先日、久しぶりに神戸に行きました。

 

 前回は、駆け足の出張で大忙しだったのですが、今回は日帰りながらもプライベート。

 のんびりと北野坂や北野通り界隈を散策することができました。

 

 北野坂から不動坂に入り、まずは、「神戸ハリストス正教会」へ向かいます。

 

 目印となるのは一宮神社、といっても旧摂津国一宮の住吉大社というわけではなく、「生田一宮」。

 生田神社を取り囲むように「裔神」とされる八社があり、ここが其の一宮です。

 

 住所は神戸市中央区山本通ですが、秋里籬島『摂津名所圖會』(1796~98年)に、

 

 生田一宮 北野村にあり 生田裔神の八前の其一なり。(略)この地の生土神とす。

 

とありますから、かつては、この辺りも北野村だったということになります。

 

 さて、その「一宮神社」のすぐ裏手にあるのが、「神戸ハリストス正教会」。

 

 

 日本ハリストス正教会(日本正教会)の教会として一番有名なのは、おそらくは神田駿河台のニコライ堂。

 函館ハリストス教会も、観光名所になっていますから、ご覧になった方がいらっしゃるかもしれません。

 この二つと豊橋は歴史があって、国の重要文化財です。

 

 それに対して、神戸は1952年の建立。

 

 同教会のウェブページ「沿革」を見ると、

 

 コスモポリタンチョコレートで有名なV・モロゾフ氏の尽力で、現在の地に立派な「生神女就寝聖堂」が建立

 

と書かれています。

 

 なぜV.モロゾフ氏が、モロゾフ製菓ではなくコスモポリタン製菓なのかについては、川又一英『大正十五年の聖バレンタイン-日本でチョコレートをつくったV・F・モロゾフ物語』( PHP研究所、1984年) に詳細な記述はあります。

 

 また、「生神女」は、ダヴィド・水口優明編著『正教会の手引 改訂版』(日本ハリストス正教会教団 全国宣教委員会、2013年)を見ると、

 

 ギリシャ語「テオトコス」の訳語で、 「ハリストス神を生んだ女性」であるマリヤのこと。

 

と書いてありました。

 

 聖堂は、普通、何かしらの祭や聖人を記念して建てられます。その祭や聖人の名前が、そのまま聖堂の名前になります。

 

ということなので、神戸の場合は、聖母マリヤの就寝(永眠、Dormition)を記念した聖堂ということになるのだろうと思います。

 

 同教会のホームページをみると、教会名は英語で「Dormition Orthodox Church in Kobe」。

 

 

 

 同教会の入口の銘板には、「KOBE EASTERN  ORTHDOX CHURCH ASSUMPTION OF THE BLESSED VIRGIN」とありました。

 

 

 ところで、正教会の聖堂建築の特徴は、私が思うに、次の三点。

 

 一つは、上部に青く見えている、「オニオン・ドーム」。

 玉ねぎに似た形をしていますが、実はろうそくの炎を形どったものだそうです。

 

 次に、オニオン・ドームの上にも、壁にも見られる「ロシアン・ クロス」と呼ばれる十字架。

 

 

 『正教会の手引』によると、「一番上の短い横棒は「罪状札」であり、下の方にある斜めの棒は体を支えるための「足台」。「天国を指し示す」ものだそうです。

 

 そして、もう一つは入口が西(画像では左)であること。

 

 前掲の『正教会の手引 改訂版』を見ると、その理由は、

 

  聖堂は普通「東向き」に建てられます(入口が西ということ)。太陽という光の昇る方向である東に向かうということは、ハリストスという救いの光に向かい、神の国を待ち望むという姿勢を表すから です。

 

 なお、聖堂内は撮影不可ということで、画像で御見せできないのが残念なのですが、多くのイコンが飾られ、とても神聖で敬虔な雰囲気。

 

 私も1本200円の「ろうそく献金」で、献灯をさせていただきました。 

 

(次回に続く)