あくまで自分の経験からだが、「反る」について簡単にまとめておく。

 

特に問題点とその改善方法に焦点を当てる。

 

①反っているようで何も伸びていない

 外見は反っているようだが、表層がちょっとで深層は不動の体勢。これは、軽く骨盤を前傾して、下っ腹を軽く凹ますことで改善が見込まれる。下っ腹を軽く凹ますとそこから上に力が上がってきて肋骨が軽く前にせり出るように上がる。これが「反る」感覚の第一歩。癒着の度合いであまり最初は肋骨がせり上がらないので、無理は禁物。ちなみに最大限反れると、胸がポコッと膨らむ感じになる。

 

②腰椎が反り過ぎる、「反り返り」になる

 反ろうとし過ぎて、腰椎が前湾しすぎて、反り返ってしまう。これは鳩尾深部がまだまだ硬いことで起きる。反り返りで骨盤が極端に前傾してしまい、股関節の捉えが外れる。これも上記と同様に、下っ腹を凹ますことで、腰椎の反り返りを防ぐことが出来る。徐々に下からくる力を利用して、肋骨を軽くせり出し上げるように鳩尾の奥底の深層筋を伸ばしていく。同様に、癒着の度合いであまり最初は肋骨がせり上がらないので、無理は禁物。

 

③骨盤の重心が上に行ってしまう

 反り返りが解消されて、徐々に鳩尾の奥底の癒着が取れ来ると、胸椎を伸ばせるようになってくる。そうすると、上の意識ばかりになってしまい、骨盤内の重心が上がってしまう。骨盤が股関節の上にとどまらなくなる。つまり、②とは違う理由で、捉えが外れる。これでは、効果が半減してしまう。解決方法はまたも下っ腹を凹ますことである。上ずりそうな骨盤を凹ますことでその場にとどめる。股関節の上にピン止めするような感じ。ピン止めした状態で、反り返らず、肋骨をせり上げていく。上半身と下半身の連動の第一歩である。

よく鳩尾は柔らかくて、鳩尾だけをクネクネしている場合があるが、ほとんどは下半身(骨盤)がピン止めされていない、または、下方向に連動していない(④の問題)。つまり、下半身がフラフラの状態になってしまっている(股関節が弱い)。上半身が柔らかいことがそのまま重心が安定することとは同等にはならない。

 

④大腰筋が上下に伸ばされ、力が骨盤(下)方向と肋骨(上)方向に行かない

 つまり、上下の両方向に力が向かわない。③のようにピン止めしているだけでは不十分で、「反る」は力が上下に行かないのはNG。前提として、上記に書いた①~③が解決されること必須。上達すると下(骨盤)に沈むような感覚と上に伸びるような感覚が同時に得られるようになる。骨盤が斜め下に傾斜する感覚が出てくる(しかし、出来ないと②の問題が発生する。「反り返る」と、ここで言う「骨盤の傾斜」は似て非なるものである)。これで初めて「反る」がその最大効力を発揮する。これが上半身と下半身が連動した状態。下方向にも力がしっかり行くので捉えはさらに強くなり、上半身が反っているとは思えないぐらい安定する。ここまでくれば後は、回数をこなした分だけ上達していくし、胴体が軽く硬直したぐらいでは、一回「反る」をすればすっと身体が軽くなる。仕事の合間に座ったまま両手を上げて伸びをするとき、このような感覚で行えれば(感覚を伴っていれば)それだけでかなり楽になるし、トレーニングにもなる。「反る」という動きは日常の動きの一部であるため、「反る」という体操の動きと日常の動作を完全に別として捉えてはならないと思う。相互作用が起きないと意味が無い。それ故、伊藤昇氏は、「日常の動作を見直す」ようにと書いたのであろう。体操だけでは、胴体深部から動くことを常態化することは難しい。

 

私見では、別に全てを調べたわけでないが、残念ながら、巷にあるほとんどの「反る」は①か②の問題を抱えていて、良くて③の問題が解消されているが、④の問題は残ったまま。

 

