ジャイの手に渡ってしまったカセットテープ。
経緯を推測すると、
検討材料にするということでキャプテンからカセットテープを預かった校長は、
恐らくそれを他の先生方に聞かせて意見を求める事もなく、
ストレートにジャイを呼び出し問い詰めたのでございましょう。
ジャイにとっては青天の霹靂であり、多少の動揺はあったかもしれませんが、
そこは外面のよいジャイのことですので、その場は適当にやり過ごし、
何かしら理由をつけてカセットテープを自分の手元にと考えるのは当然のこと。
そして何かと多忙な校長は、
弱小野球部の揉め事になどかまっている暇もないということなのか、
野球部内の問題は野球部内で解決するようにということなのか、
真意は分かりませんが、
とにかく私たちの切り札であるカセットテープを
こともあろうかジャイに渡してしまったのでございます。
「コソコソと汚い真似しよって、お前らは何をやりたいんじゃぁ!」
沼田さんの横っ面を豪快に張っても、怒りがおさまらない様子のジャイ。
「何度も言うとるがなぁ、文句あるなら直接言うてこいっ!」
確かに何度もそうおっしゃっていますが、私たちの意見など聞く気ないくせに・・・。
「こんな盗聴みたいな真似しよって、これはキャプテンのお前の指示かっ!」
ジャイは沼田さんに詰め寄ります。
ここは、いくらキャプテンとはいえ沼田さんだけに責任を負わせるわけにはいきません。
「それは、僕の独断です。」
私はジャイに殴られるのを覚悟で名乗り出ました。
すると、ジャイは私を睨みつけたものの殴ることはなく
両手でカセットテープを真っ二つに粉砕したのでございます。
そして私に向かって、
「こんなことやられたら、信頼関係いうのんは完全になくなると思わんかお前は。」
信頼関係?
あなたと私たちの間に、そんなものがあったとは認識しておりませんが・・・。
それにしても、目の前で粉砕されてしまった頼みの綱であり切り札であるはずのカセットテープ。
私たち野球部の行方を左右する大事なものを、何故ダビングしていなかったのか・・・。
まさに、“後悔先に立たず”でございました。
(つづく)
1話からの方はこちら
チビ鷹軍団 ←こっちは子供とホークスの話を中心に