皆さんこんにちはリオンです。
SFつながりで今回は宇宙の話を書いてみようかと思います。
最近ニュースで話題になった『アルテミス2号』の月周回ミッション。
無事、月の裏側を通過して地球に帰ってきました。世界中でニュースとなり、月の裏側や月から見た地球の高精細な写真が人々を驚かせましたね。
月に行く計画くらいのことは結構な人が知っているんじゃないかと思うんですが「なんで今、月に行くのか?」「アポロ計画からなんでこんなに時間がかかったのか?」「その後の計画」とか、アルテミス計画の全体像について、気になったので詳しく調べてみました。
●アルテミス計画とは?
NASAが主導する『アルテミス計画』は月面にインフラ設備と基地を建設し、将来の火星探査も見据えた人類史上類を見ない壮大な計画です。
『宇宙政策指令第1号(Space Policy Directive-1)』に署名するドナルド・トランプ大統領
アルテミス計画が法的、政治的に正式に発足したのは2017年12月にドナルド・トランプ大統領がホワイトハウスにて『宇宙政策指令第1号(Space Policy Directive-1)』に署名によってでした。
1972年アポロ17号以来、アメリカの宇宙政策は小惑星探査や火星への直接的な探査など二転三転してきたのですが、この司令が採択されたことによって、小惑星探査を目指していた従来の計画から「まずは月に行って、そこを拠点にし、火星へと人類を送る」という壮大な道筋へと大きく舵を切りました。
署名が行われたのは12月11日で奇しくも人類が月面に降り立ったアポロ17号の月面着陸から45周年となる歴史的な日となっています。
その後具体的な計画の細部が練りあげられ、世界各国の宇宙開発組織が参加する大規模なものに発展。
計画名は、アポロ計画がギリシャ神話の神の名をとった慣習からアポロの双子の姉である月の女神アルテミスから名前が取られ、『アルテミス計画』として計画が始まりました。
●なぜ今、月を目指すのか?
NASAが今、月を目指す理由がいくつかあります。以下にまとめてみました。
宇宙での軍事的優位性の確立
アメリカが月を目指す目的の一つに中国との宇宙開発に対抗するという国家間の技術開発競争が根底にあります。
近年中国も月の裏側への探査衛星投入を行っており、月の裏側はに基地を作ろうとしているのではないか?なんて話もあります。月の裏側は、地球から電波が直接届かず、干渉もしないため、監視が難しいため深宇宙探査や諜報活動を行うのに最適となるとの見方もあります。
未来のエネルギー需要問題の解決
また、未来発電方法として開発が進んでいる核融合発電にとって重要な燃料となるヘリウム3という物質が月全体で約100万〜500万トンはあるとされています。これは人類が現在必要としているエネルギー規模から見ると驚異的な量です。
たった25〜100トン程度のヘリウム3があれば、世界全体の1年間分のエネルギー需要を賄えるとされており、月の埋蔵量から換算すると数千年から1万年分は支えられると見られています。
AIのためのデータセンターやロボティクス、IoTが今後急速に普及する未来を見据えている今、未来の電力需要問題の解決は重要なテーマとなっており、それを解決する一手となるかもしれません。
火星探査の技術的検証、エネルギー補給のための月面基地の建設
アルテミス計画は将来の火星探査のために月面基地(ムーンベース)の建設も主な目的の一つです。
大気のほとんど無く、低重力という月面の過酷な環境で数カ月生活し、生命維持装置や居住技術をテストすることで将来の有人火星探査に向けた実験や準備を行うことができます。
また、NASAの科学者の推定によると、月の南極クレーターにある『永久影(太陽光が当たらない場所)』には水の氷が数億トンはあるとされ、これを分析する計画も進んでいます。この氷は飲料水となるだけでなく、電気分解のよって水素と酸素を取り出すことで呼吸用の酸素と宇宙船の水素燃料を作り出すこともできます。将来の火星を含めた深宇宙探査のエネルギー補給地としても月面基地は期待されています。
●核となる5つの計画
アルテミス計画の全体像について詳しく見ていきたいと思います。
アルテミス計画は現在5つの計画によって構成されています。以下に概要をまとめてみました。
・アルテミス1(2022年 完了)
アルテミス1の計画概要図
新型ロケットSLSと宇宙船オリオンの初飛行は無人試験飛行となりました。無人で月を周回し、地球への安全な帰還能力を証明しました。
・アルテミス2(2026年4月 完了)
アルテミス2の計画概要図
