90年代「悪趣味」サブカルチャー誌について | 曽根賢(Pissken)のBurst&Ballsコラム

曽根賢(Pissken)のBurst&Ballsコラム

元『BURST』、『BURST HIGH』編集長の曽根賢(Pissken)のコラム

 


[鬼子母神日記]

●巻頭連載[第45回]
「我らの時代の墓碑銘を描く画家――その淫蕩する光線」

「Carousel」
佐藤ブライアン勝彦●作品&文


2018 /acrylic on canvas



最近、「今日はお店営業してますか?」
という問い合わせが多い。
いつ営業してるわからない、幻の店となりつつあるな。

アートフェア東京が終わって、気が抜けるのかな? と思いきや、すっかり椅子(※立体作品)にハマってしまい、また椅子買っちゃったよ。
次はSMチックなエロいの描く予定。

アートフェアがはじまる前はピカソやムンクと展示なんて! と喜んでたけど、実際、同じ空間に展示すると、「亡くなった人には負けたくないな」なんて気持ちが出ちゃったりして。
それは、もちろん値段じゃなく質の問題でね。
が! すでに事務所でピカソの素描を見て泣いちゃった訳。
絵って何なんだろう?

若い頃ある展覧会を見た。
作家の名前は忘れちゃったけど。
会場をグルッと見回すと、3点だけが、3Dみたいに飛び出して見えて、俺を呼ぶんだよね。
他の絵は素通りで、その3点だけをじっくりと見た。
絵の解説を読むと3点全てが男に振られた後に、元彼や自分を描いたものだった。
俺にとっての良い絵とは、作家の気持ちがどれだけこもっているか? という事なんだろうなと思った事がある。しかも情念に近いやつ。

絵との出会いって、お見合いみたいなものだよな。目の前にある作品が相手の心に如何に響くか。
相手の持つ感性とマッチするかなんだろうな、と最近良く思う。

アートフェアの前日、あるイベントへ顔を出した際、紹介されたイラストレーターの女性が20年以上前に、雑誌に紹介された絵を覚えていてくれて、
「あなたがブライアンさん!?」と俺の手を握りしめながら泣いた女性がいた。

その彼女の隣にいた女性から「ブライアンさんは、幻の人なのね~。滅多に見れないお星さんね」
と詩的な文言を言われ、ちょっと恥ずかしかった。

どうやら、お店も俺も幻になりつつある様です。

僕は、バレー彗星にはなりたくない。
日が暮れたら真っ先にあなたの頭上で輝く、そんな星になりたいです。
なんつって(笑)。





3月21日(木)鬼子母神は晴れ。

午前7時起床。
用を足しにいったついでに便所掃除をする。
毎月1度、掃除に来ていたおじさんが死んで、もう2年ほどが経ったか。
その後、代わりの大柄なおっさんが雇われたが、3月しか持たなかった。
それからは、私が便所掃除をし、廊下や階段を私の前の部屋の爺さんが掃除するようになった。
誰がそう決めたわけじゃない。が、なしくずし的に2人の仕事となったのだ。
まあ、私は常に部屋におり、ゆえに1番便所を使用しているのだから当然である。
(ましてや私は糖尿のため40代半ばから「頻尿」なのだ)
便所掃除は気分を爽快にさせる。特に朝は。

昨日20日夕方、ボスYの事務所にて、横戸と3人で、ザ・シェルヴィスのサード・シングルを校了した。
私は憶えていなかったが、3月20日は「地下鉄サリン事件(1995)」のあった日だという。
今回のA面作品でありシングル・タイトルである「PISS(INTO)MY HEROES」は、それを引き起こした人物との因縁話である。

私はあの日、寝坊して危うく被害に遭わなかった(私は丸ノ内線で通勤していた)。
が、直後、編んでいたエロ雑誌2誌が同時に発禁となり、私は「天職」と思っていたエロ本編集者を続けられなくなり、仕方なく『BURST』の前身雑誌である『クラッシュ・シティ・ライダース』という、へんてこりんな「バイク誌」を編むことになったのである。
雑誌が発禁にならなければ、30代40代もずっと私はエロ本を作り続けていただろう。



●3月17日「鬼子母神みちくさ市」にて。本来、石丸元章(右)と私のブースだったが、今や死体カメラマン釣崎清隆がのしてきて3人のブースとなった。



●遊びに来てくれた仲間たちと。みな優しく大人しい男たちだが、写真を見るかぎり、もし知らない男たちなら、私も離れて通り過ぎるだろうなあ。



おとつい作った「サバのトマト・チーズ煮」の残りを温めて、少量のご飯にかけ、さらに粉チーズ&タバスコを振って食す。
サバは煮る前に焼くし、トマト・ソースと相性が良いので、まったく生臭みがなく、なかなか旨い。
食後にコーヒーを淹れ、さっそく2冊の本を読み始める。

1冊目は、香山リカ著『ヘイト・悪趣味・サブカルチャー――根本敬論』(太田出版/2,200円+税)という新刊本である。
先日の「みちくさ市」に遊びに来た後輩編集者のXが、この本にちょいと係り、ぜひブログで紹介してほしいと、もう1冊をそえて寄こしたのだ。
そえて寄こした2冊目は、ロマン優光著『90年代サブカルの呪い』(コア新書/787円+税)である。
Xが言うには、同じテーマをあつかっており、実はこっちのほうが面白いと苦笑した。

