野球だから、悩めたり次に進めたりする」。援護は少なくとも、点を与えなければいつか勝てる。防御率は1・64。トンネルを抜けた左腕が今度は白星を重ね続ける。



