■トルシエ監督が求めたチームコンセプト


最大のキーワードは「規律」です。
規律(discipline)とは、辞書を検索すると「集団や機構の秩序を維持する決まりごと」と表現されています。
雑誌「ナンバー」715号に、この規律についてトルシエ監督の興味深い指摘があったので、一部引用抜粋します。

「だが、本大会となると、日本独自のサッカー文化、独自のメカニズムだけではグループリーグ突破は難しい。そこに戦術的規律が加われば、すなわちヨーロッパ文化を融合させれば、日本はもうワンランク上の戦い方ができる。」

戦術的規律が重要だということを言っているわけです。ある程度の決まりごとがないと組織やチームはなかなか力を発揮しないものです。もともと個の集合体が組織である以上、決まりごとの上で、その創造性や個性を発揮することが必要ということです。


グループワークをするときには「規律」が必要です。例えば、みんなでサッカーチームを作っても、練習日に人が集まらないようでは、チームが強くなるはずがありません。チームで作ったルールを守らせることが、効果的にグループワークを進めるための必要条件となるはずです。
 
ここでのポイントは規律には2種類あるということです。風紀としての規律という側面と、戦術的側面の規律です。


前者は、必ず守るべき約束事。社風と言い換えることもできます。時間、挨拶、服装、髪の毛の色など、その会社にとって守るべき最低限の社会人ルールです。


戦術的側面とは何かというと、状況判断を行う際でのルールを指します。
TQC活動もそのひとつです。
T=タイム(納期)
Q=クオリティ(品質)
C=コスト(価格)
これらはメーカーなどでは必要最低限の守るべきルールとなります。


それ以外でいうと、値引き交渉などに応じる際の現場担当者が持っている予算枠などもそれにあたります。私もサラリーマンの当時は、値引き額として5%という数字を持っていました。営業としては、付加価値を高くしてお客様に提供したいので、安易に値引きをするものではありませんが、見積書提出の後の折衝の中でその行為は行われます。例えばここにルールがないと、言われるがままに値引きをしてみたり、再度持ち帰って上司と相談したりなどで機会損失になったりするわけです。

みなさんも体験があると思いますが、家電量販店などでも値引き交渉をされたりしませんか?ポイントつけない代わりにいくら安くなるかなど交渉した際に、電卓を使ってみせてくれるアレです。


これは、チームルールとも言えます。チームとして動くときの決まりごとがないと状況判断があいまいになってしまいます。いろんな部門、ポジションでもある現象だと思います。これがうまく設定されていないと、「自分であれば●●するけど・・・」などと求めている結果と大きく異なった結果をもたらすことになり、リーダーになった際に自分自身のフラストレーションを高めてしまう結果になったりします。

さらには、仮に自分に能力があってすべてを自分で行ったほうが早いと思っても、信頼して経験を積んでもらいながら任せることも必要です。そのメンバーのレベルにもよりますが、経験の浅い方や、チームグループに入ったばかりの方には求める結果の30%程度の期待値で接することができるといいと思います。後の章でもお伝えしますが、まずは気が楽になり、ストレスを抱えなくて良くなりますし、結果を出すためには失敗を含めたプロセスをたくさん経験させることのほうがいいからです。


トルシエ監督は、日本代表に「規律」という名のチームの基礎となるルールを築くことで、個の集合体である組織が、一定の水準に基づく状況判断や、創造性や発揮することを狙っていたのではないかと思います。


続く・・・


 第2章 チームの持ち味とリーダーの思想の不思議な関係
 
●規律重視のトルシエ監督、クリエイティブなジーコ監督、対話重視の岡田監督


日本代表を応援したことがなくても、ニュースでとりあげらることが多いサッカーワールドカップ。日本代表が本当の意味において世界で活躍しだしたのは、1990年代からです。

