読書「江戸川乱歩傑作選 D坂の殺人事件」江戸川乱歩 | 渋谷宙希のブログ

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「江戸川乱歩傑作選 D坂の殺人事件」江戸川乱歩
★★★★★




江戸川乱歩初期の代表的な短編を収めた1冊。



乱歩入門書としては最適の1冊かと思います。


かくいうこの私もこの本で乱歩の虜になった者のひとりなのです。


表紙の丸尾末広のイラストもとても素敵ではありませんか。


この短編集に収められているのは以下の9編の小説です。


・二銭銅貨
・二癈人
・D坂の殺人事件
・心理試験
・赤い部屋
・屋根裏の散歩者
・人間椅子
・鏡地獄
・芋虫




ずいぶん久しぶりに読み返してみたのですが、やはり乱歩の小説はおもしろい!



特に初期の短編は本当に素晴らしく素敵なアイデアに溢れている作品ばかりなのです。


「二銭銅貨」は乱歩のデビュー作となった作品で、ポーの「黄金虫」のような暗号解読ものです。


暗号解読というのはやはり探偵小説の中でも心が躍るものであります。


暗号に関してはサイモン・ンンの「暗号解読」という本を読んだことがあるのですが、この本も非常におもしろくて、暗号解読の奥深さを身に染みていたので、この小説の中に出てくる


「南無阿弥陀仏」


という特殊なコードを使った暗号も


どれ、一つ暗号を解読してやろう



などと思い、解読を試みたのですがやはり暗号解読というのは本当に頭のいい人でないとできないとみえて、全く解読には至りませんでした。


小説のラストでは大きなどんでん返しが仕掛けてあって、後の乱歩作品でも同様の仕掛けが施されて小説が数多く登場します。


やはり、デビュー作というのは作者の趣向が色濃くでるのだなぁ、と思いました。


「D坂の殺人事件」はかの有名な名探偵明智小五郎が初めて登場する小説であります。


この頃の明智くんはまだ探偵業は営んでおらず、学生のような生活をしているのです。


そして、この小説では


日本のオープンな家屋では密室殺人は無理だ。


という声が大きかった中、物理的な密室ではなく、人の目があることによる密室を作り上げて見事に日本ならではの密室殺人を作り上げたという点で歴史的にも重要な作品なのであります。


この小説の面白いところは、後に名探偵となる明智が犯人として疑われるところです。


さまざまな証拠が明智が犯人と思わせるものばかり。


物語の終盤まで、読者は明智が犯人なのでは?と思わせる構成が素晴らしい。



格子模様を使ったトリックは見事なものなので、そのトリックをあっさり捨ててしまい、真相を全く別の部分で出してくる辺りもとても鮮やかと言えるでしょう。


さらに、この小説のラストは


実は殺人事件なんてそもそもなかった



というようなこれまた奇想天外などんでん返しが用意されています。


初めて読んだ時は本当にビックリしました。


明智がたいして活躍してないのに物語が終わっていく感じも凄くおもしろかったのです。


「心理試験」はまるで、ドストエフスキーの「罪と罰」を彷彿とさせる内容の探偵小説です。


この物語の主人公が殺人を行う動機はまさに、ラスコーリニコフの動機とほとんど同じなのですよ。


見事に完全犯罪をやってのけたかに見えた男の前に現れたのはやはり明智小五郎です。


男を心理試験にかけて、その試験結果から犯人であると導き出す手法は鮮やかです。


この小説ではすっかり有名な探偵になっている明智のクールなキャラクターが確立され始めた作品ともいえるかもしれません。


「屋根裏の散歩者」は個人的に大好きな作品。


この小説でも明智小五郎が重要な人物として登場します。


世の中のこと全てに興味を持つことができない青年が見つけた”屋根裏散歩”という遊戯。


こっそりと他人の生活を覗き見する快感というのは、実際には経験したことはなくての、その魅力を想像することはできます。


まるで透明人間にでもなったように、他人の生活を覗き見ることができたらさぞかし楽しいでしょう。


しかし、この青年は覗き見るだけでは飽き足らず、完全犯罪を思いついてしまうのです。


しかも、こんな犯罪に興味を持ったのはなんと名探偵明智小五郎の影響なんだから、とても面白い構造のお話です。


きっと犯人は明智にさえ出会わなければ、こんな犯罪を犯すこともなかったでしょう。


「人間椅子」はもはやホラーと言ってもいいくらいおぞましい物語です。


椅子の中に人間が入っていたら・・・・


という作者の妄想から生まれたこの作品ですが、その見せ方がとっても面白いのです。


作中に登場する美しい女性作家が味わった恐怖を読者も共有することでしょう。


「鏡地獄」は乱歩の鏡好きが生んだ傑作短編であります。



乱歩は鏡を題材にした小説、「湖畔亭事件」や「押絵と旅する男」などいくつか書いていますが、この「鏡地獄」は物凄く想像力を掻き立てられる傑作だと思います。


この小説に登場する鏡狂いの男がみた光景というのは一体どのようなものだったんでしょうねぇ。


とても気になります。


この本に収められている作品は全て面白く、好きなものばかりですが、特に好きなものをピックアップして紹介してみました。


気になった方は是非読んでみてください。


乱歩の本を読んだことがないけど、どれから読めばいいのかわからない。って方にもお勧めです。








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