オリオン宇宙船初の有人飛行。オリオン宇宙船初の有人飛行4名の宇宙飛行士を乗せてつきを周回して地球へ帰還する計画です。生命維持システムなど、宇宙船の機能検証が完了。4月7日には地球から約40万6770kmの地点に到達し、1970年のアポロ13号が保持していた記録を約56年ぶりに更新して「人類史上最も遠い場所へ到達した」宇宙船となりました。
・アルテミス3(2027年以降予定)
NASAは当初は月面着陸を想定していましたが、地球低軌道での有人試験飛行に変更されました。民間宇宙開発企業のSpace Xによる月面着陸船スターシップHLSやBlue Originの第二月面着陸船ブルームーンのドッキングや新型宇宙服の検証を行う試験飛行が行われる予定です。
・アルテミス4(2028年初頭予定)
アポロ計画以来の有人月面着陸を目指します。最後に有人月面着陸したアポロ17号が月面に降り立ったのは1972年なので56年ぶりの偉業達成となるか注目されます。当初は、月を周回する有人拠点『ゲートウェイ』を建設したのちにゲートウェイから月面着陸する予定でしたが、計画が見直されアルテミス4の後の計画で建設することになりました。
現在の計画によると、月面着陸にはSpace Xの『スターシップHLS』もしくはBlue Originの『ブルームーン』を使用して月面着陸を行う計画に変更されています。
・アルテミス5(2028年末頃予定)
月面基地(ムーンベース)建設と長期間居住に必要な水、燃料などのインフラ設備構築を目指します。NASAの新方針によって中止となった月周回軌道上に建設予定だった『ゲートウェイ』用のモジュールも活用して建設が行われる予定です。
月面基地は、将来の火星探査に必要となる低重力環境下での人体への影響などを調査に使用されたり、月面基地を中心とした資源採掘、物資の輸送など新しい宇宙ビジネス創出の基盤となることが期待されています。
●計画に関わる合意と協力する組織、パートナーシップ
アルテミス計画はアメリカのNASAが主導していますが、非常に多くの国際機関や民間企業が「アルテミス合意」のもとで参加しています。アルテミス合意には以下のようなルールが明確化されています。
『アルテミス合意』
・宇宙資源の活用:「月で採掘した資源は採掘した組織、人が使用してよい」というルールの明確化
・安全地帯の確保:他国の活動を邪魔しないように距離を保つこと
・遺産の保護:アポロ11号の着陸地点など歴史的跡地を守ること
これらの合意のもと67ヵ国がアルテミス計画に参加しています。
以下に主な国際機関、パートナーシップをご紹介します。
●国際機関、パートナーシップ
・JAXA(日本)
トヨタ自動車と共同開発している有人加圧ローバー「ルナ クルーザー」は、宇宙服なしで45日間以上生活、移動できる巨大な動く家です。これはアルテミス計画の月面探査において「最も重要な移動手段」と位置づけられており、その見返りとして日本人飛行士の月面着陸枠が確保されています。
有人加圧ローバー「ルナ クルーザー」
また、月周回有人拠点『ゲートウェイ』用モジュールの一つ『I-HAB(International Habitat Module)』をESA(欧州宇宙機関)と共同開発。ISSへの物資輸送で活躍した宇宙ステーション補給機「HTV」(こうのとり)を改良した新型補給機「HTV-X」も使用される予定です。
月周回有人拠点『ゲートウェイ』
・ESA(欧州宇宙機関)
宇宙船「オリオン」の心臓部である電源・酸素供給システム(サービスモジュール)を製造しています。また、周回ステーション「ゲートウェイ」の通信・居住区も担当しています。
オリオン宇宙船の構成図
・CSA(カナダ)
ステーションの修理や物資移動を自動で行う高度なAIアーム『カナダアーム3』を提供です。カナダはこの貢献により、アルテミス2号(有人月周回)の飛行士枠を獲得しました。
カナダアーム3の完成予想図
民間企業との新しい協力形(商用サービス)
かつてのアポロ計画と決定的に違うのは、NASAが「機械を買い取る」のではなく、企業から「サービスを買う」契約になっている点です。宇宙開発の最先端を行く以下の企業もアルテミス計画に参画しています。
・SpaceX(スペースX):月着陸船「スターシップHLS」
イーロン・マスク氏率いるSpaceXが、月軌道から月面へ飛行士を運ぶ「着陸船」の開発を一手に引き受けています。
『スターシップHLS』
『スターシップHLS』は超大型ロケット「スターシップ」を月面仕様に最適化したもので、最大100日間、宇宙飛行士を月面に滞在させ、帰還させる能力を持ちます。現在のアルテミス4計画では月周回軌道基地である『ゲートウェイ』は建設せず、『オリオン宇宙船』から『スターシップHLS』に乗り換えて月面着陸する計画になっているようです。
