昨日に続いて、今日も、旧国鉄バスの記念乗車券を、ご覧いただこうかと思っています。

 

 一つ目は、1982年12月15日、信越地方自動車部(小諸駅)が発行した「中山道シリーズ」より、「妻籠宿」。

 

 

 図柄は、廣重画の「木曽海道六拾九次之 妻籠」で、描かれているのは馬籠峠ということになるでしょうか。

 

 馬籠峠 子規句碑

 

 私が馬籠峠に行ったのは一昨年の一月(上画像)。

 馬籠峠のバス停は、「国鉄バス」ではなく、南木曽町がおんたけバスに委託して運送を行う「南木曽町地域バス」でした。

 

 

 次は、1986年12月、近畿地方自動車局(京都駅)発行の「歴史人物ロマンスシリーズNO.7 小野小町と深草少将」。

 

 二人のロマンスの舞台となったのは、今年7月2日付のブログで取り上げた「深草の里」です。

 

 

 最後の一枚は、1986年2月、近畿地方自動車局(京都駅)発行の「古都のポエジーシリーズNO.11 北野天満宮の紅梅」。

 

 私は今年、市バスに乗って「北野天満宮へ」行ったのですが、訳あって紅葉の時期。

 

 

 「もみじ苑公開」中だったので、それはそれで良かったのですが、

同天満宮で有名なものと言ったら、やはり、この記念乗車券の図柄にもなっている「紅梅」ですよね。

 

 記念乗車券の裏面にも、

 

 東風ふかば匂いおこせよ梅の花主なきとて春を忘るな 

 

という、菅原道真の歌が書かれていました。

 

 出典は、『拾遺和歌集』の巻第十六「雑春」で*、

 

 流され侍ける時、家の梅の花をを見侍て 

                           贈太政大臣

 

 東風吹かばにほひをこせよ梅花主なしとて春を忘るな

 

 右大臣だった菅原道真が、太宰権帥に流された時、家の梅(むめ)の花を見て、詠んだ歌ということになるようです。

 

 なお、「太政大臣」は、死後の贈官で、「日本紀畧」後篇九の正暦四年閏十月廿日に**、

 

重贈正一位左大臣菅原朝臣(道真)太政大臣


とあります。

 

 ところで、記念乗車券の話に戻るのですが、「国鉄バス」のロゴの左に3枚とも、「つばめマーク」が描かれていることに、お気付きでしょうか。

 

 菅原道真や北野天満宮を象徴するのが「梅」であるとしたら、旧国鉄は「つばめ」。

 

 1987年4月1日、いわゆる「分割民営化」により、「国鉄バス」は消滅しましたが、「つばめ」は、JR各社のバスのシンボルマークとして健在のようです。

 

*『新日本古典文学大系7 拾遺和歌集』(岩波書店、1990年)

 

**『国史大系』第5巻(経済雑誌社、1901年)