「グスマン帰れ」アラン・シリトー
★★★★★
アラン・シリトーはやはり短編がおもしろい!
シリトーの小説を読むと浮かんでくる情景は、どんより曇った空、ジメジメした空気、暗く薄汚れた町並み。
特にそんな情景描写があるわけでもないので、全ての小説に共通したイメージがある。
労働者階級の生活を淡々と描写したような物語が多く、そこにヒーローやヒロインは不在。
そこにいる人々はみんななにかから逃避していたり、孤独を抱いていたり、劣等感を持っている。
大きなドラマもこれと言ってあるわけではないが、人生の中で誰もが感じる逃避願望や全てをチャラにしたいというリセット願望のようなものが現れている気がしてとても好きだ。
「グスマン帰れ」は7編の短編で構成された短編集です。
タイトルにもなっている「グスマン帰れ」では、嫁と生後間もない赤ちゃんを連れて車で旅をしている男が車の故障をきっかけに知り合ったグスマンという男の話を延々と聞かされるという物語。とにかく、よくしゃべる男で会話の中から男はナチスの残党でユダヤ人かの追求から逃れるために逃亡生活を送っていることがわかる。男はひたすらしゃべっているのだけれど、この男の話しがなかなかにおもしろいのですよ。
個人的にこの短編集の中で一番好きなのは「運河」。これは、故郷から離れて暮らしている男が父の死で一時故郷に帰ってくる。という物語。故郷では従兄弟や昔付き合っていた女性と久しぶりの再会を果たす。昔付き合っていた女性との会話はなんとなく切なくて良かった。自分から捨てた、というよりは逃避した故郷への近親憎悪的な感情が主人公の複雑な心理となっているところがおもしろい。
「綱渡り」という短編もおもしろかった。偶然出会った女性に心を惹かれた主人公はその女性のためにお金を盗みに行く。という物語。つねに何かから逃避しているシリトーの得意としているタイプの主人公とストーリーだった。
俺は何かから逃げ出してるだけじゃなくって、何かに向かって逃げ出してるのさ。
という主人公のセリフが、この小説の全てを語っている気がする。
いや、この小説だけではなく、シリトーの小説全般にこの言葉がしっくりくる。
とてもいいセリフだ。
社会に対するささやかな抵抗。
とういった感覚がとても共感できるからシリトーの小説はおもしろい。
お勧めの1冊です。
シリトーの小説を読むなら「長距離走者の孤独」もとてもお勧めです。
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