「錦繍」宮本輝
★★★★☆
宮本輝の小説は「蛍川・泥の河」(感想はこちら)を読んで凄くよかったので、他の作品も読んで観たい!って思い今回「錦繍」を読んでみました。
結果的に言えばこの小説もとてもよかったです!
「蛍川・泥の河」では少年、青年の切ないひと時の感情のようなものを描いた傑作ですが、「錦繍」では大人の男女の恋愛感情から、壮大な宇宙のカラクリを描いた物語になっております。
書簡形式の小説なんですけど、この形式の小説って今そんなにない気がしますが、この小説は十分書簡形式でも面白くて広がりのある物語になっていて素晴らしいと思いました。
障害を持った息子と二人で蔵王のゴンドラ中で偶然10年前に別れた夫靖明と再会した亜紀。
10何前とは変わり果てたその姿にショックを受けた亜紀は、別れてからも靖明のことが気になり手紙を出す。
亜紀と靖明が離婚して原因というのは、10年前のある事件。
靖明は不倫相手の女性に刺される事件を引き起こす。
相手の女性は自ら命を経って死亡。
靖明も重傷を負うが、一命は取り留める。
この事件が原因で二人は離婚したのだが、実はその不倫相手の女性と靖明は中学生時代からの知り合いだったことが分かる。
そして、そのことは警察や家族にも知らせていなかった靖明に対して、不思議に思っていた亜紀は2人の関係について問う内容の手紙を書いたのだった。
靖明かたの返事には、死んだ女性との出会った内容などを記されていたが、肝心な部分が抜けており、気になった亜紀はさらに追及する手紙を送る・・・・・
といった内容で、亜紀からの手紙、靖明からの手紙が交互にかわされていく。
この小説は、まずは過去についての事柄がひたすら描かれていく。
2人の手紙のやり取りを読んでいるうちに10何前に一体どんな事件があり、なぜそのようなことが起きたのか?ということがじょじょにわかってくるようになっている。
そして、物語は過去の事件から現在どのような生活をしているのか、というお互いの報告になり、最終的には未来に向かっていく内容になっている。
この構成がとてもうまくて、凄く物語の中に入り込むことができました。
そして、物語の中で重要なセリフとして主人公亜紀がモーツァルトの音楽を聴いてこんな感想を述べる
「生きてることと、死んでることとは、もしかしたら同じことかもしれへん。そんな大きな不思議なものをモーツァルトの優しい音楽が表現してるような気がしましたの」
この感想を聴いた、モーツァルトマニアの喫茶店店主はその言葉に深く感動する。
しばらくして、店主は亜紀にこう話をする
「生きてることと、死んでることとは、もしかしたら同じかもしれへん。そんな宇宙のからくりをモーツァルトの音楽は奏でているのだ。星島さんはそう言わはりましたなぁ」
この宇宙のからくり、そして、生命のからくり、という言葉が非常に重要な要素として物語の中に度々登場します。
生きてることと、死んでることはもしかしたら同じことかもしれない
というのは、村上春樹の「ノルウェイの森」に出てくる
死は生の対局としてではなく、その一部として存在している。
を思い出しました。
村上春樹の小説ほど、生の世界と死の世界が同時に描かれているわけではないのですが、生と死が同時に存在している状態というか世界が描かれているような気がしてとても面白かったです。
さらに、過去、現在、未来も同時に存在している世界観が展開されていて、なんとなく宇宙のからくり、生命のからくりという言葉に存在感が出てきます。
大人の恋愛小説として読んでも普通に面白いし、かなり深い内容の純文学として読んでもとても面白い小説なので、気になった方ぜひとも読んでみてください。
宮本輝の小説はぜひ他のも読んでみたいと思いました。
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