重々気をつけなされ若いひとよ(還暦寸前の詩人より) | 曽根賢(Pissken)のBurst&Ballsコラム

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元『BURST』、『BURST HIGH』編集長の曽根賢(Pissken)のコラム

[深雪荘日記]

 

巻頭連載[第137回]
「我らの時代の墓碑銘を描く画家――その淫蕩する光線」

 

「水滴の意識」
佐藤ブライアン勝彦●作品&文

 

●「アガベの神」/紙にアクリル/2024

 

 

 

 

昼寝していたら奇妙な夢をみた。

手を動かそうにも体の感覚はなく、目の前は闇。

何か意識しようと、図形などを頭に浮かべるけど、形にならない。

なんだろう?

 

次第に、俺は死んだんじゃないか? と思う様になった。

漆黒の宇宙空間に、丸い玉の意識だけが水滴の様に浮いてる。

「これが死?永遠に一人なんだな」

 

と考えたところで目が覚めた。

最近、寝苦しくて短編映画の様な悪夢しか見ない。

猛暑が去って、早く涼しくなって欲しいわ。

 

 

[今週のブライアンのオススメYouTube/アバタロー]

●何回か前のブログに鈴木大拙の本を紹介した事があったけど、今回はアバタローさんのYouTubeより。

https://youtu.be/q-ONCeEbhl8?feature=shared

 

花を知りたければ、あなたが花になることです。 

花となって、花を開き。花となって、光を浴び。 

花となって、雨に打たれるのです。 

これができた時、初めて花はあなたに語るでしょう。 

そしてあなたは、花の喜びと苦しみを知ります。 

花の中に脈打つ命を知ります。 

そればかりではありません。 

花を知り得た知によって、全宇宙の神秘を知るのです。

 

 

 

 

7月16日(火)鬼子母神は雨のち曇り。

 

午前3時、連載詩を担当Tへ送る。

結局、最初に書いた7行詩にした。

ややこしく、ちょいと理屈っぽいが勘弁してもらおう。

(勘弁してもらった)

 

実際どんな詩を書いているのか、数か月前に送った作品を以下に載せておく。

(担当Tよ、事後承諾ですまん)

 

 

「教訓一 初老の詩人より」

 

神学者によればアダムは三十三歳で造られたという

つまりイヴもすでに三十三歳の熟女であったか

ならば蛇の誘いにのったのもむべなるかな

臍のない女の高齢出産により我らの祖先は生まれ

四十二の図書館で『アンネの日記』を切り裂いた(※)

男にさえ臍を与えたのだから

年増の深情けには重々気をつけなされ若いひとよ

 

 

●『月刊メガストア』(コアマガジン)より

10年ほど前に、都内近県の図書館でそんな事件があった。

 

 

 

午後2時、ボスYの事務所へ行く。

ネット上の写真をブログにアップする方法を教えてもらいにだ。

ドーナッツ屋で6種類のドーナッツを買って、奥さんと子どもへの御土産とした。

JFIFからJPGへ返還するサイトを教えてもらう。

これで、これまでアップできなかったNMIXXのヴィジュアルが使えることとなった。

次は映像のアップの仕方を御教授願うことにしよう。

 

 

そのあと、足を伸ばし、東京女子大(ポン女)近くの八百屋と魚屋をまわった。

コアマガジンの後輩がメールで、その2つを教えてくれたのだ。

確かに、どちらも安くて、雰囲気のある店だった。

八百屋の親父はくせが強いと書かれてあったが、確かに狂気がほんのり香る男であった。

が、狭い店内に2人きりだったので、話しかけられるままに言葉を交わし、親父の愚痴を聞いたりした。

 

[夕食]

●ヤリイカ&ズッキーニのバジル風味炒め(魚屋&八百屋から)

●トマト&オクラ&ブロッコリー&茹で卵サラダ(ポン酢、オリーブオイル、タバスコ、胡椒、マヨネーズ)

●千枚漬け

●梅干し

●ご飯

●煎茶

 

 

ヤリイカをワタごとブツ切りし、塩を振り、純米酒(本来なら白ワイン)にひたしてしばらく置く。

それとズッキーニを、大蒜&赤唐辛子で風味づけたオリーブオイルと多めのバターで炒める。

胡椒、バジルソースで完成。

ここに何度も書いたレシピだが、バジル風味をサフラン風味にすれば、元々の『檀流クッキング――烏賊のスペイン風炒め』となる。

 

食後、ボスYからドーナッツの礼のメールがあった。

子どもがドーナッツを食べる映像付きだった。

「こんなに大きくなったのかあ」

3回つづけて観た。

 

 

[今週の曽根のお勧め作品/The Surfrajettes

 

