上画像は、小島烏水『アルピニストの手記』(書物展望社、1936年)の挿画、茨木猪之吉「仙丈岳」。
同書の「巻末剰筆」に、次のような記述があります。
北アルプスの所謂氷河遺跡發見後、南アルプスで、最も早く眼をつけられたのは、仙丈岳のカールで、辻本満丸氏に依つて、最も早く仙丈のカール地形が明細に記録された。茨木猪之吉氏の同山の油繪を、原色版として巻頭に掲げたのも、私の好きな山、そして好きな繪だからである。
小島烏水の好きな山は仙丈岳、好きな繪も「仙丈岳」だったようです。
茨木猪之吉の『山旅の素描』(三省堂、1940年)を見てみると、彼は、1931年8月、黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳に登っています。
七丈の小屋は客でこみあってにぎやかだ、それでもよく寝られた。翌日は好天気で駒の頂上に登る、仙丈岳のカールを描く。仙水峠に降り北沢小屋につく。
駒ヶ岳の山頂で、仙丈岳のカールを描いたということなので、もしかしたら、上画像の作品「仙丈岳」もこの時のものかもしれないと、思ったりしています。
上画像は、2002年7月に甲斐駒ヶ岳の駒津峰から撮影した仙丈岳。
右手に入るのが藪沢で、源頭部に藪沢カール。
一方、仙丈岳の南東面、小仙丈沢の源頭には小仙丈カールが見えています。