「稲妻」
★★★★★
【公開】1952年
【製作国】日本
【製作国】日本
【上映時間】93分
【監督】成瀬巳喜男
成瀬巳喜男監督作品は久しぶりに観たんですけど、この映画は今まで観た成瀬作品の中でもピカイチに素晴らしい作品でした。
完璧な映画
と思えるほどの内容で、脚本も演出も全てが最高でした。
物語のテーマや内容的にも60年以上前の作品とは思えないくらい現在に通じるテーマで、なおかつ暗い物語になりそうな内容なのに観終わった後は清々しさを感じることができる映画でした。
観光バスのガイドとして働く清子には2人の姉と1人の兄がいる。
ある日、清子は長姉から縁談の話を持ち掛けられるが、欲深い姉は縁談を利用して利益を得ようとしているのが見え見えでまともに相手にする気が起こらない。
そんな時、次姉の夫が他界する。
落ち込む姉だったが、長姉やその夫からは保険金が下りただろうと、金をせびりに来る。挙句の果てには夫の愛人と名乗る女が乳飲み子を連れて金をせびりに来る始末。
夫の死を嘆く暇さえない。
そんな、ゴタゴタを目の当たりにした清子は、実家を出て一人暮らしを始めることにするが・・・・
といった物語です。
一人の女性の成長の物語と言っていいのかと思いますが、それだけではなく、絶妙な人間関係が織りなす人間ドラマを見事な手腕で娯楽作品として成立させている監督の力量にはもう脱帽するしかない。
末っ子の主人公清子はバスガイドをしている20代前半の女性。自立心は強いようです。
家に下宿している学生さんが勉強しているのを見て、自分ももっと勉強がしたいな。と夢見ている。
長女は欲深くて、自己中心的な性格。
次女はおとなしくて、言いたいこともまともに言えない性格。
長男は戦争からかえって来てからというもの、仕事もしないで家でゴロゴロしている始末。
しかも、この4人は全員父親が違うんですよね。
母は4回結婚して、現在は1人。
死んだり、別れたりしたようです。
この複雑な家庭環境の中で、姉の夫やら、清子の縁談相手やらが登場して、さらにお金がからんできてドロドロの展開!ってなりそうなんですけど、そうでもないんですよね。
死んだ夫の愛人が金をせびりに来るんですけど、そこで清子がおとなしい性格の姉に代わってハッキリお金は出さないと言い切るんですけど、最終的には少ない金額だけれどもお金を出すって言っちゃうんです。
このシーンなんかも、凄く腹の立つようなシーンなんですけど、なんかさわやかなんですよね。
家を出た清子はガイド仲間が下宿していた部屋を紹介してもらって、その部屋で暮らすことになるんです。
いつか大きな本棚を買ってその本棚を好きな本で埋めるんだ。
と夢を語る清子がとにかくみずみずしくて美しい。
さらに、隣にはピアニストを目指す妹と、その妹を全力でサポートしている兄の2人が暮らしていて、その兄ちゃんと清子がなんだかいい感じなんです。
結局、どうもならないまま映画は終わるんですけど、そこがまたいいな、って思いました。
最後まで描かないってところがいい。
人生のある一部分を切り取って見せてもらっているような感じがして凄くいい終わり方だな、って思いました。
同じ時期に活躍した小津安二郎も家族をテーマにした作品をた沢山のこしていますが、この映画は小津作品とはまた違ったテーマの切り取り方をしていて、人間関係のめんどくささとか、メロドラマ風の物語とか、今観ても新鮮に観れること間違いなしです。
この頃の日本映画界には小津安二郎がいて、成瀬巳喜男がいて、黒澤明がいたんですよね。
とんでもない時代ですね。
まさに日本映画黄金時代だと思います。
これほど才能がある監督が同時に存在して、それぞれが違ったテーマで映画を量産しているというのが凄いなって思います。
あと、この頃の女性の美しさというのに凄く憧れます。
この頃の日本って終戦後で貧しかったのかもしれないんですけど、裕福さとは違った幸福があったんではないかしらん。と妄想してしまいます。
だから、この時代に凄く憧れが強いです。
成瀬監督作品まだ観ていないものも多いのでもっと見たいと思いました。
とにかく完璧な映画の1本だと思います。
気になった方はぜひともご覧になってください。
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