●トロント出身のインスト「サーフ・ロック」バンド。メジャーデビューは2022年らしく、その頃から私の観るYouTubeにサムネが現れ始め、たまにライブを観聴きするようになった。

前回紹介したザ・コーレッツもそうだが、彼女たちも明らかに60‘sギター・インスト(ザ・ベンチャーズ)やガールズ・ポップの女子オタクだ。

 

●インストにはまったことはないが、ここ数か月、このブログを書くときによく聴く。車の助手席でビールを呑みながら聴いたら最高だろうな。YouTubeにいっぱいライブがアップされているので、この夏、海へのドライブの際はぜひおススメだ。

 

●ちなみにSuffragettesと聞けば、私はデヴィッド・ボウイの「サフラジェッツト・シティ」を思い浮かべるが、その意味は、19世紀末から20世紀初頭にかけて、イギリスで女性にも「参政権」を与えるよう主張する女性団体のメンバーを指すんだってね。それも好戦的な。

 

 

 

7月18日(木)鬼子母神は晴れ。

 

馴染みのスーパーへ向かってる途中、眼の前を7人のポン中が、いや、ポン女帰りの生徒が歩いていた。

皆、地味だが、こざっぱりとしたカッコをした、いかにもポン女の女子たちである。

スカート姿が3人、他がパンツ姿だ。

で、こいつら7人が7人、つま先を開いて歩いているのだ。

「ひざがしらが、どんとこい態勢じゃないか!」

 

前回の「しろめし」につづき、昭和39年生まれのボヤキである。

いつからだろう、女子の(後ろ姿の)足の運びが、かんにさわるようになったのは。

たぶん2000年代前後からだろう、路上に見返り美人が減ったのは。

 

東京っ子の山口瞳は、見た目の悪い所作とは悪徳だと断言したが、現在の女子の後ろ姿を見たら憤死するだろう。

内またで歩けとは言わないが、ズボンをはいてるからって、70年代の番長みたいに歩むな。

時代? 自由? なに? フェミニズム? ルッキズム?

股の締まりは意識の取り締まり加減に決まってるだろ。

美容整形なんぞする前に「小股の切れ上がり」を矯正せよ。

 

 

[夕食]

●冷たい稲庭うどん(ネギ、ミョウガ、生姜、海苔、つゆ)

●手羽元煮4本

●茹で卵

●カブとキュウリの浅漬け(ニンニク、赤唐辛子、出汁昆布)

●冷たいほうじ茶

 

 

鬼子母神に独り暮らしを始めて、どれだけの数の手羽元を煮つめてきたろう。

2本で1羽なのだから、かるく7000羽を絞めてきた勘定になるな。

なにせ、145本が300円前後だから、動物性蛋白質のおかずとしてはエルヴィスなのだ。

風味付けに生姜とニンニクとネギと赤唐辛子をたたきこみ、純米酒と味醂をたっぷり使って、照りよく仕上げた。

 

茹で卵は、あくまで足りない蛋白質をとるためのサプリみたいなもんだ。

この時期、稲庭うどんや冷奴や、メカブ&モズク酢に、ミョウガは鉄板である。

乾麺200gをすすり満腹する。

 

 

 

7月19日(金)鬼子母神は晴れ。

 

午後4時、八百屋と魚屋をまわった。

2度目の八百屋の大将は、より本性をさらし、ずっと愚痴を聞かされつづけ閉口した。

 

1)客が来ないので野菜を毎日棄てなければならない。

2)ここらへんの客は少量買いなので儲けが少ない。

3)「バナナはないの?」「イチジクはないの?」たまに来るおまえのために仕入れができるか!

 

この3点を2回づつ繰り返した。

「ここに店を開いて、どれくらい経つんですか?」

「5年になるかな」

けっこうつづいてるじゃないか。

「いや、いやになり始めたのは、ここ1年半前からなんですよ」

なかなか喰えないオヤジである。

まあ、私より一回りは年下であろうが。

突っこむことはせず、トマトを2個と、オクラ、ブロッコリー、ピーマンを少量買いして店を出た。

 

魚屋では、今日も塩鮭の大きな切り身を2枚(400円)、他に『社長のいか塩辛』(かなり手作りぽく、ワタの味がいい)を見つけ、買う。

 

 

[夕食]

●塩鮭焼き

●トマト&ブロッコリー&オクラ&茹で卵サラダ(バルサミコ酢、オリーブオイル、マヨネーズ)

●海苔

●カブとキュウリの浅漬けの残り

●梅干し

●ご飯

●煎茶

 

 

この時期の梅干しは、なにやらありがたみが違う。

浅漬けを食べきったので、また作ろう。

やはりこの時期のカブとキュウリの浅漬けもまたありがたみが違う。

女につくって喰わせてやりたいもんだ。

が、ニンニクが多すぎるかな?

