(前回より続く)
下山後、高賀神社の前にある「関市洞戸円空記念館」に行きました。
展示コーナーに入って、まず目を引いたのは「彫る円空」。
伴高蹊『近世畸人伝』の挿画(上画像)を模したという人体模型です。
さて、同館には30体近くの円空仏が展示されているのですが、一番有名なのは、「一木作り三像」でしょうか。
円空研究者の長谷川公茂氏によれば*、
以前、この三体を一本の丸太に復元してみて驚いた。ほとんど透き間がないように割れ目が合うのである。しかも三尊が互いに向き合い語り合っているかのようだった。神業とした思えないような円空の彫刻も技量を示す像といえよう。
という作品です。
また、同館の展示解説によれば、円空自身が「善財童子」、彼が幼い頃洪水で亡くなった母が「善女竜王」、そして「十一面観音」で、計三体の構成。
十一面観音に抱かれた母親と円空ということは・・・・・・、当時の円空の思いが伝わってくるような気がします。
観音様の目元や口元の笑みが印象に残りました。
ところで、ここでなぜ、十一面観音が登場するかというと、話が横道にそれてしまうのですが、彼が白山信仰圏の人だったから、ということになるでしょうか。
五来重『山の宗教』(角川ソフィア文庫、2008年)に、
円空がほうぼうで遺した主な仏は十一面観音です。これは白山の本地仏だからです。
と説明があります。
ただ、白山信仰圏の中でも、彼と縁が深いのは、高賀山。
立上る 天の御空の 神なるか 高賀山の 王かとそ念
同館では「第二回円空和歌集展」が開催中(~9月27日)。
直筆の和歌が、約370首公開されていたのですが、その中から、同展のチラシにも掲載されていた、高賀山を詠った一首です。
さて、その日の午後は、円空つながりで、関市池尻の「関市円空館」に、寄ってみました。
池尻も円空ゆかりの地。伴高蹊『近世畸人伝』((岩波文庫、1940年)に、
ある夜白山権現の示現ありて美濃のくに池尻彌勒寺再建のことを仰たまふよしにて至りしが、いくほどなく成就しければ、(略)後美濃の池尻にかへりて、終をとれり。
とあります。
駐車場に車を停めて、弥勒寺跡の散策路を300m~400m歩くと、池があって、上画像のアプローチが見えてきました。
入館料は200円。
35体の円空仏が展示されている中で、私の印象に残ったのは、「善財童子像」。
やはり長谷川公茂氏の解説によれば*、関市伊勢町の神明神社の所蔵品であり、地元では、「子守り様」と呼ばれていたそうです。
また、岐阜県商工労働部観光交流推進課観光課発行の『円空仏ガイドブック』(2015年2月)には、「自刻像ともいわれている善財童子」と紹介がありました。
穏やかな表情で合掌している像ですが、もしかしたら、これが、当時の円空の姿であり表情だったのかもしれません。
ところで、シルバーウィーク中にもかかわらず、両館とも、その時間帯の入館者は、偶然にも私一人。
静かに円空仏と向き合いたい方には、おすすめの施設と感じました。
*早坂暁・NHKドラマ制作班『国宝への旅』(日本放送出版協会、1988年)