・痛いながらも「意外になんとかなるかも!」と自信を持ち始めていたところであったが、術後三回目の夜が苦痛のピークとなった。
・起床は6時前。昨夜もあまり寝られた気はしないが、これくらいの時間には自然と目が覚める。朝食はいつもの通り(?)なんとか上半身を起こして、不安定な姿勢で掻き込むように食事を詰め込む。
・今日は歩行訓練の初日となるが、早く歩くほど回復は早いというのがセオリーのようなので、早期退院を目指す身として心構えは前向き。また昨夜から便を軟らかくするための薬を摂取しているため、いつ便意を催すか気が気でないというのも正直なところであった。
・自分で歩けないとなると排便は看護師さんに処理してもらうことになるが、その覚悟はまだできていない。明日中には尿道カテーテルを外して、下の世話は全て自分で済ませられるようになりたいという高いモチベーションに溢れていた。
・本日は”江角マキコ風”の口調の看護師さん。ちょっと厳しめに促され、恐る恐るベッドから左足を落とす。多少の痛みはあるがこれは麻酔のボタンを押して和らげ、ゆっくりと立ち上がる。事前に言われていた通り、一回目は血の気がさっと引いて思わず尻もち。血圧が落ち着くのを待って再トライし、なんとか立ち上がった。
・思うようには動けないが痛みは耐えられないほどではない。ゆっくりと個室から出て、廊下からのいつもとは異なる景色を楽しむ。思いのほかスタスタと歩いて行ったので慌てたのか、看護師さんに「無理はしないでちょとずつね!」と引き戻された。
・問題はベッドに戻る方法。なんというか、どうやって横になれば良いかイメージが湧かない。まあいいやと、ベッドに腰掛けて体が横に倒れていくのに任せたが、ここで脇腹がもげるような痛みが炸裂!。思わず変な声で唸った。傷口が開くというよりは、内臓が千切れ、体内のかさぶたがバリバリと剥がれ落ちるような痛みだった。
・暫くは動けそうもないので小休憩。痛みが引いたのを確認して、再び廊下まで歩いて行く。かさぶたが剥がれてくれたおかげなのか(笑)、二度目は不思議と立つ・歩く・座る・横になるの動作がだいぶスムーズ。歩いた方が治りは早いということを短い時間で実感した。
・歩けることに思いのほかテンションが上がってしまったが、ベッドに戻ると体がだるい。脇腹の痛みも増している。午後には嫁の前でも歩いてみせようと思っていたが、気付けば38度を超える発熱。解熱剤を処方されたが暫くは37度後半から下がらず発汗も激しい。ネットで手術体験談を検索し、自分がどのようなケースなのか探る。結局、該当するようなものは見つからず嫁と話したり子どもの動画を見てなんとか気を紛らわせようと努めた。
・ようやく夕食の時間。歩けるようになったので歯磨きも今日の夜から自分で行える。就寝前の検温・血圧測定・血栓防止の注射を終え、少し早いがさっさと寝ることにした。
・最悪なのはここから。寝ようとするが背中が火照ってでじっとしていられない。ずっと同じ姿勢で寝ていたため背中と腰をしこたま痛めていたのだ。硬膜外麻酔のボタンを押してみるが何故かこの痛みには効かない。いや、効いているからこの程度で済んでいるのかもしれない。電動リクライニングで少しでも楽な体位を探してみるが、そもそも寝返りが打てないので背中はベッドにつけたまま。このままでは、とにかく痛くて寝られない。
・背中と傷口の痛みのどちらがマシか試してみたが、どちらも耐えられそうにない。枕を抱いて厚めのタオルで作った枕に頭を乗せ、なるべく脇腹に負担がかからないよう横向きになれるか試してみたが、無理。
・そうこうしているうちに2時間が経過。巡回の看護師さんが様子がおかしいのに気付き眠剤を処方。腎臓に負担をかけそうなのでなるべく避けたかったのだが、そんなことは構ってられなかった。
・ところが、眠剤を飲んでも痛みが気になって全く寝付けない。全身汗だくで何度も顔をティッシュで拭うが汗が止まらない。そもそも三日間お風呂に入っていない上に、痛みでたびたび嫌な汗をかいているからか頭は最強に臭い。不快だ。
・眠剤の影響なのかちょっとした錯乱状態にあるのが自分でもわかり、何をどうしたいのか夢混じりの状態で電動リクライニングをひたすら上下に動かしていた。途中でこのままでは不味いと、どうにか寝られる位置を再び探し始める。ようやく「左脇腹の傷口を天井に向け右側に真横に寝る」という奇妙なポジションを見つけ、これでいけそうと思った瞬間、恐らく、意識を失った。
・目が覚めると深夜0時。まだ夢の中にいるような感覚。「ベッドから降りて」と誰かに言われたような気がしてベッド脇に立つ。なぜか、お昼に感じた痛みはすっかりと消えていたが、それ以上に背中全体が焼けるように熱い。もう一度真横になって寝ようとしたが、これはこれでかなり不自然な姿勢であるため脇腹と首への負担が大きく30分が限界。何度も新たなベスポジを見つけようと頑張ってはみたものの、結局「最も楽な姿勢は立っていること」と気付く。時刻は1時。この時点で、このまま朝まで寝ないと腹をくくった
・2時、3時、4時と直立不動でひたすら夜明けを待つ。たまにベッドに座ってみたり部屋の中を歩いてみたりするのだが、最も楽な姿勢は直立。
・5時を回ったところでナースステーションに行き、なんとか尿道カテーテルを外してもらえないか訊いてみる。さすがに医師でないと無理と断られたが、この時の唯一の希望は「カテーテルさえ外せばうつ伏せになれる。これで、背中の痛みから逃れて寝られる!」というものだった。