・Blue Origin(ブルー・オリジン):第2の着陸船「ブルームーン」
ジェフ・ベゾス氏(Amazon創業者)の会社であるBlue Origin(ブルー・オリジン)も、将来の定期便のための着陸船開発チームを率いています。
『ブルームーン』
・Axiom Space(アクシオム・スペース)、 PRADA(プラダ):次世代宇宙服
Axiom Space(アクシオム・スペース)とPRADA(プラダ)が「月面でしゃがむ」「歩く」といった動作が格段にしやすい、最先端の月面用宇宙服「Axiom船外活動ユニット(AxEMU)」を民間企業として開発・提供します。
Axiom船外活動ユニット(AxEMU)
●『アルテミス4』有人月面着陸ミッション
ここからは、2028年以降に行われる予定のアルテミス4号月面着陸までの全手順を見てみましょう。
1. 前日譚:着陸船とステーションの準備(無人)
有人打ち上げの前に、まず以下の要素が月軌道へ送り込まれます。
・着陸船(スターシップHLS)の待機:
SpaceXの『スターシップHLS』が、地球軌道で燃料補給を受けた後、無人で月軌道へ向かい待機します。
・『ゲートウェイ』の設置:
ゲートウェイの完成想像図
先行するミッションで、月周回ステーション『ゲートウェイ』の最小構成モジュール(「PPE(電力・推進モジュール)」と「HALO(居住・ロジスティクス前哨基地)」)が月軌道に設置されます。打ち上げはSpaceX社のファルコンヘビーロケットによって行われ、本格的な建設は月面着陸後に行われる予定です。
2. 有人打ち上げと「居住棟」の輸送
NASAの超大型ロケット『SLS(スペース・ローンチ・システム)Block 1B(強化版)』により、4名の飛行士を乗せた宇宙船『オリオン宇宙船』が打ち上げられます。
この際、オリオンの後ろには日本(JAXA)と欧州が開発した居住モジュール『I-Hab』が積まれており、一緒に月へ運びます。
3. 月軌道での合体(ゲートウェイの完成)
月軌道に到着したオリオンは、待機していたゲートウェイに『I-Hab』をドッキングさせます。
『I-Hab』の概要図
これにより、月を周回する本格的な有人基地が完成します。飛行士はオリオンからゲートウェイ内部に入り、居住エリアを起動します。
4. 着陸船への乗り換えと月面降下
ここからがクライマックスです。
チームを分割し、4名の飛行士のうち、2名がゲートウェイに残り、2名が着陸船『スターシップHLS』へ移動します。
着陸船がゲートウェイを離れ、着陸船は月の南極付近を目指して降下を開始。
5. 月面活動(約6日間)
南極の過酷な環境(永久影の近くなど)に着陸し、約6日間の探索を行います。
また、氷(水資源)の調査や将来の基地建設に向けた実験を行います。
6. ゲートウェイへの帰還と地球への出発
月面での任務を終えた2名は、着陸船で再び上昇し、月軌道上のゲートウェイで待機していた2名と合流します。
全員が再び宇宙船「オリオン」に乗り込み、ゲートウェイを離れて地球への帰還路につく予定です。
●『アルテミス5』以降を含む月面基地建設までの3つのフェーズ
NASAが2026年5月26日にNASAが発表した具体的な最新のロードマップを元に『アルテミス5』以降の計画も含め建設が計画されている『月面基地(ムーンベース)』建設の具体的な計画をご紹介します。
▶【フェーズ1】探査ロボット、移動車両の月への投入、月面着陸(2026年〜2028年)
アルテミス計画では、月面基地建設に際してNASAが民間企業に委託する『CLPS(商業月面輸送サービス)』という契約によって2026年〜2028年にかけて多数のロボットや探査車が送り込まれます。
・VIPER計画(2026年後半)
2026年のメインミッションとして月面探査車ロボットである『VIPER(Volatiles Investigating Polar Exploration Rover)』が月へ送り込まれる予定です。打ち上げにはジェフ・ベゾス氏率いるBlue Originの着陸船『Blue Moon Mark 1』が使用されます。
NASAの月探査ミッション「VIPER」の探査車(左)と
Blue Originの月着陸船「Blue Moon Mark 1」(右)のCGイメージ
