試合開始直前という土壇場での、キャプテンを始めとする三年生部員の反乱によって
ジャイの指揮下から開放された状態で大会を戦う事になった我が野球部。
元々が弱小野球部でございますので、一回戦敗退でも何の不思議もなかったのですが、
若干ラッキーな組み合わせもあり、一回戦、二回戦と勝ち進んでいきました。
その間、部員とジャイの関係は今までにも増して冷え切った最悪の状況。
ジャイは、この年のチームを服従させる事は諦めた様子で
事務的な連絡事項以外は部員に話しかける事すらありません。
一方で部員同士は逆に今までにないくらいの気持ち的なつながりを見せ、
毎日異様な盛り上がりでございました。
そんな中迎えた三回戦。
決して最初から試合を諦めていたわけではございませんが。
対戦相手と実力を比較すると、
これが、このチームでの最後の試合になるであろう事は覚悟しての一戦でございました。
試合に出場しているメンバーは、もちろん必死で戦いました。
マネージャーもスタンドでの応援組も声を枯らして、必死で応援をいたしました。
そして・・・
・・・
・・・
・・・。
試合終了後、ジャイは部員たちに声をかけることはありませんでした。
この時の部員との冷え切った関係を考えれば当然の事かもしれませんが・・・。
そんな中、一年間チームをまとめ
後半はジャイとの攻防の中で常に矢面に立ったキャプテンの沼田さんが部員たちに挨拶。
ほとんどの部員が泣いておりました。
その後の事、球場から学校へ帰る準備を整え車に乗り込もうとしていた時
私に近づいてきたのは大田さんでございました。
そして涙で目を真っ赤にさせた大田さんは私にこう言いました。
「ごめんな畑中。俺じゃなくてお前が試合に出てれば、もしかしたら今日も勝ててたかもしれないのに・・・。」
大田さんはこの大会の3試合でノーヒット、守備では4つのエラーを記録という結果でございました。
もちろん、チーム内にはその成績に対して何か不満を漏らす者など誰もいませんでしたし、
私も大田さんに謝られることなど予想もしておりませんでした。
ただ私は、もしかしたら大田さんは私のことを気にして
余計なプレッシャーがかかっていたのかもしれないと思っておりました。
私のことなど気にすることないのに・・・。
私には大田さんにかける言葉が見つかりませんでした。
車が学校に到着すると、ジャイは早々と姿を消しておりました。
沼田さんをはじめとする三年生は、後片付けを済ませた全部員を集めてその前でひとりずつ最後の挨拶。
この年の我が野球部の夏が終わりました。
そして、それは新たな戦いの日々の始まりでもあったのでございます。
(つづく)
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