サンボマスターのアルバム発売ライブに行ってきた。
『こんばんわ、僕がサンボマスターですぅぅ!』
サンボマスター。
唄とギターを担当している山口隆は、ライブ中何度も何度もこう自己紹介をした。
ライブだから、サンボマスターだから赦されているであろうあのブサイク顔を汗でびっしょりにして叫んでた。
あんたがサンボマスターだなんて、そんなの知ってるよ!
なんて気のきいたツッコミなど入れることなく、僕は叫んだ。
『ギターやれ、ギターをもっと!ぶおおおお、やまぐぅちいいいい!』
アドレナリンが出る、身体中から溢れ出る。
口から、鼻から、耳から、毛穴から、肛門から、尿道から、あらゆる穴から、脳内伝達物質が噴出した。
僕の眼前に立つ女は、完全に昇天間近な状態。腰を激しくビートさせている。
それを横目に見ながら、
『この野郎、スケベな動きしやがって!動きがエスカレートして、キャーとか黄色い声援あげたりなんかしたら、赦さん』
とサンボ右翼的な感情を抱いたりしたが、結局彼女はキャーとかキャーとかキャーとかも叫ぶことなく、ぶあああおおお!と明らかに人語ではない言葉で山口に応えていた。
あんた同志だよ。
恐らく僕の自分史上、もっとも変人になりたい願望を持っていて、既に変人だったりする親友トナリは、今日がサンボライブデビューだ。
さぞロックンロールに身を任せているだろうと思い、彼を見る。
すると大あくびをしているではないか!
しかも3回もだ。
『おい、この野郎!その大きな口に渋谷に徘徊するニグロの44マグナムをぶち込むぞ!』
『だって、前のノッポボーイが邪魔で全然ステージが見えないんだもん』
『だもんじゃねー!ノッポボーイのせいにするな!欠伸が出たのはお前のせいだ、でなければ5月のせいだ!この野郎!』
『うん、でも楽しいのよ』
・・・・だったらいいのだ。
形は無意味なのだ。
この空間では、形あるものは意味をなさない。
あるのは原始に近い言葉だけでいいのだ。
魂だけでいいのだ。
サンボ最高だぜ!
どんな素敵な言葉を並べたても、どんな素晴らしい旋律を奏でたとしても、それはなんら意味をなさないことを知らされる。
『僕らがね、こうやってアホみたいにロックンロールしてるのはね、あんた方とこうやって会えるからなんだ、おいそこのボケっ!』
はい、そこのボケです。そうです、僕がそこのボケなんですっ!
こんな独りよがりをすることが、嬉しかったりした。そんな日だった。
結局、山口隆率いるサンボマスターはアルバム『僕と君の全てをロックンロールとと呼べ』全18曲(アンコールナンバー含め)全てを唄った。
アンコールナンバーには、『美しき人間の日々』と『そのぬくもりに用がある』を唄った。
この2曲には、正直しょんべんが出そうになった。
ライブは終わった。
家に帰り、嫁さんにライブの感想を求められた。
『真夏のとても蒸し暑い日にする濃厚なセックスに似た、疲労感と充実感を全身に感じているわけなんですよっ!』
と僕が答えると、
『なんですぐセックスとかいうの、下品な』
と一蹴された。
セックスは下品じゃないのだ!
そもそも下品とか、下品じゃないとか、そんなもん問題じゃなくて、それがロックンロールであればいいわけなんですよっ!
とそんな強気の発言を彼女に云えないまま、彼女は寝てしまい。
そしてその日僕のロックは死んだ。