 

 

「それを知らずに死んだまま生きる男たちよ」

 

あなたが青年で誇り高く、臆病で、貧しく、群衆から疎外されているのなら、せめて襟を正し、独り颯爽と歩け。

どんな男の人生であれ、それがどれほど複雑で、かつ充実したものであっても、実際は一つの瞬間から人生はなりたっているのだ。

そう、「おれは何者なのか?」を永久に知る瞬間のことだ。

あなたは見るだろう、その姿を。

民主主義の錯乱から離脱し、襟を立て颯爽と歩くそのとき。

 

 

 

以上も数か月前の連載詩だ。

実際の字切りは、7行にするため途中途中で無理矢理切ってある。

読者の青年中年男子を応援する詩を、というのが担当Tからの依頼なのだが、どうにも私は「応援歌」を書く資質がとぼしいたため、つい「民主主義の錯乱」とか差しこんじゃうのであった。

 

「資質よりも資格がないのでは?」

ま、そこは勘弁してちょうだい。

私からささやかな楽しみを奪わないでおくれ。

若いひとよ。

この国で生真面目になることは「民主主義の錯乱者」への近道のだ。

気をつけなされ。

われらは永遠に「矛盾の谷」で暮らす民なのだから。

 

ちなみに、こんな言葉もある。

「われわれはすでに、狂人の最大の特徴が何であるかを見た。

無限の理性と偏狭な常識との結合である」

 (G.K.チェスタトン)

 

 

[NMIXXつれづれ草]

●7月21日のステージでのソリュン(20)と、ステージ前におどけてポーズを決めるNMIXX。
 

●新ミニアルバムの内容を示唆するモーション・ポスター(YouTubeにて)。

 

 

●今日(22日)午前0時に、ようやく次回カムバックがモーション・ポスターと共に発表された。

●日時は8月19日(月)の1800

●サード・ミニアルバム『Fe304STICK OUT』とのこと。タイトル曲は不明。

●なんと、前回のミニアルバム『Fe304BREAK』(7曲)のつづきで、LPレコードのB面を狙っているようだ( Fe304とは四三酸化鉄の化学記号)。

 

A面が「壊す」で、B面が「突き出す(はみ出す)」か。で、今回のシンボルが「星(六芒星)」と「黒い羊」(別のヴィジュアルに写っている)。

●これまでの謎な映像や写真&絵から、さっそく世界中のNSWER(ファンダム名)の考察班が、X上に謎解きの進捗状況をアップし始めた。

 

●あらゆる多様性を許す国「MIXXTOPIA」つまりジョンの「イマジン」的世界へ向かい旅する少女たち――それがNMIXXのコンセプトである。これだけあからさまにフリーダムを歌う彼女たちは、想像世界でも現実世界でも「黒い羊」として危険視されている。

●日和そうになる弱気な自我を自ら「ぶっ壊し」、自ら「はみ出し」者として突き出す出す拳の磁力に、我々のほうから引き寄せられてゆくーーとにかく、何度も言うが、彼女たちこそロックの申し子なのだ。こうご期待!

 

●『Fe304STICK OUT』のロゴは、ロック&ヒップホップ的なヴィジュアルである。

●80年代風フィルムカメラで撮られたソリュン(右)とリーダーのヘウォン(21)。この2人が並ぶと、ホント彼女たちで映画を撮ってみたいと思わせるな。

 

 

 

7月20日(土)鬼子母神は晴れ。

 

深雪荘1に引っ越していらい、午前4時くらいに寝て、昼12時前後に起きることが続いている。

で、目覚めているあいだ、なんとなく薄ぼんやりとした不安感がある。

たぶん環境の変化からだろう。

自分の部屋に、玄関があり、台所があり、洗濯機があり、なにより自分専用の便所があるのが不思議でしようがない。

 

また、七曲り荘の共同便所のくせで、ドアを開けるのときに無意識の躊躇を禁じ得ない。

あそこの2つの共同便所のうち、窓側の便所のカギが壊れており、12年間に数回、爺さんのとっちらかり現場に出くわした経験があるのだ。

(幸い私はドアを開かれたことはない)

「なぜ、12年もカギを直さない?」

それも七曲り荘の呪いなのだろう。

 

 

昼間は猛暑。

しかし夜になって、鬼子母神は激しい雷雨となった。

ビカッ!(間髪入れず)ドッカーン!

閃光と轟音が繰り返され、そのたび深雪荘102号室が揺れる。

どしゃぶりの雨音が、薄ぼんやりとした不安感をかき消し、そのまま神田川まで流してくれるようだ。

ここと比べると、高田馬場の標高は150メートルほども低い。

 

あれは2000年あたりのことだったか?

