「オペラ座の怪人」飯田洋輔さんファントム×飯田達郎さんラウルの共演期間。今回で3回目となりました。

前回が2022年10月の共演でしたので、実に9ヶ月を経ての再びの共演でございます。

その間洋輔さんは「オペラ座の怪人」ファントムをやりつつの、「キャッツ」でデュトロノミってたり、挙句はファントムから翌日には実に14年ぶりの「JCS」カヤパになって期間限定超チケ難の「ジーザス・クライスト・スーパースター 〜ジャポネスクバージョン」公演の救世主となられたりしておられました。(「それじゃどうする彼の人気まっすます高くなるばかり♪」てカヤパさまもだね?←)

達郎さんは京都のカジモドから東京のカジモドへ、東京でひたすら達郎さんのカジモドを首を長くして待っていた人々にホサナで迎えられSimon Zealotesのような熱狂でチケットを連日完売させておりました(例えが何故かJCS)。

そんな劇団四季を支えて救いまくってる兄弟による「オペラ座の怪人」共演について、前回と変わった部分を中心に書いてみようと思います。

 

【飯田洋輔さん怪人の魅力】

確か直近で拝見したのは「ノートルダムの鐘」京都公演前楽に「兄弟マチソワ」を思いついて2023年4月8日マチネで拝見した時。それから3ヶ月ぶりの洋輔さんのファントムでした。

いやどんどん魅力が増してゆくこの方は何なんでしょう???😍

デビューされた頃には「怒り」にゲージが振れる瞬間がご本人のキャラとの乖離が少しあったファントム像。飯田洋輔さんの個性が持つ「優しさ」が役の上でノイズとなってしまうような場面もあったのに、その優しさは持ったまま「怪人の歌声に全ての人がひれ伏す」という原作通りの声の魅力と歌唱力により「歌声が『恐怖』を覚えるほどに圧倒的」という部分を「怪人の特異性。怪人の恐ろしさ」として最大限に生かしているのですよ。

建築の天才であり音楽の天才であるファントム。芸術の為に人に危害を加えることも厭わない異常性を「狂気」として表現するのではなく、「芸術へのこだわりが常人の想像を超えてる」が故と捉えたある意味「無垢なる殺人者」としてのファントムがそこに居ました。

母に愛されず人に迫害されて隠れて生きて来たファントム、クリスティーヌというミューズを得て彼女と音楽の宮殿を築いて共に生きていきたいと願ってしまった哀れな天才…。ラウルさえ現れなければファントムに抗わず歌の才能を伸ばし続けたクリスティーヌと共にオペラ座で夢を叶えていたのかもしれない。演奏が下手なオーケストラのメンバーや仕事がダメな大道具が文字通り「クビ」になってオペラ座のあちこちにゴロゴロしちゃうけど←

 

【飯田達郎さんラウルの魅力】

前回の登板時は「子爵としての尊大さ」を最大限に印象付けるラウルで正に「無礼な若造」だったのですが、その子爵がクリスのためならばファントムに泣きながら懇願し自らの命をも投げうつという「ギャップ」がとても魅力的でした。

 

 

今回からは「子爵の余裕」が前面に出て「ファントムの醜さゆえの哀しさ」をむしろ際立たせる「ファントムとは真逆の要素を持つ存在」としてのラウル像が印象的。

達郎さんのラウルはファントムの「闇」を際立たせる「光」として存在するラウル。この「オペラ座の怪人」がそれぞれの登場人物の立ち位置も照明もセットも黄金の額縁の中の「絵画」のように見えるように作られているので、その中のファントムに対峙する「ラウル」が象徴的に絵画的に美しく見えるように全ての瞬間の立ち姿、顔に照明が当たる時のミリ単位の顔の角度、跪く時の膝の角度や足裏の向き、手の美しさ指先まで洗練された所作、徹底して「ラウルという存在の美」を感じさせられました。

ファントムが「そうありたい」と願いマスクとテールコートでビシッと整えクリスの前で精一杯「演じている」姿と所作、それを「生まれながら」にして持っているラウルという若者という対比。正に怪人が狼狽し嫉妬するナチュラルボーン貴族がそこに居ました。

そして洋輔さんのファントムと達郎さんのラウルは声質だけでなく背格好も似ているのでこの対照&対比が舞台上でとても美しく映えること映えること😍おそらくその見え方も計算しての「対飯田洋輔怪人迎撃専用子爵(エヴァか)」なのかなとも思いました。

 

【ファントムとラウルの対比構造】

🎭ファントムはその醜さ故、母に嫌われ人々に迫害される人生を生き延びて来た。自らの建築の才能と音楽の才能でオペラ座の地下に密かに建築した音楽の宮殿に住み、オペラ座の旧支配人ルフェーブルとマダム・ジリーを支配し操り「オペラ座の影の支配者」として君臨して来た。

🎩ラウルは貴族として何不自由なく育ち、「子爵」としての振る舞いを身につけて生きて来た。子爵家としてオペラ座のパトロンの地位を得、パリの芸術文化の発展に寄与するというその地位としてあるべき投資をし「オペラ座の正当な支配者」として降臨した。

 

🎭洋輔さんのファントムからは「音楽ヲタク」みを感じるので、クリスティーヌのその才能に自らの音楽を重ね、より芸術の高みへ共にどこまでも昇ってゆきたいという野望を強く感じる。

🎩達郎さんのラウルからは「社交界の人気者」として周りの女性から憧れられる存在としての説得力が凄い。クリスティーヌでなくともラウルに声を掛けられただけで女性は舞い上がってしまうような存在。

 

