転ぶのが怖くては走れない。

歩くのさえ億劫になっていた。

そんな最中に後ろから走る人に肩を押されて転ぶ。

もうどうしようもなくみじめだ。

起き上がれずに踞っていると、誰かの手が肩に触れた。

慌てて顔を上げるけれどそこにはもう誰もいない。

ああ、もう。

誰かがまた「立て」と言う。

わかってる。

わかってるよ。

立ってまた転ぶよ。

でもいいや。

もうなんでもいい。

あの手の温度で、こんなにも体が軽くなるのだから。