なんということもない一日と、思い出すことなど | No Fixed Abode

某日午後、とある用事で外出した。書類を提出するだけだったので、用自体はすぐに済んだのだが、なんだか知らないが、小規模(100人くらいか)の行列が狭い道の片側を占拠していて、すいたところに出るのに手間取った。行列の先はと見ると、先ほどわたしが書類を出しに行った建物の、地下のほうに入っていく。わたしが出したものと同じ書類の入った封筒を手にしているひとがいる。どうやら同じ件で来ているようだ。あれはなんだろう。地下の入り口は団体客用なのだろうか。団体で出しに来る意味もよくわからないが。




雨がぽつぽつ降り出した帰り道、沖縄のやちむんと吹きガラスを扱う小さな店に入ってみた。

店の方と少し話をした。


こういう店、少ないでしょう? 沖縄のひとは、おおらかで。Faxで注文したら、頼んだものとぜんぜん違うのが届いたりするんです。だから自分で足を運んで、買い付けてこないといけなくて。沖縄の工芸品を扱う店が少ないのは、それが理由かもしれませんね、と笑いながらおっしゃっていた。


マカイ(碗)をひとつ買った。じつはわたしはこれまで飯碗を持っておらず、ご飯はカフェオレボウルに盛っていたのだ。そしてそのカフェオレボウルには、ご飯、オートミール、スープ、煮りんご、トコロテンほか、ありとあらゆるものを盛ったのに、カフェオレを注いだことがなかったのであった。なんか悪いことをしたような気がする。これからは、ご飯はこのマカイで食べられる。カフェオレはカフェオレボウルで・・・・・・飲むかどうかはわからない。たいていマグカップで飲んでいるもので。


礼をいって店を出ると、雨が本降りになっていた。




いつもとはちがう道を通って帰ろうと、あっちこっち曲がりながら歩いていくと、石畳の道に出た。すぐ前に団体さん。さっきの人々か?と思ったら観光客らしい。おっと、ここは宮川町ではないか。前から紅い和傘を差した芸妓さんが歩いてくる。こんな粋なとこ、わたしは似合わないのでとっとと違う道歩こう。・・・・・・前を行く観光客が、芸妓さんに(静かに)盛り上がってる。よかったね、あのひとは本物だよ。産寧坂とか嵐山にいる舞妓はんはニセだから気をつけろ! っていわれなくてもわかるか。いや、意外にわからないようなんだなあ。けっこうカメラを向けてる人がいる(撮影許可とってんのかね)。・・・・・・ああ、えれえもん思い出した。わたしが昔見た、アレ(ら)ならばニセとすぐにわかるだろうに。


両親を引率して嵐山へ行ったときのこと。

突然沸き起こった「げひゃひゃひゃひゃ!」という凄まじい音に、何事?!とそちらを見ると、ああ、そこにいたのは平均年齢はとっくに還暦を過ぎているであろう舞妓姿の6人連れ。先ほどの「げひゃひゃひゃひゃ!」はどうやら笑い声だったようだ。軽くめまいを感じながら、ぽかんと口を開けている両親に、「見たらあかん。あれはニセや」と注意。「いわれんでもわかるわ!」と返された。そらそうか。そうやな。

6人連れは、しかしすこぶる楽しそうに、お互いの写真を撮りあっていた。「げひゃひゃひゃひゃ」。いい。本人たちが楽しければそれで。「年齢制限ってないのかな」とちらりと考えてしまったことを許してほしい。楽しい旅の思い出を!Enjoy嵐山!


しかしあの写真、たぶんよくある「旅気分に浮かれて買ったはいいが、冷静になるとなんで買ったのか自分でも理解不能のみやげ物」と同じ扱いになるのではないか・・・・・・なんて思ってごめんなさい。悪かった。もうしません。


わたしがむかし買った謎のみやげ。



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                                                 爪きり



さて、粋な通りをはずれて、川沿いの道を北上する。

路上の休憩スペースに植えられた桜たちのなかに、なぜか一本だけある白木蓮が花を咲かせている。咲きはじめたばかりで、まばらにしか咲いていないし、花も小さめ。しかしじつに清潔な印象の花。春の花は梅や桜だけではない。



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                                             ハクモクレン



四条通を渡り、さらに北上。



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昔撮った写真。「もちかえりましよ」が「ましょ」とかわいくいっているのか単に「う」が足らないのかいまひとつわからないが、ここはせせらぎの道。この写真を撮ったときには水が流れていたのだが、この日は流れていなかった。この貼り紙はもうなくなっていて、「せせらぎの道」であることを示す看板なども見当たらない。いまはせせらぎの道ではないのだろうか。年に一度くらいしか歩かないので詳細は不明。水の流れていない溝に、鳥が一羽。その大きさからムクドリかと思ったが、よく見たらツグミだった。



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                                                ツグミ



ムクドリよりちょっと丸っこいけど、似てるんだよね。年がら年中いるムクドリとちがって、ツグミは冬の鳥。

じっと見てたら迷惑そうに葉陰に入っていってしまった。




古書店で古本を2冊買う。


イン・ザ・ペニー・アーケード (白水Uブックス―海外小説の誘惑)/白水社
¥998
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長めのいい部屋 (中公文庫―てのひら絵本)/中央公論新社
¥700
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いつもの本屋に寄って、新刊を買う。


ご遺体 (光文社古典新訳文庫)/光文社
¥920
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短篇小説日和: 英国異色傑作選 (ちくま文庫)/筑摩書房
¥1,050
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で、帰る。





後日。


飯碗デビュー。



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そしてカフェオレボウルに本来の職務を全うさせてみる。



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といっても牛乳がなかったんで、豆乳なんだけど。





しかし夕食ではまたこう使ってしまった。許せ。



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