さて、2冊を昼までに読み終えた。
2作に共通する1つのテーマは、80年代の根本敬作品(漫画と文章)の世界が土壌となって、90年代の「悪趣味文化」が花開いた。その功罪を問う――ざっくり云えばそんなところか。
ただ2人の立場の違いは、香山氏が『HEAVEN』に関わった80年代サブカルチャー圏の人であり、ロマン氏はバンドやライターとして90年代サブカルチャーの真っただ中にいたということか。
私は両氏に会ったことがないのだが、やはり90年代「悪趣味」ブームの真っただ中で編集者をしていた私は、正直ロマン氏の本のほうが面白かった。

ロマン氏は根本さんも語っているが、なにより「鬼畜ブーム」をつくったといわれる『危ない1号』の、青山正明氏と村崎百朗氏について言及している。
青山さんとは、その晩年最後に電話でしゃべったことはあるが、村崎さんとは1度も接触したことがない。
(ちなみに青山さんの生前最後の原稿は『BURST』に載ったものだ)
しかし、両者以外の本に出てくる人々のほとんどとは仕事をしてきた。

(もちろん根本さんとも)


なにせ業界は狭い。
そもそも、80年代の悪趣味雑誌、スーパー変態マガジン『Billy』の編集長・中澤(現コアマガジン社長)は『BURST』の発行人で私の親分であり、80年代エロ・サブカルチャー誌『写真時代』の編集長・末井昭さんは私の師匠であり、『BURST』でずっと連載してもらっていた。

死体カメラマンの釣崎清隆を生みだした『TOO NEGATIVE』の編集長・小林小太郎さん(実は『Billy』の実質的編集長)には、やはり『BURST』で連載してもらっていたし、2人で『SEX BURST』を編んだこともあった。
また『世紀末倶楽部』の編集長・土屋さんは同じフロアで働いていた先輩編集者で、同誌で私はレイアウトもしているはず。
また『危ない1号』の実質的編集長の吉永さんにも連載してもらっているし、村崎氏の「ゴミ漁り」に影響を与えたと思われる、「山口百恵のゴミ公開」記事で名をはせた『Jam』編集長・高杉弾さんにも『BURST HIGH』で連載してもらっていた。

なのに、青山・村崎両氏とはまったく面識がない。
それは偶然であるかも知れないが、あえて距離をとっていたというのも本当のところなのだ。
端的に言えば、2人はまさに「危ない」と直感したのだ。
編集者やライターが踏み込んじゃいけない場所へ足を突っこんでいると。
2人は「知的過ぎる」ゆえに、人々の「肉体的思考力」のやばさを想像しなかったのではないか?

 

(※むろん私は根本さんをレイシストなんて思っちゃいないし、昔も今もその作品を面白がるが、だからといって気安くその世界に足を踏み入れることはない。私にそんな体力はない。90年代初頭、私のまわりには少なからず「根本信者」がおり、私をその世界へ「ゴルフを誘う」ように引っ張ろうとしたが、とてもじゃないが付きあいきれなかった。彼らは根本さんの「体力」をかるく見ていたふしがあり、また自身の体力を過信していた。そしてみな精神的に病んでいった)


ロマン氏の著書に出てくるサブカルチャー誌の編集長たち(&ライターたち)と、私の決定的な違いは、私は5年間「土方」をし、その後7年間エロ本編集者として「男優」を経験していたことだろう。
(バクシーシ山下監督の出世作『ボディコン労働者階級』の女優、包茎の皮を喰う『裸のランチ』の女優、おくら入りになった『死ぬまでセックスがしたかった』の死んだ女優。その3人と私はからんだことがあるし、そのうち2人とは本番をしている)
「飛んだ」論旨となるが、ゆえに私は肉体性を無視した「知的過ぎる」表現を戒めていたのだ。私は自身の肉体的臆病さを足掛かりにする表現者であるから。

(ちなみに当時、私が仮想敵としていた雑誌は『クイック・ジャパン』と『egg』と『BE-PAL』であった)

 

なにより、私は『BURST』をサブカルチャー誌と思っていなかった。ただの「雑」な誌だと思っていたのだ。

このブログを読んでくれているあなたならわかるだろうが、私はサブカルチャーと無縁に暮らしている。

当時も今も、私はデザイン好きの「万年文学青年」なんである。

これ以上は語るまい。
2人の死は、90年代サブカルチャー誌文化の痛恨事であり、ピリオドであった。


疲れた。
私の場合、あの頃を振り返るのは辛いことばかりだし、昨日サード・シングルを校了したばかりだ。
たったこれだけの文章だが、途中でへたばり、マッコリを呑みながら書いてきた。
肴は、カセット・コンロに乗せた網で、ニンニクとネギを焼き焼き、味噌をつけて。
もう1品は、豆腐の上に「雲白肉」(うんぱいろう)を乗せたもの。
今日はこれを夕食として、呑んだら寝てしまおう。

おやすみなさい。
体調同様、シャキッとしない原稿を読んでくれてありがとう。
サード・シングルの「通信販売」は4月の半ばを予定してます。
よい夢を。



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◎普通口座:店番908
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?
●pissken420@gmail.com


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