「マウス」村田沙耶香
★★★★☆
村田沙耶香さんといえば「コンビニ人間」で第155回芥川賞を受賞し話題となりました。
実は、受賞前から気にはなっていた作家さんで、この本と読むリストに入れていました。
他の本は読んだことがないので何とも言えませんが、この本を読んだ限りではかなり好きなタイプの作家さんだな、と感じました。
これは、芥川賞を受賞した「コンビニ人間」も俄然読んでもたくなりましたね。
今回読んだ「マウス」は世界と自分自身の関係をどう築いていくか、みたいな内容の物語でした。
小学生の律はクラス替えで今まで仲良くしていた友達とバラバラのクラスになってしまう。
新しいクラスに早く馴染もうと、自分と似たタイプのおとなしそうな友人を見つけ、なんとか学校生活を送っていた。
律のクラスには他の生徒から嫌われている女子がいた。
彼女の名前は瀬里奈。
瀬里奈は小学生にしてはとても背が高く、誰とも口をきかない。そして、よく泣いた。
クラスメイトはそんな瀬里奈を異常なものを見る目で見ていて、「気持ち悪い」と言われていた。
瀬里奈が泣いた時、よくどこかへ姿を消した。
どこに行っているのが気になった律は瀬里奈の後を追いかける。
すると、瀬里奈はトイレの用具室に閉じこもっていた。そして、彼女はそこで「灰色の部屋」と呼んでいる部屋にいる想像をして過ごしていた。
律は灰色の部屋に閉じこもってしまう瀬里奈をなんとか現実の世界に向き合わせようと、好きな児童小説である「くるみ割り人形」を読み聞かせる。
すると、瀬里奈は翌日からすっかり人が変わったように、他人とのコミュニケーションを取れるようになっていた。
瀬里奈は自分自身を「くるみ割り人形」のヒロインと重ね合わせることによって、現実世界でもそれらしく振る舞えるようになたのだ。
それから、時が過ぎ大学生になった律は瀬里奈と再会する。
そして、今でも瀬里奈は「くるみ割り人形」を毎日読み、自分をヒロインに変えているということを知る・・・・・
と言った内容です。
主人公の律は真面目で賢くい少女です。
学校という小さな世界の構造をよく理解し、どのように振る舞えば攻撃の対象にならないかを理解しています。
もともとクラスの中心になれるような明るく、オシャレな少女ではないので、攻撃の対象になる可能性があることを知っているんですね。
そんな、彼女が絵里奈と話す時凄く高圧的な態度になるのが凄く印象的でした。
優しい性格の律なんですけど、最初に絵里奈と会話をしたときはまるでいじめっ子のようになってしまいます。
これってなんかよくあることなんでしょうね。子供に限らず大人でも。
周りのみんなが見下している相手には自分も同じように見下してもいい。
みたいな感覚ってありますよ。
恐ろしい感覚です。
強制的に灰色の部屋から連れ出そうとした律は代わりに「くるみ割り人形」を与えます。
すると、すっかり性格が変わった絵里奈はどんどんクラスの中心へと駆け上がっていくんです。
「身長が高くて気持ち悪い」
と言われていた彼女も、人気が出てくると
「モデルみたいでかっこいい」
となります。
この瀬里奈という少女が異常に感受性が強い子として描かれていて、そこが面白いです。
世界と向き合うことができない彼女は小説の登場人物になることで、ようやく世界と向き合えるようになる。
しかし、それは本当の彼女ではないので、大学生になって瀬里奈に再会した律は瀬里奈を「くるみ割り人形」の世界から出そうとします。
律は大学生になっても相変わらず真面目な性格で、アルバイト先であるファミレスで自分の居場所を見つけていました。
そこでは、真面目であることが価値なんです。
学校では真面目というのは本来いいことのはずなのに、バカにあれる対象になりかねません。
ところが、バイト先でも他のバイトからはやはり「真面目でおもしろくないやつ」と思われているようなふしがあります。
律に言いたいのは社会に出たら、真面目っての本当に価値があることなんだよ。ってことですね。
世界との関係がうまく構築できない2人の少女を描いたとても良い小説でした。
興味を持ったという方はぜひ読んでみてください。
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