メルカトルかく語りき麻耶雄嵩

ジャンル:ミステリー

 

★★★8:傑作、もう一度読み返したくなる1冊

テンポ8.0、プロット8.0、ストーリー性8.0、展開8.0、人物描写9.0背景描写7.0

空気感8.0、ミステリー9.0、ドキドキ感8.0、伏線7.0、読後感8.0

 

 

~ 解説 ~

スタイルとしては、おなじみ銘探偵のメルカトル鮎とワトスン役の美袋三条が遭遇する6つの殺人事件を収める短編とはなっているが、メルカトルは相変わらずのダメっぷりは健在。

 

探偵小説と言っても全くの亜流、態度だけは傲慢で不遜で、ただただ可愛げもないが、そもそもに正しい解決に導くことを目標としていない。

商業探偵家として、都合よく結論をひん曲げることを意にも解さない。

それは助手の美袋も同じで、とりあえず正論を吐くには吐いてみるが、都合が悪ければ簡単に見て見ぬふりが出来る、ダメダメコンビ。

 

とまぁいつもながらに本格派とは程遠い普通でもまともでもない麻耶ワールドへようこそ(笑)

 

~ 作品について ~

「死人をおこす」

 一階は洋風煉瓦造り、二階は和風建築という風変わりで別に密室でもない一軒家カレー荘

 に集う中高時代の同窓6人の内の一人が2階から転落した死体で発見される。

 いったんは事故として処理されるのだが、どうにも腑に落ちない残った5名、やらなきゃ

 いいのに1年後に同じカレー荘に再度集結し、やはりまた一人が殺される

 そこに家主が事件解明の為に雇った、銘探偵メルカトルがやって来るわけだが、真相を導き

 だせるのか。。。

 

「九州旅行」

 相棒の美袋のマンションに来たメルカトルが、隣家から血の匂いに勘づき 扉を開ければ、  

 すぐさま男性の撲殺死体を発見。

 犯人は、写真に写ったフラれた元カノなのか。。。

 

「収束」

 宗教団体が所有する孤島で起きる殺人事件。

 ひとが殺されるのも意に介さない、メルカトルのダメっぷりが発揮される作品。

 

「答えのない絵本」

 学校で教師が殺される。容疑者は学校に残っていた生徒20人の誰かである。

 時間刻みに それぞれの行動パターンからアリバイを調べ消去法で対象を消し込んで

 いった結果、意外な結果が。。。

 

「密室荘」

 メルカトルの別荘に呼ばれた美袋。

 朝起きると密室状態の別荘に死体が転がっている。

 犯人は、メルカトルか美袋のどちらかでしかないのだが、どのような結論に導き出すのか。

 

~ 読後感 ~

メルカトルはハチャメチャである。

私利私欲のために犯人を改竄したり犯人がいないと言い切ったり、殺人が起こるのを分かっ

てみて見ぬふりをしたり、最後の「密室荘」などでは殺人の隠ぺいしたり、自分の利益や都合

で真実を捻じ曲げることなど意にも解さない。

 

しかし そのベースには、作家の練りに練られた作為が隠されている。

真実を読み解けるかはどうかは読者次第ということでは、そこらに転がっている推理小説

よりか、よほど深い作品ではないだろうか。 了

 

 

<評価の説明>

★★★★★10:超傑作、もう神の域

★★★★9:最高傑作、間違いなくこれからも読み続ける珠玉の1冊

★★★8:傑作、もう一度読み返したくなる1冊

★★7:秀作、十分に楽しめる作品

★6:標準的佳作、とりあえす合格レベルの作品      

5:凡作、可もなく不可もなくで読んでも読まなくてもよいレベル

4:駄作、よほど暇であれば読んでもいいが・・・

3:失敗作、読む価値なし

2:酷作、この作家の本は二度と手にも取りたくないレベル

★1:ゴミ、即破棄してもいい