黒ねこのおきゃくさま | プラネタ旅日記

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児童書専門古本店プラネタ(無店舗)の管理人が細々~となにやら呟いております。大半は読書記録。時々頭の悪さと猫馬鹿具合を炸裂させてます。

ルース エインズワース, Ruth Ainsworth, 荒 このみ, 山内 ふじ江
黒ねこのおきゃくさま

出版社 / 著者からの内容紹介
冬の嵐の晩、貧しいひとり暮らしのおじいさんのもとに、一ぴきの黒ねこがやってきました。やせ細り、びしょぬれになってふるえている黒ねこを哀れに思ったおじいさんは、わずかばかりのミルクとパンを全て与え、さらにはとっておきの羊の肉までやってしまいます。そればかりか、残っていたまきを全てだんろにくべて、黒ねこをあたためてやるのでした。 翌朝、黒ねこは、不思議な言葉を残して去っていきました。「おじいさん、どうしてわたしをおいだしてしまわなかったのですか」。そして、奇跡は起こったのでした……。『こすずめのぼうけん』などの作品で知られるエインズワースが、BBCラジオ放送の子ども向け番組のために書いた物語です。全ページカラーの美しい挿絵が、物語を一層味わい深いものにしています。

読んであげるなら:5・6才から
自分で読むなら:小学低学年から



以前、書店で「第46回青少年読書感想文全国コンクール」の課題図書として、平積みにされてるのを見かけ、そのタイトルと絵に惹かれて、立ち読みをしました。

絵も内容も好みで、素敵だったので、後に購入し、自分の本棚にも並んでいる本です。

時々(主に冬の寒い日)思い出しては引っ張り出してきて、じっくりと絵を眺めて読むわけです。

今年初が、今日でした。

私は今更言うまでもありませんが、大の猫好きです。「まっくろけのまよなかネコよおはいり」の記事の時にも書きましたが、我が家にも黒猫が1匹います。

黒猫と言うのは、しなやかで美しいですが、哀れっぽさは天下一品です……。

雨が降り、風が吹く寒い夜に迷い込んできた黒猫を、おじいさんが部屋の中に入れてやるのも、頷けます。

雨にぬれたり、痩せたり、怪我をした猫を見ると、とりあえず「どうにかせねば!」と思うものです……。


ところが、このおじいさん、黒猫を部屋に入れたのが間違いの始まり(笑)

実はこの猫、悪魔かしら?と思わずにはいられません。

貧しいおじいさんの僅かな、粗末な(土曜日だからご馳走ですけれども)食事と、ささやかな暖かさを提供してくれる残り僅かな薪を、黒猫は哀れっぽい様子で全て、奪ってしまいます。

おじいさんは何もかも猫にあげてしまって、空っぽの食器棚やなくなってしまった薪のことは考えないことにして、自分が食べ物を与え、温めた猫のことを考えて毛布に包まります。


以前読んだ、マザーテレサの本に、「余ったものを施すのではなく、ないものを施すことこそ、大切です」みたいな言葉がありました。(←もっとちゃんとした言葉でしたよ。念の為)

例えば、自分が今、肉の塊を2つ持っているとして。

1つは自分が食べるけれど、もう1つが余る。だから、余った1つを誰かに分けてあげようと言うのではなく、

肉の塊が1つしかなく、それを上げてしまうと、自分もお腹が空く。でも、だからこそ、もっとお腹を空かせた人に分けてあげようと言うのが本当のやさしさだと。

「若草物語」も、クリスマスのご馳走(自分たちにとっての特別な食べ物)を、貧しい人に分け与えるところからはじまります。

本で読んだり、言葉を読んだり、誰かがしているのを見ただけだと、簡単そうに見えますが、実際に自分が出来るかと言うと、そうではありません。


「年をとって、体が弱ってきたうえに、金があまりないと、人生はつらいものだ」と、おじいさんが言う通り、本当に貧しい生活です。

毎週土曜のお肉と、ミルクに浸したパンが唯一の楽しみ。

そのおじいさんの唯一の楽しみを、黒猫が全て奪ってしまうわけです。

これが人間の子供ならば、誰でも惜しげなく分け与えたかも知れません。

でも、犬や猫と言った動物はどうでしょう?

追い出しておしまい、或いは、部屋の中に入れて、食べ物をほんの少し分けておしまい。

そうなることが多いんじゃないかな。

出来そうで簡単には出来ない優しさをおじいさんが見せたからこそ、あの結末があるのです。

「かさじぞう」と同じですね。

お正月のしたくをするために、かさを売りに行ったものの売れず、帰り道、雪をかぶったお地蔵様に被せてあげる。

そのかさを置いといて、お正月が終わってから売りに行けば、もしかしたら2~3日の食費を稼げたかも知れません。

でもそうしないで、(寒さなんて感じるはずのない)お地蔵様に被せてあげる行為。

何の見返りも要求しない、心からの優しさ。


日々計算ずくで生きている私には難しいところですが……。

こう言った本を読むことで、「やっぱり、優しさって大事だよ。見返りを期待しない心の純粋さって、大事だよ」と気付かせてくれるわけです。それだけで素晴らしいことだと思いますが。

これから大人になる子供たちがこう言った本を読んで、それを素直に受け止め、努力してそうなるのではなく、自然に、当たり前のこととして身につけることが出来たら、凄いと思います。