「すいかの匂い」江國香織
★★★★★
少し久しぶりの江國香織です。
江國香織さんの小説は基本的に好きな感じなんですけど、今回読んだこの「すいかの匂い」は
凄く良かった!
です。
今まで読んだ江國香織さんの本の中でも一番好きかもしれません。
小説の世界にどっぷりと浸かりたいと思っているので、基本的に短編集には好きなものが少ないんです。
小説世界に入り込んだ~って思ったらすぐに終わってしまって、また一からか~って思ってしまうからです。
しかし、この「すいかの匂い」は連作というわけではないのに、全ての物語に共通する何かがあって、その部分で世界が繋がっている感じがしました。
「すいかの匂い」に収録されているのhが以下の11編
・すいかの匂い
・蕗子さん
・水の輪
・海辺の町
・弟
・あげは蝶
・焼却炉
・ジャミパン
・薔薇のアーチ
・はるかちゃん
・影
中でも特に好きだな、と思ったのは
「あげは蝶」
華族さんの血が流れている少女は母の実家へ向かう新幹線の中通路を挟んだ斜め二列うしろの席にべたべたとくっつきあってる男女を見つける。
女は丈の短いスカートからむっちりした太腿にあげは蝶のシールを貼っていた。
トイレで女に話しかけられた少女は女から
「一緒にくる?」
と誘われる・・・・
「薔薇のアーチ」
主人公は夏休みは祖父母のうちにいき、毎日父と海にいっていた少女は、そこで一つ年上の少女と知り合う。
東京から来たという主人公に東京への憧れを語る少女。そんな少女に対し主人公はなぜか嘘をつぎつぎとついてしまう・・・・
辺りでしょうか。
江國香織さんの小説は凄く好きな感じで、特にこの短編集は凄く好きなんですけど、
なんで好きなの?
どこが好きなの?
と聞かれると凄く解答に困るんです。
その「好き」は凄く感覚的なもので、言葉に変換するのが困難です。
この本の最後に作家の川上弘美さんが
「江國さんのひみつ」
というタイトルの文章を書いていますが、その中にもこんな感じで書かれています。
このお話、わかる。
たぶん、こんなにこれがわかるのは、私だけじゃないかな。僕だけじゃないかな。何がわかるって、そうだな。簡単に表現できちゃうようなものじゃないよ。だって、それなら、「自分だけはわかる」なんて言ってもしょうがないもの。
とにかく、わかるんだ。
この文章は江國香織さんの小説が好きな人なら少なからず共感できると思うんです。
自分も本当に
全くその通り!
って思ってしまいました。
江國さんの小説の良さというのは
簡単には表現できない。
んです。
この短編は大人の女性が少女時代を回想するという設定のものばかりで、過去に起きた出来事を記憶を頼りに語っているような内容のものです。
人間の記憶の曖昧な感じをそのまま物語にしているようなものが多く、その曖昧な状態のままの記憶が幻想的な感じになってとても心地よいんです。
そして、「すいかの匂い」というタイトルの通り、夏が舞台の物語でも共通されています。
夏のげだるい、甘ったるい感じの空気感が全体を漂っているんですね。
なので。最初にも書いたんですが、それぞれ独立した物語なんですけど、連作のようにも感じます。
1冊の短編集で1つの作品というような感じがします。
少女の頃に経験した夏の記憶を曖昧なまま物語にした小説集です。
幻想的な感じのする小説なんですけど、お話の内容は結構ダークな感じのものが多く、少女の持っている暗黒面と言いましょうか、少女の持つ危うい感じが出てて凄く好きです。
少女の無垢と危うさ
とうのは自分の中では大きなテーマになっているものですので。
気になった方はぜひとも読んで頂きたいと思います。
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