🎭ファントムはクリスティーヌを正面から見られずその顔に手を触れることも髪に触れることも躊躇う。特に洋輔さんのファントムは「クリスに触れる」ことが極端に少ない

🎩クリスの目を何度も覗き込み笑いかけ頬に手を添え頭を撫でプロポーズしてキスして笑いあうことを自然に出来てしまう「ザ・モテて来た人生ですが何か?」な達郎さんラウルw

 

ファントムが「あのようになりたかった」と思う姿がラウルであり、ラウルもまたクリスティーヌを「音楽」で繋ぎ止めるファントムの才能には嫉妬している構図が前よりも更に明確に鮮明に描かれている気がしました。

改めてこの2人の「光と影」が飯田洋輔さん飯田達郎さんの兄弟が演じることで余りにも美しく余りににも壮絶に浮かび上がるなぁと。

 

そして今回最も心を動かされ「うわぁあああああそう来たか!!!」となったのがこの場面↓↓↓

いや「この場面!」てドヤられてもお前の絵じゃミリも伝わらんがな💢というツッコミは前世に置いてどうか聞いてみてもらえませんか?しっかり稽古を…ry

 

パンフレット持ってる方は岸さんラウルのこの場面の美しい写真が載っているのでご確認頂けますが、達郎さんのラウルもこの場面は元々「舟の上で片膝を軽く着くぐらいに身を屈める」所作でクリスの手にキスをしていたんです。ところが!!今回見たら「あれ?ラウルも両膝を着いて屈んだ??」からの

「ファントムとラウル完全シンクロしてる!!!!」

という衝撃に「やられた!!!」ってなりましたよ😭

洋輔さんのファントムがクリスのベールを抱きしめ、一度顔を埋めるようにしてから再びベールにキスする動きと、達郎さんのラウルが両膝を着きクリスの手にキスする動きの

  タイミング

  角度

が完全シンクロしていました😭😭😭

 

いやそんなんズルいやん…

元々私はクリスの音楽への心は指輪と共にファントムの手元に残ったと解釈していたので、この完全シンクロの後に別れてゆくラウルとファントムは「どちらが勝利した」ということはなく、「指輪(音楽への夢)を嵌めていないクリスティーヌとの人生を歩むラウル」、「クリスの指輪(音楽への夢)と共に地下室に残るファントム」はお互いに「クリスティーヌ」という存在と繋がったままこれからの人生を歩んで行くんだなぁと見えました。

だから冒頭の老ラウルが猿のオルゴールを優しく撫で、そのオルゴールを作ったファントムへの憎悪など微塵も感じさせずにクリスティーヌの歌声を懐かしみ愛おしむのか…とストンと腑に落ちました。

 

いや「飯田達郎先生の新作発表!」とか言ってたけど今回は「共著:飯田洋輔先生」だったよ!!ベストセラー作家の飯田兄弟よ!!

上記の場面ファントムとラウルはお互い見えて無いんですよ、それぞれ手間と奥で同じ下手側を向いているので。

それをあんな「シンクロ率1000%」の動きが出来るのは阿吽の呼吸で歌声を重ねて来た兄弟が芝居でも阿吽の呼吸極めて来たよ!!みたいなヤツです。阿吽の呼吸でありかつお互い背中を預けて信頼し切っている俳優2人が作り上げた美しい「絵画」の完成版。

 

【達郎さんによる劇団四季創立70周年挨拶】

兄弟共演中の2023年7月14日は劇団四季の創立70周年当日という記念の日でした。

上演中の全12公演でそれぞれの代表から挨拶があり「オペラ座の怪人」はラウル役飯田達郎さんからの挨拶でした。

私はこういう記念日のオペラ座を見たことが無かったのでまずカテコにボッロボロ(言い方)の姿で出てくるはずの達郎さんが正装の燕尾服でビシッとキメて出て来た時点で「?🤩?🤩?🤩?」と思考停止。

「記念日ってらららラウル正装なの???らららラウルいつ着替えたの???早すぎね???てかかかか格好いいんですけどらららラウル格好いいんですけど??(落ち着け)」て客席で拍手しながらソワソワしてました。

そして整列して拍手が収まったところで一歩前にスッと出る達郎さん😭

いや達郎さんのトーク能力知ってるしこういうの劇団四季のみならず日本ミュージカル界で三本の指に入るぐらい上手いの知ってますけどね!!声のボリューム、抑揚、スピード、言葉に込めた祈り、全てが「流石!!」となる挨拶でした。途中客席の拍手が収まるのを待っている間も全く緊張している様子もなく落ち着いて柔らかく微笑んでいて、改めて70年の歴史の中で入団16年目のキャリアとこのオペラ座の怪人のカンパニーを代表して挨拶される存在に凄みを感じました。

 

「オペラ座の怪人」兄弟が共演するとかならずトレンドになる「兄弟対決」という表現。

今回は更にそこから進化を遂げ、兄弟という「属性」ではなく「兄弟で声が似ている」「兄弟で背格好が似ている」という「特性」を生かしてオペラ座の怪人の演出意図として作られた「シンメトリー構造」に更に美しい構図を追加していました。

いや、こういう瞬間を観られるからやはり俳優さんの化学反応って面白い!と「演劇」の面白さを改めて感じました。

あ、「演劇」と言えば一般的な発音(イントネーション)は「え→ん→げ→き」というフラットなものですが、劇団四季の発音は「え⤴ん⤵げ→き」なのをいつも印象的に聞いていて、今回達郎さんもあいさつの中で「え⤴ん⤵げ→き」としっかり発音されていたのを聞けて、それもとても嬉しかったです。

 

飯田兄弟の「オペラ座の怪人」ファントム&ラウル共演、この後も大阪もしくは横浜で是非また観られますように🙏