初出場は1998年のフランスワールドカップ。私は大学を卒業し、ちょうど社会人1年目でした。当時の代表監督は岡田監督。加茂監督が更迭され、コーチからの繰上げで監督となるも本大会出場を決めた大会です。
2002年の日韓共催ワールドカップ。トルシエジャパンは開催国ということで、予選の成績に関わらず、本選出場が決まっていましたが、見事決勝トーナメントに進出。


2006年のドイツワールドカップは、名選手として日本でも有名だったジーコ監督が率いての戦いとなりました。
そして記憶にも新しい2010年の南アフリカワールドカップ。当初は名将オシムが監督に任命されたのですが、病気により途中で倒れるアクシデントがありました。そこで白羽の矢がたったのが、またしても岡田監督。バッシングもありましたが、本選直前にチームをまとまとめあげ、快進撃を続けました。


それぞれ、岡田監督から始まり、トルシエ監督、ジーコ監督、そしてまた岡田監督となったわけですが、日本代表のサッカーのスタイルは監督の考え方や哲学で大きく変わります。実はチームというものを読み解くときに、メンバーに対して、リーダーはどう接するか、そして何をテーマにしてチームを育成していくかということが、この日本代表のチームから読み取ることができるのです。

98年「指導」の岡田監督、02年「規律」のトルシエ監督、06年「創造性」のジーコ監督、そして10年「主体性」の岡田監督へと、まるである組織の成長を実感させるかのようなチーム育成の考え方がそこにはあったのです。

実は2006年7月の事業の立ち上げの際、私を含め2名の人員とパートさん1人という体制にもかかわらず、これまで記載してきたシステムの策定を行いました。


サッカーのポジションのように役割を部門に持たせ、システムを描いたんですが、私が行うポジションはそれこそ5つぐらいありました。。。
サッカーでは、ポリバレント(複数のポジションをこなせる能力)やユーティリティープレーヤー(フィールドプレーヤーで複数ポジションをこなせる選手)と表現されることがありますが、まさに複数の役割(ポジション)を意識して取り組んだわけです。


7月に30歳を迎える2005年4月に独立をし、1年ほど営業やマーケティングのコンサルティングと資産運用とライフプランの勉強会を生業として生活していきます。といっても実績も何もなくスタートしたわけで、仕事の依頼も取れるわけもなく、苦しい日々を過ごす毎日でした。しかも、結婚したのが前年の10月。サラリーマンを卒業することを事後報告で妻に伝えたところ、大喧嘩。チャレンジャーもいいところですよね。妻には随分と苦労をかけました。。。


そして、最初に事業を立ち上げたのは2006年7月。その事前準備でしたことといえば、本を読み漁り、事業計画を策定して、出資を募り、共にスタートを切ってくれるパートナーに声をかけました。

どんな本だったかというと、マーケティング系や資産運用系などその当時の仕事に直結する本とお金まわりが多かったです。これはフットサル場の運営なども妄想していたので、多額の資金が必要になると思い、実際に失敗したらどうなるのか?などという不安を打ち消す意味でも読んでいた本です。

そして、事業計画書です。実はこのときにはフットサル事業の事業計画書は完成していました。では、何の計画書だったかというと、それはライフプランと資産運用の会員制の勉強会サークルという事業のためのものでした。


ある意味、これらの計画書があとあと私の人生やチーム経営という考え方に大いに反映されることになります。(企画書実践事例集という本に2006年5月に製作した㈱VIDAの計画段階の事業計画書が40ページ渡り掲載されています。)

