2023は、たまの通勤片道二時間のお供に文庫本を楽しんだ。
その中で印象的だったのをいくつか備忘録として。
本屋さんを徘徊してポップを流し読みしながら買ったり、誰かが話してるのを聞いていて気になった書名をメモしておいてメルカリで買ったり、駅前の古本市で好きな作家のエリアをぐるぐるして有名どころでまだ読んでないのを買ったり。
読んでいない本が何冊か家にある状態がなんとなく幸せ。
一気に読み切った本たち
宮部みゆき「ステップファザー ステップ」
確か上川隆也でドラマ化されてたな、、という記憶があるので、最初から主人公「俺」の顔は上川さんで私の脳内で再生されている。(ドラマは見てない)さらっと読めて楽しい。ただし、1年経った今、結末をちゃんと思い出せない。また読めそう。
河合隼雄「泣き虫はあちゃん」
10年以上前に一度読んだことがあるが、また読んでしまった。児童心理学者である著者の自伝的な話なのだが、昭和の家族、父の強い家族、昔の家族の話で泣けて笑えて面白い。エピソードの1つずつがドラマだし、シーンが浮かぶ。昔の家族は、関係が濃いなあ、濃すぎるくらいに濃い。父母、こども、それぞれに役割がありそれを皆が演じているようにすら見える「劇場型家族」のような気がしてきた。(小説だからかもしれない)自分の子供時代はそんなに細かく何もかも覚えているほど濃くないな、なんて思ってしまう。家庭の事情によるのかもしれないが、私自身、家族に関する記憶は断片的だし、記憶を自分で無意識に取捨選択して残しているような気がする。本当は私にも本が1冊書けるくらいの楽しい思い出、印象的な出来事はたくさんあるんだろうけれど。いつか、思い出せる日が来るかな。それは息子たちに家族ができたときか、もうすぐ死ぬというときか。
東野圭吾「分身」
のめりこんだ。東野圭吾の本の中では初期に入るのでは(1993年)ないだろうか。古本市で見つけ、夢中で読んだ。まったく関係のない人同士が、糸をたぐって距離が縮まるような感じにじりじりと近づいていく。しかもその二人は瓜二つ!その裏にある感情、夫婦関係、親子の関係、そして最先端医療技術との関係。救いようのない結末じゃなかったことが良かったけど、犠牲者も多く出たし、技術は人を幸せにするとは限らないと感じる。そして先端技術を開発するのも、使うのも人間で、人間には感情あり、それが大きく影響していく。
原田ひ香「まずはこれ食べて」
食べ物の話、美味しい話、美味しいものを作ってくれる人の話かな、なんて思っていたけど、そんな単純なものではなく、ミステリーで、しかも扱う題材も深刻なものだった。出てくる食事がおいしそうで、作ってくれる主人公のセリフも心地よく、その人の重ねてきた人生の苦労が裏にあってこそ発せられるものなのだろう。それを抱えて、消化して生きる中で生まれた強さと優しさがごはんに旨味をマシマシにしてくれる感じ。
若竹七海「プレゼント」「依頼人は死んだ」「悪いウサギ」「さよならの手口」「静かな炎天」「さびた滑車」「不穏な眠り」
NHKのドラマ「ハムラアキラ ~世界で最も不運な探偵~」ででドラマ化された原作シリーズ。先にドラマを見たので、ハムラアキラは最初からシシドカフカ。読んで思ったけど、ほんと、ピッタリ。キャスティングした人、天才。ただ、文章として読むと、落ちの部分がストンと来ないというか、文章を削いで削いで最後に余韻を残しているんだろうけれど、何度読んでも結末の一番大切なところが理解できないのがいくつもあって、、私の読解力の問題?え、どういうこと?なんで?と3,4度はつぶやいたと思う。
7冊のうち 悪いウサギは、楽しい話ではなかったがすごく込んでいて読み応えのあるストーリーだった。あとは1度読めばいいかな、、そして、ハムラアキラ、愚痴が多すぎ。その愚痴の文章を減らして彼女が解き明かすミステリーの説明を少し増やしてほしいと思った私。
喜多川泰「運転者」
プロサッカー選手の旗手怜央がFOOTBALL TIME(DAZN)でおススメしてたので早速買って読んでみた。彼はたくさん本を読むそうだ。
ドライバーの話ではなくて、、「運」を「転」じていく話。軽く読めて読後感もいいので、リフレッシュになったし、機嫌よく暮らしていこう、機嫌よくしてたらきっといいことあるね、と思える1冊。ただニコニコしてればいいということではなくて、1つ1つの選択をしていく中で、朗らかに、前向きに選び取っていくと、何か、いいこと、あるかもよ、ということかな。しかもなんだか、泣けてしまった。なぜだ。
山内マリ子「彼女は貴族」
なんでこの本を買ったのか自分でもよくわからないけれど、門脇麦の載ってる表紙がなんとなく私を呼んだ気がした。大学時代、自分が感じたことのある謎の気後れとか「すべてが全然違う人の存在」、「その人の前ではなぜか自分がすごくみすぼらしい、価値のないもののように思えてしまう違和感」そのあたりの感覚の違いをこんなにストレートに、わかりやすく文章にして人物像としてそれ以外の人とのかかわりを通じて浮き立たせていくというストーリーが良かった。
思い出すのは小さい頃に「ああ、お姫様になりたい。お姫様になってかわいい服を着て、美味しいものを食べて、女中さんに世話してもらって、お城に住みたい」と母に言ったら、「あら、お姫様になったらラーメン100番(当時家族行きつけの札幌市内のおいしいラーメンやさん)に行けなくなるわよ。」
その一言でお姫様願望をあっさり撤回した自分。