こういうことはあまり言いたくないが、上記の問題だらけの「反る」を載せた本が売れ、それを収録した動画の再生数が爆上げで、それを採用しているセミナーが大人気のように思える。そして、そういったセミナーに参加した人や本を読んだ人が、そのまま採用してさらにセミナーや本を出すものだから、問題が改善されないまま世に中に蔓延してしまっているように感じる。端的に言えば「悪循環」が出来てしまっている。

 

理由は、胴体の動きとは別のところにあるのであろう。マーケティング、イメージ戦略、有名・無名など。キャッチ―な名前だと何となくそれだけで良いように思えるからな。横文字がやっぱり何か新鮮。○○体操や○○力などよりも、○○ストレッチ、○○メソッド、○○トレ等々が良い。特に、我々日本人には4文字が非常に心地よく聞こえる。略してもいいし、略すと4文字になるようにすると人気がでる。キムタク、就活、ポケモン、キンプリ、アナ雪などなど。まぁ、商売だから、売れないと困るだろうし、売れればそれでいいと思うので別に構わないが。

The日本って感じで「肥田式強健術」とか良いのにな~。実態も伴っているし。今一番もっともっと売れてほしい身体系の本は『認知症バイバイ体操』。

 

ともかくとも、文字通り「Don’t judge the book by its cover」を忘れてはならないな。

 

 

⑤その他

★顎を上げることについて

完全に肋骨がせり上がった状態になるまで顎は上げない方がよい。途中で上げると、頭も重みで重心や姿勢が崩れる。特に①と②の状態は上げる必要はそこまでないような気がする。それよりも下から来る力を反り返らず上に連動させることに集中した方がよい。外見は気にしない。③のピン止めできるようになったあたりから徐々に頸椎に連動させて、顎を上げてもいいかもしれない。厳密に言えば、頸椎に連動した結果、顎が上がる。

 

★下っ腹を凹ますことについて

これは姿勢制御、もう少し厳密に言えば、深層筋制御と重心制御になくてはならないものである。かといって身体がくの字になるほどしては逆効果である。下っ腹を軽く凹ますと肋骨がぐっとせり出るのでその感覚程度。ちなみに「誰でもできる股関節で捉えた姿勢(北京原人姿勢)」を作るのに必須項目である。上達してくると、外見はそんなに凹んでいないのに、感覚的にはお腹の奥がぎゅう―っと凹んでいるような感じになる。おそらくこれが深層筋、とくに大腰筋下部を活用して背骨及び重心をコントロールしている感覚。巷のドローインとは似て非なるものだと思う。というか、このぐらいまで内部感覚を探れていない方々(胴体深部が動かない住人)がドローイン賛成派と反対派に分かれて(不毛な)議論していると捉えてもいいかもしれない。

 

★大腰筋との関係

「反る」で主に伸びているのは大腰筋である。鳩尾を頂点二等辺三角形の2辺がぐーと引き伸ばされ、上下に伸びる。その時、底辺(股関節と骨盤)はそれにつらないように最低限ピン止めされた状態で無いときれいに伸びない。

 

 ついでながら、よくある「背筋を伸ばす」で、伸ばすべきは、「大腰筋」である。大腰筋が伸びない状態で外見だけ地面に垂直に背筋を伸ばすから窮屈になり、反り腰になる。単に、大腰筋が活性化しておらず、癒着が激しいからで、それが解消されれば、大腰筋を伸ばすことが結果的に外見上、地面に垂直に背筋が伸びた姿勢に見えるということになるだけ。

 

あえて地面に垂直と書いたのは、股関節から折るように前傾すれば、身体をまっすぐにすることができる。これは北京原人姿勢である。初めは無自覚だが、北京原人姿勢は、大腰筋を極力伸び伸びした状態を保った姿勢、つまり外見上、地面に垂直ではないが背筋が伸びている姿勢になっている。癒着が剥がれれば、外見上も地面と垂直近くになる。ちなみにこのことは『スーパーボディを読む』に明示されている。

 

以上、嘘か本当か、ぼやきでした。