しかもその当時、一切お金がなかったので、その計画書をもって出資いただけそうな方々にご提案をして400万という資金で株式会社を設立しました。


当時の計画書には

○編集・制作・出版・マーケティング
小冊子の出版・発行、ニュースレターの作成。WEBサイト(ブログ)の企画・制作。
セミナー、勉強会の資料を作成。


○運営窓口
入会希望者の受付・面談。問合せに対する回答、申込み受付。
会費の集金業務・ニュースレターの発送


○セミナー・勉強会
定期セミナーの会場確保やスケジュール管理。
各講師・会社との連携により、受講者が満足できるセミナーを開催。


○運営・個別対応
問い合わせ・各質問に対する回答。提携専門スタッフの派遣。各種勉強会の実施。


○個別商材・販売・サービス
アイテムの用意。メニュー表の作成。価格設定。


○管理・企画・折衝
業務管理とルーチンワーク。企画立案・提携先との折衝


○コンサルティング
会計士・税理士との連携により、自身の持つクライアントの会計・税務面。士業の紹介。


○経理・総務
会費収集。月次の会計チェック。


というように業務=システムが記載されていました。こんなに役割を記載しながらも私を含む2名の人間と、経理のパートの方のみでの立ち上げとなりました。これはその後6名ぐらいのチームで運営されることになりますが、ポジションと役割が明確になっているので、各人の仕事も明確になり、組織としての連携が図りやすくなっていきます。


もちろん、大きな会社の場合には、社長の下に専務がいたり、常務がいたり、担当役員がいたりして、そのポジションごとに責任者が配置され、業務を担うスタッフの方たちがいたりするわけです。言ってみれば、その部門間の責任者の方たちは監督が策定したシステムが、円滑に機能するように対応するコーチみたいなものですね。

そして、システムの策定の際に監督が同時に行うことがあります。それは選手の能力の見極めです。

右利き・左利き?どのポジションがこなせるのか?どんな特徴のある選手なのか?戦術を理解しているのか?安定性はあるのか?いろんな分野からいろんな視点で観察しています。日本代表の選手を集めるときはその行為が如実にあらわれていますよね。
自分が理想とするフォーメーションに適合する選手は誰か?
それとも、特徴を持った選手がいて、そこからフォーメーションの可能性を探るのか?

チーム作りのアプローチはいろいろありますが、とにかく最初は観るということが重要だということです。

私自身、プロジェクトを立ち上げる機会も多いのですが、あることをおこなうようにしています。それが観察です。しかもミーティングなどに参加したりする際には、ずっと話を聞いています。誰がどんな発言をするのか?どんな考えをもっているのか?どんな仕事をされてこられたのか?こんなことを観察します。

これはきっと、サッカーの中で培われてきた感覚だと思います。選抜チームなどにいくとはじめて合う選手などがほとんどで、どんな能力を持っている選手なのか最初はまったくわかりません。

しかし、ウォーミングアップのときなどに多面的に観察することで、足が速い、ドリブルが上手い、トラップが上手い、キープ力がある、ポジションはどこか、などどんなプレーが得意なのかと予測ができます。

こうすることで、同じチームになったときにその能力を引き出しやすいからです。実は仕事でも同じで、一緒にプロジェクトを組んで仕事をする際は、その方のバックグランドにあることやどんな経験をされてこられたかをお聞きするようにしています。ただし、昼間にいろいろとお聞きすると取り調べみたいになってしまうので、大概はノミニケーションの席でいろいろとお話をお聞きしています。


大抵の方は興味を持ってお聞きすると気持ちよく答えていただけます。一緒に仕事をするメンバーの特徴や得意分野が分かった上で、プロジェクトを動かすほうが仕事のすすみ具合が格段に変わります。こうすることで、何か問題が生じたときや意見を求めるときには、あらかじめ分かっているその課題になる分野に精通している方にお聞きすればいいですし、その方のつてをたどっていくことも可能になります。そして、時にはその方にあった仕事を作り出すこともできるようになります。


自分のチームをお持ちの方、部下がいる方、プロジェクトを推進される方は、
どんな能力があるのか?思考があるのか?好きなことは何か?得意なことは何か?今の役割をどの程度理解しているのか?など、メンバーの特徴をよく観察することをオススメします。ただ見ていると変な人になりますので、ランチを一緒にしたり、飲み会の席で何気なく聴いて見ましょう。

そして、自分が置かれているシステムやポジションに求められる役割を再度認識すること。をオススメします。


続く・・・。