本来このVIPERミッションは中止される予定でした。月面探査車ロボット『VIPER』はすでに完成していましたが、当初打ち上げに使用される予定だったアメリカ企業Astrobotic Technology(アストロボティック・テクノロジー)の無人月着陸船『Griffin(グリフィン)』の完成が遅れ、コスト増も重なり2024年に中止となっていたのです。Blue Originの協力によりVIPER計画は復活し、今年の後半に打ち上げられる事になりました。
VIPERはゴルフカートほどの大きさの本格的な月面探査車です。月の南極に降り立ち、ドリルを使って1mほど穴を掘り、月面の土の中にどれくらい『氷(水)』があるかを調べます。
その他にもインテュイティブ・マシーンズ社の着陸船『IM-2』の着陸も予定されており、通信インフラや掘削技術のテストを今年2026年中に行う計画が進んでいます。
・宇宙飛行士の足となる『月面移動車(LVT)』の先行投入(2027年〜2028年予定)
有人ミッション『アルテミス5』にて使用される『月面探査車(Lunar Terrain Vehicle(LTV)』(以下LVT)の先行投入が行われます。
有人月面探査車「Lunar Terrain Vehicle(LTV)」のコンセプトデザイン
LVTは与圧されたキャビンを持たない非与圧式の車両で、インテュイティブ・マシーンズ社、ルナー・アウトポスト社、アストロラボ社の3チームが開発競争を行っています。
宇宙飛行士は、LVTに月面活動用の宇宙服を着用して搭乗します。電力管理、自動運転、最先端の通信・ナビゲーションシステムといった機能を実現する先端技術に支えられたLTVによって、月の南極に降り立った宇宙飛行士は徒歩よりも広い範囲を探索し、科学機器を運び、月面のサンプルを採取できるようになります。
また、宇宙飛行士がいない間は地球からの遠隔操作によって自動運転に切り変えて動き回り、科学調査や物資の運搬を自律的に行う無人ロボットとして機能させる計画になっています。
・超大型着陸船の無人テスト(2028年予定)
SpaceXによる『Starship HLS』とBlue Originによる『Blue Moon』2機の無人月面着陸テストが行われます。宇宙飛行士を含め、将来の輸送インフラになることを期待されている2機が安全に月面に着陸できるか実証試験がこの時期に行われる予定です。
▶【フェーズ2】『ルナクルーザー(有人与圧ローバー)』投入と『固定式居住棟(サーフェイス・ハバタット)』の建設(2029年〜2032年予定)
ここからは人類が月に長期滞在できるようなインフラが整った居住スペースを作るフェーズに移ります。
・『ルナクルーザー(有人与圧ローバー)』
日本のJAXAとトヨタが開発する『ルナクルーザー(有人与圧ローバー)』(以下ルナクルーザー)が月面に投入されます。
ルナクルーザー内部は、地球と同じ気圧になるよう加圧されており、室内活動用の薄手の服を着用した宇宙飛行士が最長2週間は快適に寝泊まりできるように設計されています。これにより、基地の場所を固定せずに移動探査が可能になると期待されています。
・『固定式居住棟(サーフェイス・ハビタット)』の建設
4人の宇宙飛行士が最大30〜60日間滞在できる据え置き型の居住棟を月面に建設します。
月周回軌道有人基地『ゲートウェイ』の拡張で使われる予定だった資材の一部もこの基地建設で利用される予定です。
本日はここまで。今回は月面探査計画『アルテミス計画』とアルテミス2から続く将来の計画『アルテミス3、4』について簡単に詳細を紹介してみました。SFだと思われていたものが技術の発展によって現実味を帯びていくのを見ているとすごいものを感じますね。
参考、画像クレジット:
・Chip Somodevilla/Getty
・NASA Artemis Program Roadmap (2026 update)
・NASANASA - Artemis (NASA Blogs)アルテミス1帰還ライブ配信(YouTube)
・JAXA 宇宙探査ロードマップ(2025年改訂版)
・トヨタ自動車「ルナ・クルーザー」開発資料
・Canada Joins NASA's Lunar Gateway Station Project with 'Canadarm3' Robotic Arm
・SpaceX
・パラグアイが「アルテミス合意」に署名 67か国目の署名国に:https://sorae.info/space/20260508-artemis-accords-paraguay.html
・Axiom Space
・PRADA
・タカノ株式会社
・NASA - NASA Selects Blue Origin to Deliver VIPER Rover to Moon’s South Pole














