星になれなかった犬の話 | プラネタ旅日記

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児童書専門古本店プラネタ(無店舗)の管理人が細々~となにやら呟いております。大半は読書記録。時々頭の悪さと猫馬鹿具合を炸裂させてます。


新居昭乃さんのアルバム「降るプラチナ」は「スプートニク」と言う曲で始まる。
私の中に「好きだけれど苦手」と言う物事が沢山あるけれど、この「スプートニク」がその一つで、聞くたびにとても複雑な気持ちになる。
「スプートニク」は旧ソビエト連邦が打ち上げた人工衛星の名称で、歌詞に出てくる「クローカ」はそれに乗せられたライカ犬の名。
この歌には出てこないけれど1957年11月3日に打ち上げられた「スプートニク2号」に乗せられた犬の名は「クドリャフカ」と言う。
酸素と水と共に宇宙に放たれた犬。
「マイライフ アズ ア ドッグ」と言う映画の冒頭の「人工衛星で死んだライカ犬より僕はまだ幸せだ」と言う言葉の意味をようやく理解した。

想像してみて下さい。
私達は犬です。今、目の前に回収される予定のない人工衛星があります。
人間の手が私をその内部に導く。
7日分の酸素と水。そして、二度と開かれることのない扉が閉まる。
私は何ひとつ理解しないまま、成果のみを期待されて宇宙に放り出される。目に映るのが人類の未来を変える重大な映像だったとしても、それが私にとって何の意味を持つだろう。
私はただ、誰もいない箱の中に閉じ込められたのだ。
ひたすら、扉が開くことを期待している。
頭を撫でる人間の手、名を呼ぶ声だけを待っている。
何れ無くなる水と空気。最後に喉に与えられる、毒入りの餌。
それが何を意味するのかさえ、知らない。

想像してみて下さい。
私は鳴きました。寂しくて、苦しくて、悲しくて、鳴きました。
その声を誰が聞いただろう。誰が知ってくれるだろう。
私のもたらした結果が未来に大きな役割を果たしたとしても、それが私にとって何の意味を持つだろう。
私は死んだのです。人の手に触れられる事なく、名を呼ばれる事なく。
強制的に、その生命を打ち切られたのです。

私は宇宙に憧れる。
打ち上げれたロケットからの映像を喜び、望遠鏡のレンズの向こうに映る惑星に胸を踊らせる。
だけどふと、それらの私の好きな物事が大なり小なり、何らかの犠牲の上に成り立っているのだと実感するとき、目を背けたい衝動に駆られ、
私はその衝動にあらがえない。
そんな現実から目を背けようとする私の手は、あのライカ犬を探査機に導いた手に似ているに違いない。






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これは、その昔、自分のHPに乗せた文章。
HPはもうないけれど、レビューとかちまっと書いていたので何となく保存していました。

先日、生まれて初めての消しゴムはんこ作りに挑戦。
何のモチーフも思い浮かばず、とりあえず猫とかイニシャルとか作ってみたのです。
そりゃもう、自他共に認める不器用者ですから、小汚いものなんですが、これがなかなか、暇潰しになるし炬燵の中でちまちま出来るので楽しい。
……ふと我に返って、「こんな使えもしないモノを作るより本を読んでるほうがずっと有意義」って思ったりしますが、まぁたまには読書以外の息抜きも良いじゃないですか。
で。
ずっと前から、人工衛星とかのスタンプが欲しかったのです。
格好いいのがね、沢山あるんです。
きらら舎さんの「きららボックス」とか垂涎の勢いで眺めてるわけですが(笑)
どうにか自分で作れないものかなぁと思って、挑戦してみよう!と無謀な考えを……。

ネット検索して、人工衛星の写真を探したんですよ。
それを元に絵を描いてスタンプにしよう!と思ったので。

ところがどっこい、最初に目に飛び込んできたのがライカ犬の写真でして。
一気にやる気をそがれたわけです。
行く気もやる気もないのに人間にムリヤリロケットに乗せられて宇宙に飛ばされてそのまま殺された犬。
「ロケットカッコイイ!」「宇宙って素敵!」
……なんて、暢気に言ってる場合じゃないですよ。
本当に全く何の罪のない命を犠牲にして、宇宙に行く意義って何だろうか。




……とっても批判的な気持ちになりますが。
まぁ、日頃当たり前のように肉を食べ、動物実験をした化粧品を使い薬品を服用し、ときにはリアルファーのついた服まで着ちゃう私では偉そうなことは言えません。
今の生活のすべては、犠牲の上に成り立っているんだなとしみじみ思って。
ちょっと寂しくなったりしました。



で、結局出来上がったハンコが↓こちら。


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星が歪んでますよ……!(笑)フリーハンドの1発描きですから。
一応、星を見上げてる猫のイメージなんですが……、母には「猫には見えないしどこ向いてるのか分からないよ」と言われました。
えぇ、不器用ですから私。
用途がないので、このまま消しゴムとして使います(←因みに消しゴムハンコ用の消しゴムではなく、激落ち君とか言う普通の消しゴムです。失敗したときのことを考えて。笑)

モスクワで野良生活をしていた頃のライカ犬は、いつか自分が葬られる場所である空を眺めたりしただろうか?
ライカ犬を乗せたスプートニク2号は地球を2570回周回し、1958年4月14日大気圏で燃え尽きたそうです。
宇宙開発には輝かしい業績を残したけれど。
空に輝く星のひとつにさえ、させてもらえなかった。