同僚のAちゃんが、昼間からアシッドに酔い、

「高田馬場と目白の高台には、秘密の地下通路が繋がっているんだよ」

と言いだし、

「さあ、いっしょに探しにいこう」

と誘われたことがあったっけ。

記憶が曖昧だが、当然その誘いに乗ったはずだ。

なにせ当時は『BURST』&『BURST HIGH』編集長ピスケンだもの。

 

 

[夕食]

●冷やした煮豚(バルサミコ酢&辛子)

●メカブ(ミョウガ&生姜にポン酢)

●梅干し

●しらす干しご飯(わさび、海苔をもんで醤油をまわす)

●つめたい煎茶

 

 

子どもの頃から猫舌なので、こうした冷えた食事が好きだ。

さて、クスリを飲んで、今夜は早寝をしよう。

雷雨はとっくに去ってしまったし。

 

おやすみなさい。

深雪荘の住人は静かだ。

隣室に未だあいさつをしていない。

もしかしたら、それが薄ぼんやりとした不安感の種火なのかもしれない。

何をもっていこうか?

20歳の夏、銭湯帰りにビールを買って、隣室へあいさつしたら、しばらくしてドアが叩かれ、いっしょに呑みましょうと部屋に入ってきた。

2つ下の浪人生で、いまはアプリ会社の社長をしている。

でも、ビールはまずいよな下戸かもしれんし。

悩みどこだ。

よい夢を。

 

 

[7/25 朗読&トーク・ライブ(配信あり)]

7/25(木)OPEN 19:30 START 20:00
#BURST 公開会議 #42

#釣崎清隆 #メキシコ #ゴア #残酷文化史 #活動30周年
#ピスケン #ケロッピー前田 #TSOUSIE
¥1000+D @TABASA_asagaya
asagayatabasa.com
観覧できます! ぜひ会場で!

配信アーカイブ
https://m.youtube.com/@user-lf9ff9zw5v/streams

 

 

90年代からゼロ年代にかけて、最も過激なストリートカルチャー誌として時代を疾走した『BURST』のオリジナルメンバーがお送りするネット配信トークイベント。

 

今回は、活動30周年を迎える死体写真家・釣崎清隆が新宿眼科画廊での個展(9/20から)や写真集『THE DEAD 改訂版』(東京キララ社)刊行に向けて行っているクラウドファンディング(7/31までhttps://motion-gallery.net/projects/tsurisaki2024のお礼とお願いをするとともに、新作撮影のために今年再訪したメキシコのゴア残酷文化史を語り尽くします。

 

ご存知の通り、メキシコはいまも「死者の日」を祝い、古代文明アステカ王国から引き継ぐ死生観を守り続けています。

アステカ神話とコンキスタドーレス(侵略者としてのスペイン人)、そして「マリンチェの息子(犯されし民)」から新アステカ主義へ。「マリンチェ」とは最後のアステカ王・コルテスの妾のこと。

 

マリンチェがメスティーソ(スペイン人との混血)を産んだことから、メキシコがスペインから独立して植民地を脱してからも、「マリンチェの息子(犯されし民)」という劣等感が残り、メキシコ人のアイデンティティに関わる問題となってきました。

 

死者の日とサンタ・ムエルテ。コロンブス以前より、メキシコ文化では死に対する崇敬が存在し、それは死者の日を祝うことでいまも守られていますが、髑髏の女神を信奉するサンタ・ムエルテが近年ますます人気を得ており、メキシコの死の文化を象徴するものとなっています。

 

アマリジスモ(イエロージャーナリズム)と死体を扱う雑誌『ラ・プレンサ』や『アラルマ!』、そしてアマリジスモの現在と麻薬戦争やグローバリズムの影響。

世界の死体大国といえば、メキシコとタイ。仏教国タイの死体を愛でる文化はネット時代の肖像権問題からメディアの世界からは後退していると言われるが、いまのメキシコ事情はどうなっているのか? 最新のメキシコ・ゴアカルチャーのレポートにご期待ください!

 

「ニューヨーク、パリ、あるいはロンドンの市民にとって、死は唇を焦がすからと決して口にしない言葉である。

反対にメキシコ人は、死としばしば出合い、死を茶かし、かわいがり、死と一緒に眠り、そして祀る。

それは彼らが大好きな玩具の一つであり、最も長続きする愛である(略)隠れも、それを隠そうともしない。

もどかしさ、軽蔑、あるいは皮肉をこめて、死を正面から見つめるのである」

(オクタビオ・パス『孤独の迷宮』より)