前回までのあらすじ
(楽しいはずのバリ島旅行で、わたしは悪魔に取り付かれてしまいました…)
どれくらいの時間が経ったのでしょうか?
それまでの気が狂わんばかりの痛みが、何事もなかったかのようにす~となくなり、
私は正気を取り戻しました。
頭が割れるような激痛の原因が、耳の中にあったことにようやく気づきます。
友人に見てもらうと、耳垂れ混じりの耳くそが、大量に出てきておりました!
(わたし、いわゆる「ベト耳」なんですね)
中耳炎の発作だろうか?(そんなもんないよ)
手がかりは耳くそですが、ネットも携帯もない当時のインドネシア辺境の地では、
原因を調べる術はありません。
「コレ、ヨク効クヨ!」 (なにに?!)
翌日、店長が買ってきてくれた成分・効能ともに不明の点耳薬を注すと、
耳の中が「ぼわ~ん」とします。
「お~、効く!効く!バグースよ!」
「デモ、海、入ラナイホウガイーネ」
恐怖の殺人リーフポイントから開放され、内心ほっとした私はその後、
キニタマーニやウブドなどの観光地へツーリンクに出かけ、楽しく過ごすことになります。
もちろん、1日3回、謎の点耳薬を注すことを忘れません。
その度に、耳の中が「ぼわ~ん」となり、
「効いてる!効いてる!」と、
私は自分のからだが回復していく喜びに包まれるのでした。
さて、いつまでもそんなバリ島レポを聞かされてもつまらないでしょうから、
話は帰国後へ移ります。
耳鼻科を訪れたわたしの耳の中を診たドクターは、
「なんだこれ?!」と、ピンセットと洗浄水を用意します。
つまみ出したのは、点耳薬でふやけたカナブンの死骸でした。
穴に入った虫は、後ずさりが出来ないといいます。
彼は、わたしの耳に侵入し、ひたすら奥へ向って進んだものと思われます。
耳くそを掻き出し、鼓膜の近くで暴れた後、
ベト耳の海で窒息して絶命したのでしょう。
薬を注すと、ふやけて膨張し、「ぼわ~ん」としたようです。
彼の姿をしみじみと眺める私の頭には、さまざまな思いが交錯します。
今なら、「それください!」と、貰ってくるところだったのですが、惜しいことをしました。
いつか、娘が大きくなったら話してあげましょう。
それは、もう戻ることの出来ないセピア色に染まる青春の1ページの出来事です…
[やっとおわり]
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