薬の効果は? | 統合失調症で痔主の街金業者のつぶやき~過払い金請求のデメリット

統合失調症で痔主の街金業者のつぶやき~過払い金請求のデメリット

突然精神的に破たんをきたしクリニックへ通い、統合失調症と向き合いながら、途中で痔ろうを患い手術を受け、地方都市でささやかなる貸金業を続けるも国策によって被害を被り、産業廃棄物業の会社へアルバイトに出かける毎日を書き綴る。

 統合失調症だからと言って、自分が天皇の息子だったり松平家の直系だったり金星人っだたり、CIAから命を狙われているといった空想に耽るという認識はない。常に自分は自分以外の何物でもないが、時に残虐な衝動にに駆られてどうしようにもなくなる時があるだけだ。その瞬間というか、時間には同時に2人の人格があって、本当(だと信じている)の自分が、別の自分を冷静に観察している。ただし別人格の自分をコントロールできない。見ていることしかできない、という虚無感が確かにある。 その時間が果たしてどのくらいの長さなのかも分からない。我に返ってみて、あ、まただ、と思うと正直かなりキツいものがある。いつから始まったのかが分からないから、我に返ったとき何時何分だろうと、その「時間の長さ」が計れない。ただ、人を実際傷つけることも動物を殺すこともない、と思う。少なくとも本当の自分が見ている間は。

 ロナセン100mgを一日一回服用で何が変わったか。何も変わらなかった。就寝中に男は私の首を絞め続け、耳元では誰かが命令し、徘徊し、独り言、絶叫は続いた。恐怖から眠ることが出来ない。サイレース1mgなんて何の役に立つのだろう。クリニックに行く前と同じように明け方にならないと寝付けなかった。もし、普通の勤め人ならとっくに会社をクビになってただろう。セパゾンなんて何に効くの?

 たまらずに普段通っている内科医に相談してみた。とにかく安眠したかったので、症状は単にストレスで眠れない、とだけ告げたら、エバミール2mg、ユーロジン2mg、デパス1mgを就寝前に飲んで様子を見てほしい、とのことだった。勿論これらの薬はマイナーであり、みな同じ系統の薬だ。マイナーな薬を何階建てにしたところでたかが知れていた。もらって一日目の夜、私は処方箋の2倍を服用した。2週間分出たので実際1週間分しか持たない計算だが、静かな夜がどうしても欲しかった。

 その夜、私は漸く自分の希望を叶えることが出来た、と思った。午前0時前に服用し、20分程で眠気がやってきて静かな夜を迎えられそうな雰囲気になったのだ。ベッドに潜り込み目を閉じた。軽い眩暈のような、自分が空中でぐるぐる回っているような体験をしながら、次第に眠りの海に沈んでいった。しかし、その底は浅いものだった。息苦しさから目を覚ますと、またしても男が何の躊躇もなく首を締めていた。必死にもがこうとしてもからだの自由がきかない。私は男の無表情な目を見ることしか出来なかった。一切の感情もない冷徹そうな眼を。ああ、自分はこのまま窒息死するのだろうか。今度こそこれでおしまいになるのか。この体験は慣れているはずなのに何故か今回に限っては、ある種の絶望が自分の中にあった。マイナーの薬ではあったが、2倍の量を服用したので妙な期待が大きかったのかも知れない。

 やがていつものように誰かが「起きろ」と命令し、何やら騒々しくなると、「男」は消え、海の底から海上へ浮上出来た。どうも「男」は耳元で命令する「人」が嫌いらしい。騒がしいのは困ったが、息はつけるようになったので「騒がしい人」に感謝しなければならないのだろう。こうなるとからだの自由が戻り、手足が動き、枕元の時計の照明ボタンを押すことが出来る。午前1時だ。やれやれ、30分程度しかマイナーの薬は効かなかったようだ。明日またクリニックへ行こう、と決め、夜明けを待った。

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