不動産を譲渡したとき、
未経過の固定資産税を
売主と買主の間で精算することがよくあります。
固定資産税はその年の1月1日の所有者にたいして
1年分が課税されます。
ですから、年の途中で売買があると、
売主は
売ってしまった不動産の固定資産税を払い続けなければなりませんし
買主は、
買った不動産の固定資産税を初年度は負担せずに過すことになります。
それではあんまりだということで、
慣習として固定資産税を按分することになったのです。
関西では4月1日を起算日として按分しますが
関東では1月1日を起算日として按分するのだそうです。
このような違いが出るのも、慣習のなせる業でしょう。
ですから、
固定資産税精算金は税金でもなんでもなく
売買代金の一部なのです。
つまり、契約書の物件の売買価額に、
固定資産税の受取額をプラスしたものが
譲渡した値段です。
これを忘れると、譲渡所得が少なく計算されますから
申告書を提出してほっとしていると
税務署から譲渡所得税の計算が間違っていませんか~
という、問い合わせの電話がかかってきて
税金の追徴を求められることになります。
これと、よく似たものに、持ち回り保証金があります。
賃貸物件の売買のときは
入居者から預かった保証金が存在することがあります。
退去時に入居者に返還する金額のことです。
最近は、礼金タイプの契約が多いのですが、
古い入居者がいる物件には、
結構、巨額の保証金が付されていることがあります。
この保証金を売主と買主の間で精算せずに
所有権移転後に退去があったら、買主が保証金を返還するという契約で
保証金の存在と金額を合意の上で、物件を購入することを
保証金を持ち回るといいます。
この持ち回り保証金は、
売主から見れば、建物の売買価額を構成し
買主から見れば、建物の取得価額を構成します。
仕分けで書くとこんな風になります。
売主 保証金(負債の消失)/ 収入
買主 建物 (資産) /保証金(負債)
お金がまったく動かない取引なので、うっかりしがちです。
でも、その割には、物件によっては巨額になることがあります。
持ち回り保証金が売買価額から抜けていれば、
絶対に所得税が追徴でき、
しかも建物の売買価額が増えるので、
課税事業者なら消費税の追徴もできます。
ですから、持ち回り保証金が売買価額から抜けていないか、
必ず税務署はチェックします。
持ち回り保証金は、売買契約書の特約事項として
最後のほうに書かれていることが多いです。
ご注意ください。
ちなみに、持ち回り保証金の習慣は関西に多く
関東では、売買とは別に、
保証金を売主と買主と間で
金銭で精算することのほうが多いそうです。
この関東方式なら、保証金の額は売買とは関係しません。
そのかわり、
契約書上の売買価額は、保証金相当額の分だけ
関西では、関東より安く記載されるのです。
関西では、保証金の返還債務がくっついているからです。
この違いで、
持ち回り保証金が売買価額になることが
より、分かりやすくなるのではないでしょうか。